【星野リゾート リゾナーレ大阪】ホテルにアトリエが!イタリア発の乳幼児教育で子どもの創造力を掘り起こす!

2022年12月、大阪にイタリア発の乳幼児教育「レッジョ・エミリア・アプローチ」を取り入れたアトリエのある「星野リゾート リゾナーレ大阪」が誕生しました。窓もキャンパスになるアトリエでの学び、大人は入れない「プロジェクトルーム」も詳細をレポートします。

西日本発のリゾナーレ。「創造力を遊びこむ」アトリエのあるホテル

202212月、「星野リゾート リゾナーレ大阪」が大阪・南港にある「ハイアット リージェンシー 大阪」内に開業しました。

ファミリー層に絶大な人気を誇る「リゾナーレ」の全国6番目の施設で、西日本初となるホテルのコンセプトは「創造力を遊びこむ」。イタリア発の乳幼児教育「レッジョ・エミリア・アプローチ」を取り入れており、ホテル滞在を通じて子どもの創造力や好奇心を育むといいます。

客室のアトリエルームは、お絵かきができる窓ガラスやホワイトボードがあり、親子で楽しめて思い出にもなります。

ホテル初の試みを現地取材や関係者へのインタビューをもとに、旅育コンサルタントの村田和子がレポートします。

リゾナーレ大阪の客室「アトリエルーム」にはネット遊具がある客室も
アトリエ写真

イタリア発祥の乳幼児教育「レッジョ・エミリア・アプローチ」とは

「レッジョ・エミリア・アプローチ」を初めて耳にした方も多いことでしょう。
モンテッソーリやシュタイナーなどの幼児教育は提唱者の名前が由来であるのに対して、「レッジョ・エミリア」は、イタリア北部にある街の名前です。

「地域コミュニティの中で、子どもが主体的に学ぶ教育としてイタリアのレッジョ・エミリア市で誕生した教育です。市民参加型で「共同性」と「創造性」を軸としたアプローチや哲学を核としつつ、地域の特性、あるいは時代に応じて、変わり進化するのが特徴です。」というのは、アトリエを星野リゾートと共同運営をする、まちの研究所代表取締役・松本理寿輝氏。

今回のリゾナーレ大阪の約470平米という大規模なアトリエ、そしてホテルでの取り組みは、世界33か国に広がるレッジョ・エミリア・アプローチの国際ネットワークでも例のない、先駆的でユニークな取り組みだという声が上がっているといいます。

向かって左:星野リゾート リゾナーレ大阪 総支配人 福本博隆氏 /右:まちの研究所 代表取締役 松本理寿輝氏

アートの専門家「アトリエリスタ」が子ども達をお出迎え

学びの舞台となる「アトリエ」は、子どもが様々なものと出会い、選択し探究できる環境が整い、アートの専門家である「アトリエリスタ」が出迎えます

アトリエの監修をしたデザイナー・アトリエリスタ伊藤史子氏は言います。
「アトリエには遊び方が決まったおもちゃはありません。本物にこだわった素材を用意し、子ども自ら好きなものと出会い、選び、考え、どう楽しむかを決めていく……その過程こそが学びであり大切にしました」。

アトリエの監修をしたデザイナー・アトリエリスタ伊藤史子氏

アトリエリスタは、何かを教えるのではなく、お子さんのさまざまな出会いを見守りながら、関心を深めるサポートするのが役割

また、アトリエは託児施設ではなく「コミュニティからの学びを大切にするレッジョ・エミリアの哲学に倣い、プロジェクトの時間以外は親子一緒にお過ごしいただくことを基本としている(総支配人 福本博隆氏)」といいます。

「具体的に滞在を通じてどんな学びがあるのか?」について、アトリエやアトリエリスタによる「プロジェクト」のレポートを通じて紹介をしてきます。

成長の舞台「アトリエ」とは? 実際にどんな体験ができる?

