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Q. 絵本に興味を持てず、親の方が読み聞かせに飽きています。
5歳男児の父です。
読み聞かせはいいと聞いて、がんばってやっていますが、私が絵本に興味を持てず……。
義務感でやっているので疲れるし、最後の方は眠くなってしまいます。
(30代、男性)
A. 子どもと対話のできる絵本選びが大事です
まじめに取り組もうとしているからこそのお悩みですよね! 子どもの時には絵本を読んでいても、大人になってからは、生活に絵本がかかわることは、ほぼありません。ですので、子どもができたとたん「絵本」が目の前にある生活に、みなさん、とても戸惑っていると思います。
ただ、ありがたいことに日本は、ほかの国と比べて本当に多種多様な絵本があります。その中でまずは、
・大人の知的好奇心を刺激する。
・大人が世界観に共感できる。
という絵本を見つければ、その時点でかなり絵本への興味が上がってきます。
絵本というと「子ども向け」というイメージがあり、「興味が持てないなー」と思うかもしれませんが、現代の絵本はすごいですよ! 大人も知っておきたい知識や話題が子どもから読めるように示してくれています。「相対性理論」の絵本や話題となった『サピエンス全史』のこども版『こどもサピエンス史』というものもあったり、分かりやすいし知識にも触れやすくお得です。
ですが、大人が興味のある絵本を選ぶだけでは、子どもが置いていかれてしまう可能性もあります。そこでおすすめなのが、「子どもと対話できる絵本」です。
絵本をツールに、子どもと対話してみよう。
一方的に読み聞かせをするだけでは、どんな絵本でも飽きることはあります。
ですが、大人の知的好奇心を刺激し世界観に共感できる絵本の中から、さらに、子どもたちと話し合えるきっかけとなるものを選べば、会話が生まれ、パパママのこれまでの人生観、哲学、思い出……などなどを披露する貴重な時間となります。対話をしていれば、眠さも飛びます!
ということで、以下に、
①大人の知的好奇心を刺激する。
②大人が世界観に共感する。
→そんな絵本を選ぶことで、“子どもとの対話のきっかけにもなる!”
と、大人も子どももWin-Winとなれる絵本と対話の例をご紹介いたします。
①大人の知的好奇心を刺激する。
パパママにとっても、知的な情報をインプットする時間は貴重です。読み聞かせを、そんな大事な時間としましょう。
〈社会の仕組み編〉
まずは、パパママがレクチャーしやすい、子どもたちにも関心を持っていてほしい、社会の仕組みを伝える絵本から。
『チョコレートがおいしいわけ』(はんだのどか アリス館)
子どもたちが大好きなチョコレートの材料・カカオ豆がどのように作られて日本に運ばれてくるのかが、とても楽しく描かれている絵本です。日本は有数の食品輸入国であり、スーパーに並んでいる様々な食品が地球規模で作られていることが分かります。身近な食べ物はどこが産地なのか、話を広げていくことができますよ。
『せんろはつづく にほんいっしゅう』(鈴木まもる 文・絵 金の星社)
日本全国を走る電車・列車を各地区に分けて詳細に紹介していく絵本です。新幹線だけでなく、普通の電車やモノレールなどなどが、日本のどこを走っているかを見せてくれるので、パパママが、乗ったことのある電車や、行ったことのある場所などを語りながら、日本の交通がどのようにつながっているのかを楽しく語り合えますよ。
〈大人も知らなかった豆知識編〉
こうした大人も知らない豆知識を扱った絵本なら、パパママも興味深く本に入れます。
『メアリー・スミス』(アンドレア・ユーレン 作 千葉茂樹・訳 光村教育図書)
メアリー・スミスは夜明け前に各家をまわると、乾いた豆をチューブにこめて、吹いて飛ばして窓に当てます。それっていったいどんな仕事でしょう? イギリスに実在した「めざまし屋」を紹介する絵本ですが、時計が世の中に出回るようになると無くなった仕事です。この絵本をきっかけに「将来どんなお仕事をしたい?」から、「時代によって仕事って移り変わっていくんだよ」などなどパパママのお仕事のお話しにもつながりますよ。
『すごいね! みんなの通学路』(文 ローズマリー・マガーニー 国際NGOプラン 訳 西田佳子)
この絵本は、世界各地の子どもたちの“通学路”を撮った写真絵本です。日本の子どもたちは歩くか、バスや電車で通う子が一般的だと思いますが、この絵本には、高い崖をはしごで上り下りしたり、子どもだけでボートを漕いだり寒い地域では犬ぞりに乗ったり、思ってもみない方法で通う子たちが登場します。こんなにがんばってみんな学校に通うのはなぜだろう?と「勉強すること」「ほかの国の事情」などのお話ができますよ。