アトリエは、ホテルの最上階28階にあり、広さは約470平米。大きくとられた窓の外には海や山などの自然、行き交う船や車・列車、さらに工場地帯などを一望します。

刻一刻とかわる自然の美しさや人の営みの風景もアトリエの一部となり、子どもたちの興味・関心を引き出していきます。

アトリエ、客室の設計・デザインは、他のリゾナーレも手掛けるクライン ダイサム アーキテクツ(KDa)が担当。港のインダストリアルな風景から、工業用パレットを配したランドスケープがユニークです。

3つのエリアからなる「アトリエ」

アトリエは「興味」「探索」「表現」の3つのエリアからなります。

入口のギャラリー「興味」のエリアで、創造力のスイッチオン!

入口にあるギャラリーは、展示を通じて興味を持ち、創造力のスイッチを押す場所。

現在は「あつまる」をテーマに、大阪でモノづくりをしている企業の協力を得て構成。
世界から集まった糸を染色する工場が大阪にあることから、色鮮やかな糸を使ったインスタレーションが出迎えます。

リゾナーレ、そしてレッジョ・エミリア・アプローチ、双方が大切にしている「地域とのつながり」が凝縮された空間は、モノや映像・写真・テキストなどを通じて、「モノづくりの大阪」に出会い、興味を抱くエリアとなっています。

「探索エリア」で出会うものは

一番広い「探索エリア」は、色彩・絵画・造形・光と出会うスペース。絵画コーナーでは、自分の好きな色や素材、道具を選び、画用紙だけではなく窓をキャンバスに描くのもOK。造形コーナーには、4種の粘土が用意され、質感を確かめながら、子どもが思い思いに創造力を発揮し表現をする場です。

ワクワクする空間のアトリエで、子どもは琴線に触れるものを発見し、自分なりの表現をしていくといいます。
中には「集中してネジを触り観察を続けているお子さんもいた」といい、アトリエリスタは見守りながら、お子さんがネジの何に関心を示しているか……「形なのか?手触りなのか?色なのか?」を見極めて親御さんと共有。時に「同じ形で、もっと大きいものもあるよ」など子どもに声をかけ、探索が深まる導きをしていきます。

「探索エリア」①色彩との出会い

ベンガラ染めの布や季節により変化する葉っぱなどが、色のグラデーションや光で変わる様子から、色彩感覚を探究する場。様々なものに触れて、質感や形の違いなどを発見する場にもなります。

「探索エリア」②絵画との出会い

描くことをきっかけに、様々な画材や道具と出会います。
画用紙だけではなく、窓や床に広がる大きな紙などもキャンパスとして、自由に子どもたちが表現する場です。

午前中は、前日に引き続きアトリエを利用するファミリーが多いため、窓やキャンパスに描かれた絵はあえて前日のまま消さずにおくそう。表現を深めたり、他のお子さんが手を加えることで新たな世界が生まれます。

「探索エリア」③光との出会い

「光との出会い」では、プロジェクターやライトテーブルが配され、子どもはマテリアルを動かすことで映し出される影の形や色が変わることを発見します。

「探索エリア」④造形との出会い

粘土や砂に触れて、手でこねたり足跡をつけたり。4種類ある粘土の色や質感の違いを感じながら好奇心を育みます。

道具と向かい合って、自分は何を好きなのか考える

「アトリエはなんでもありの自由な場所ではなく、ルールや制約を設けた中で、自由に楽しむ場だ」といいます。例えば絵画エリアから造形エリアなど、道具はエリアを超えて持ち運びはできません。暮らしに身近なものや、自然物から工業製品まで、さまざまなマテリアルが集まる棚「マテリアルライブラリー」は、引き出しを開けると透明のシートが被せられており自由に出し入れはできません。

子どもが興味を持ったら「好きなものひとつだけ出していいよ」とアトリエリスタが声をかけ、子どもが考え選択する機会を創ります。こういったひとつひとつの丁寧なやり取りを通じて、道具と向き合い大事に扱うこと、自分は何が好きかをしっかり考えることへとつながるのだといいます。

写真:マテリアルライブラリー

「プロジェクト活動」は親と離れ子どもだけで参加する

プロジェクトルームでは、アトリエリスタとの対話を通じて、創造力を引き出し表現を深める約1時間の「プロジェクト」を開催しています。
ここだけは他のエリアと異なり、親と離れて子どもだけで参加をします(3歳以上)。

※プロジェクト活動への参加は、アトリエ利用料金に含まれる(1泊につき1回利用可)。

表現エリア「プロジェクト活動」で集中力を発揮する!

プロジェクトの定員は最大8名の少人数制。
現在のテーマは「色をあつめる」ということで、色と光の3原色からそれぞれのアプローチで色を作り出し表現をしていきます

まず子どもたちが興味を持ったのが水槽。水に色インクを垂らすと、水の中で生き物のようにインクが広がり、子どもたちは様々な角度から観察し、思い思いに感想を口にします。例えば横から観察すると、縦に広がるインクの動きを発見します。別の色インクを落とすと交わったところから色が複雑に変化をしていきます。
その様子を観察する子どもたちのまなざしは真剣そのものですごい集中力!

水槽の下にもぐって、スポイトから垂れるインクが広がる様子を観察してもOK

アトリエリスタのコミュニケーションが絶妙

感心するのが、インクの色やインクを落とす場所を子どもたちに聞いてから、実行するアトリエリスタのコミュニケーション。子どもたちで意見が割れても、アトリエリスタが「順番にするよ。最初はどちらの色にしようか?」と声をかけると、年上の子どもが小さな子に譲る、人数が多い色を先にするなど、子どもたち自ら答えを出していきます。

一通り水槽の観察を終えたのを見計らって、「自分で色水を作る」「絵の具を使って描く」など、何ができるかを伝え、子どもたちは自分の関心にあわせて次の課題へ取り組みます。

3原色のインクを混ぜて、様々な色を作り出す子どもたち。すごい!

絵の具で描く際には、用紙は画用紙だけではなく、水をはじくもの、紙ナプキン、和紙など様々な素材で、かたちも長方形や三角形、大小さまざまなものを用意。

その中から、子どもがどれを使うか選択をします。描く筆も「ホンモノ」の動物の毛から作られており、実際に毛先を触って、柔らかいのか?硬いのか?などを確認。太さも子ども自ら選択し、自分だけの一本を選びます。

絵の具は、インクと同じ3原色が用意されていますが、「まずはどの色をだそうか?」とアトリエリスタが声をかけ、子どもが選んだ1色からスタートします。

同じ青でも、一人ひとり用紙や筆の素材が違い、塗り方にも個性があらわれ、まったく印象の異なる作品になっていきます。
2色目の絵の具を重ねると、重なりや水分の違いで色合いは変化し、複雑な表情になっていきます。その様子を子どもが観察し面白がり、やがていろいろなチャレンジをはじめます。

プロジェクトは、想像以上にゆっくりと子どものペースで対話をしながら進められ、子どもは自らが選択したことを、自らが選んだ道具を使って表現することで、欲求が満たされるのか、終了時にはスッキリと満足した表情を浮かべるのがとても印象的でした。

最後は親御さんとの再会、振り返りを

最後は、お迎えに来た親御さんを交えて、プロジェクトでの子どもの様子や興味を持ったことなどを振り返り、アトリエリスタが選んだ子どもが関心の扉を開いた瞬間の写真を記念として持ち帰ります。

ちょっと驚いたのが、作品を持ち帰るかどうかは子どもに委ねられていますが、執着するお子さんがあまりいないこと。「プロセスが大事」というレッジョ・エミリア・アプローチの哲学通り、子どもも、できたものではなくプロジェクトでの体験を面白がり、そこに価値を見出しているようです

プロジェクトルームには表現の形として子どもたちの作品が飾られる

親の過ごし方も充実

アトリエリスタによる「プロジェクト」の間は、親子別々で過ごす時間。
クラブラウンジやトレーニングルームなどホテル内の施設を利用して、親御さんも自身の時間を楽しみ、リフレッシュできます

 

リゾナーレ大阪の滞在者もハイアット リージェンシー 大阪のクラブラウンジを利用でき、食事はティータイムにはスイーツ、夜はアルコール各種と軽食、翌朝の朝食も。大人6,215円(税・サービス料込)