〈社会問題編〉
社会問題を子どもに話すのは、なかなか難しいこと。ですが、絵本で語りかければ自然にすこしずつ問いかけることができます。
『ナマコのばあちゃん』(こしだミカ 偕成社)
ナマコが海の砂についた栄養分を体に取り入れて、きれいになった砂と水を吐き出す力があることをご存じでしょうか? そんなナマコばあちゃんが、めちゃくちゃになった海の中で「食べて出して食べて出して」どんどんきれいにしていったお話です。海や自然の再生、東日本大震災などが題材となったお話しなので、震災で起こったことや、自然と人間との関係など、社会的な問題を“ナマコ”を通じて話すことができます。
②大人が世界観に共感する。
大人が読んでも「ほっ」としたり、子どもに思い出を聞かせる導入となったりする絵本の時間なら、退屈になりません。
〈日常生活編〉
絵本には、大人でもしみじみ「生きるってこういうことなのかなあ」と染み入る作品があります。
『ちいさなトガリネズミ』(みやこしあきこ 偕成社)
ある働き者のトガリネズミが決まったルーティンの中で楽しみを見出したり、コツコツ働きながらも友達との時間のために丁寧に準備をしたりするお話です。大きな事件はなく、一見地味な毎日ですが、トガリネズミの安らぎが伝わってきます。現代はどうしてもSNSで他人の生活を垣間見たりして焦ってしまいますが、「満足って本来こういうことかも」としみじみしながら大人も読める作品です。
『やまのかいしゃ』(スズキコージ・さく 片山健・え 福音館書店)
朝起きるのがとても苦手な“ほげたさん”が、昼過ぎにようやく起きて会社に行こうと思ったらカバンは忘れてるわ反対行きの電車に乗ってしまうわ、しようがないから今日は“やまのかいしゃ”に行こうとする、さわりだけでも適当さに笑ってしまうお話です。ほげたさんが、本当に適当で一般的に見たらヤバいでしょと思いますが、この誰の評価も気にしない姿勢、読んでいると「いいよなー」と思ってしまいます。そんな「ほえ~」という世界観をパパママも楽しんでみてください。
〈人生哲学編〉
パパママが、子どもより長く生きているのは当然のこととして、これまでの人生の中で身についたこと、子どもたちに語ってみてはいかがでしょうか?
『大ピンチずかん』(鈴木のりたけ 小学館)
子どもたちの生活の中の「バッグの中で水筒がもれた」「トイレの紙がない」などの“大ピンチ”を紹介していく絵本です。パパママも「これやったー」と思うことも多いのではないでしょうか? 「こういう時にはこうするのよ」と伝えたり、大人になった後にはどんなピンチがあるのかなど、これまでの人生を語るきっかけにしてみてください。
絵本を「対話のツール」と考えてみては?
子どものために絵本を「読み聞かせる」と考えると、どうしても気持ちが乗らない時もありますよね。そういう時は、
「絵本」→読み聞かせの道具
ではなく、
「絵本」→対話のツール
と意識を変換してみてください。
そうすると「今日は子どもと何をネタに話そうかなー」と、自分の興味を軸に絵本を選ぶことができます。
また、読み聞かせ時間を「子どものため」と考えると義務感が湧いてきてしまいますが、
「自分のインプット時間」
と考えるのも効果的ですよ。大人もやはり知的に満たされる時間が必要だと思いますが、忙しい毎日の中でねん出するのは難しいですよね。そんな時間と読み聞かせ時間をドッキングさせてしまうのです。
対話は、親子の思考力をきたえます
ということで、大人が興味のある絵本を選び、それをもとに会話をすれば、パパママも子どももお互い有意義な時間となります。
こうして対話をすることは、子どもの思考力にもつながります。
最近は、小学校受験でも中学校受験でも「思考力問題」の出題が増えている傾向があります。ですので、例えば、『桃太郎』の読み聞かせでも、
「なんでイヌ、サル、キジをお供にしたんだろうね」
「おじいさんが刈った“しば”って何に使うんだろう」
といろいろと問いかけることもできますよ。
もちろん、無理を押して読み聞かせをするよりは疲れたときには無理せず寝てしまった方がよいと思いますが、ちょっと時間があるときには絵本を片手に、
「おれの雑学も増えるし、子どもと話す時間もできるぜ」
と考えて、ぜひ主体的に絵本を読んでみてくださいね。
「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」を1話から読む!
読み聞かせの時間を作れないのは私の要領が悪いせいですか?新連載【育児の悩みは絵本で解決】vol.1