「星野リゾート リゾナーレ大阪」での学びを大きくする親の心得とは

子どもの意思をしっかりと聴き尊重するアトリエリスタと、対話する子どもの様子を見ていると、親も子どもの力を信じて見守ることが成長の秘訣だと感じます。短いリゾート滞在でも、体験の前後で行動がかわるなど、大きな学びを得る「行動変容」につながるのです。

親はつい「◎◎を描いてみたら?」「次はこれをしたら?」と子どもの意思を先回りして誘導をしがちです。
訪れる前に、レッジョ・エミリア・アプローチの大切にしていることを、さらっと予習しておくといいでしょう。

子どもの意思を尊重、親も工夫を

例えば、絵本を読みたいという子どもに「家にもあるのに絵本なの?他のことをしようよ」という親子のやり取りが時々みられるといいます。「せっかくだから、家ではできない体験をして欲しい」と願うのは親の率直な思いです。

しかし、アトリエスタッフの野網ゆきさんは、「ここにある絵本は、子どもの関心を引きだし、出会うことを意識して選書をしています。子どもの意思を尊重して絵本を読んだら、関心をよせた場面などを手掛かりとして、次の出会いを探索する声がけをしてみてはどうでしょう?」と言います。

ベビーコーナーを区切る椅子の下にはたくさんの絵本が

「(絵本の)どの色が好き?」「赤色なんだね。このアトリエにも赤色がたくさんあるね」と子どもに声をかけると、「ここにあった~」「赤色だ……でもちょっと違うなあ」とアトリエで色を探し、観察をする新たな探索が始まるといいます。

アトリエスタッフの野網ゆきさん

また子どもへの質問は答えがない、創造力を引き出す問いを意識するといいそう。例えば「海の中には何がいる?」だけではなく、「海の中ってどんな世界だろう?」と問いかけることで子どもの想像も広がりをみせるのだとか。

「リゾナーレ大阪の創造力を遊びこむという世界観に親子で没頭し、子どもの新たな興味を発見する」「アトリエリスタのコミュニケーションから日常を振り返り、子育てのヒントを得る」など、子どもはもちろん、親にとっても新しい発見がたくさんあり、日常を変えるインパクトのある滞在となりそうです。

難しいなあと思う方も安心を。そんな時こそ、アトリエリスタに相談をしてみるといいですよ。

星野リゾート リゾナーレ大阪の「創造力を遊びこむ」世界観に親子で学ぶ

通常、大人はアトリエの利用ができません。小学生以下のお子さんがいるからこそアクセスできる貴重な機会です。子どもを見守りながら親御さん自身もぜひアトリエでの探索や表現をしてみてはいかがでしょう? ホンモノの素材に囲まれた空間は、子どもだけではなく大人も童心に戻り創造力が掻き立てられます。

総支配人の福本氏は、開業時のアトリエを「満足度は120%。多くの人の思いと知が集結し、とてもいいものができた」と評価します。同時に「これで完成ではなく、お子さんや親御さんを受け入れる中でブラシュアップし磨きをかけ進化をしていきたい」とも。

冒頭にある通り、レッジョ・エミリア・アプローチは、地域や時代などにより変わるのが大きな特徴です。
星野リゾート リゾナーレ大阪、そしてレッジョ・エミリア・アプローチが、大阪を舞台にどう進化するのか、この先も目が離せません。

星野リゾート リゾナーレ大阪

【宿泊料金】
アトリエルーム 1泊1室18,000円~(税・サービス料込)

【アトリエ滞在料金】
子ども1泊1室15,000円(税・サービス料込)※0歳児のお子さまは無料
アトリエの対象年齢は12歳以下、推奨年齢6歳以下

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文・構成/村田和子

村田和子|旅行ジャーナリスト・旅育コンサルタント

「旅行者・地域・社会が旅を通じて元気になる」をモットーに、人生や日常を豊かにする旅の提案を行う。新聞・雑誌への寄稿やテレビ・ラジオへ出演。

旅育メソッド🄬を提唱し、旅育イベント企画・監修や講演を行う。著書に「家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ~旅育BOOK(日本実業出版社 )」。総合旅行業務取扱管理者。

 

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