日本一の湖「大きさ」
日本一大きな湖は有名ですが、日本一小さな湖は意外に知られていないのではないでしょうか。それぞれの名前と面積、主な特徴を紹介します。
日本一大きな湖は「琵琶湖」
日本一大きな湖は、滋賀県にある琵琶湖(びわこ)です。面積は669.26平方kmで、滋賀県全体の約1/6を占めています。
琵琶湖は大きいだけでなく、古さも日本一です。琵琶湖は約400万年前、三重県伊賀市付近にできた湖が形を変えながら、現在の場所まで移動してできたことが分かっています。
現在の場所に定まってからも約40万年は経過しており、独自の進化をとげた生物もたくさんいます。10万年以上の歴史があり、固有種が存在する湖は世界でも20カ所ほどしかありません。
貴重な自然環境を残す琵琶湖は、観光地としても人気です。湖を1周できるサイクリングコースやマリーナ、湖水浴場などが整備され、多くの観光客で賑わいます。
日本一小さな湖は長崎県島原市の「白土湖」
日本一小さいといわれる湖は、たくさん存在します。湖のでき方にはさまざまな種類があり、どこまでを湖とするかによって判定が変わってくるのです。
ここでは琵琶湖と同じ「陥没湖(かんぼつこ・断層などで陥没した場所に水がたまってできた湖)」の最小を紹介します。
日本でもっとも小さな陥没湖は、長崎県島原市の「白土湖(しらちこ)」です。白土湖は、1792年(寛政4年)の雲仙岳(うんぜんだけ)の噴火に伴って生じた窪地に、地下水がたまってできました。
東西約75m・南北約200mと大きな池程度の広さしかありませんが、れっきとした自然の湖です。なお、長崎県にある湖のうち、人造湖でない湖は白土湖だけといわれています。
湖のでき方の種類もあわせてチェック
湖の種類は、でき方によって主に以下のように分類されます。
●カルデラ湖:洞爺湖(とうやこ)・猪苗代湖(いなわしろこ)など
●断層湖:琵琶湖・諏訪湖(すわこ)など
●堰止(せきとめ)湖:富士五湖・印旛沼(いんばぬま)など
●潟(せき)湖:サロマ湖・八郎潟(はちろうがた)など
●三日月湖:石狩川下流域など
カルデラ湖は「カルデラ(火山の噴火によってできた窪地)」に水がたまったもので、陥没湖の1種です。断層湖は地層がずれてできた窪地の湖を指し、カルデラ湖とともに陥没湖に含まれます。
堰止湖は土砂や溶岩が、川を堰き止めてできる湖です。潟湖は海が砂州(さす)によって隔てられた部分を指し、三日月湖は洪水などで川の流れが変わったときにできます。
電力確保や洪水防止のために、人が湖を造ることもあります。ダムや多くの三日月湖は、こうした目的で造られた人工湖です。
日本一の湖「深さ」
湖の「深さ」は、大きさと同じくらい気になるポイントといえます。日本一深い湖は、どこにあるのでしょうか。
日本一深い湖は「田沢湖」
日本でもっとも深い湖は、秋田県にある「田沢湖(たざわこ)」です。世界一深い湖にちなんで、日本のバイカル湖とも呼ばれています。
田沢湖の水深は423.4mで、2位の「支笏湖(しこつこ・北海道)」の360.1mを大きく引き離しています。透明度も高く、季節によって表情を変える湖面の様子がとても神秘的です。
日本一の湖「透明度」
「透明度」は湖の状態をチェックする基準の一つです。一定の大きさの白い円盤を沈めていき、見えなくなる深さを指しています。透明度の日本一について、高低それぞれを紹介します。
日本一透明度が高い湖は「摩周湖」
日本一透明度が高いのは、北海道の「摩周湖(ましゅうこ)」です。透明度は水の中に不純物がないほど高くなるため、同じ湖でも季節や天候によって数値は変化します。
摩周湖の透明度も計測する年によって変わるものの、ほぼ20mを超える結果となっており、長く日本一の座をキープしています。
1931年(昭和6年)に計測された41.6mは透明度の世界最高記録として残っており、いまだに破られていません。
日本一透明度が低い湖は「伊豆沼」
一方で、透明度がもっとも低い湖は宮城県の「伊豆沼(いずぬま)」です。こちらは厳密には透明度ではなく、水の「汚濁度」を基準としています。
環境省が実施する水質測定での、汚濁の原因となる「COD(化学的酸素要求量)」の値が、2021年には伊豆沼は日本一となっています。ただ、もとからそうだったわけではなく、かつては底まで見えるほど澄んだ水をたたえる美しい湖でした。
しかし、周辺の住宅や農地からの排水や、大雨による土砂流入、外来生物の放流、ハスの繁殖などで環境が変化し、水質悪化につながったと考えられています。
沼一面を覆いつくすように咲くハスの花は美しく、観光客にも人気です。その一方で、日光をさえぎるためにほかの水中生物が育たない弊害もあり、適切な管理が求められています。
日本一の湖「湖面標高」
山国日本には、高い山の上にできた湖もたくさんあります。日本一標高が高い湖を見ていきましょう。
日本一湖面標高が高い湖は「中禅寺湖」
湖の種類はさまざまなため、定義によって湖面標高の日本一も変わります。「池」「沼」と名付けられた小さな湖まで含めると、正確な日本一は決められないといってよいでしょう。
例えば、条件を「人造湖を除く面積が4平方km以上」とした場合は、栃木県の「中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)」が湖面標高の日本一となります。
中禅寺湖は男体山(なんたいさん)の噴火によってできた堰止湖で、湖面標高は1,269mです。中禅寺湖のある奥日光一帯は山岳信仰の聖地として知られ、遺跡や伝説なども数多く残されています。かつては女人禁制でしたが、現在は家族連れなど多くの観光客で賑わっています。
面積の条件を除けば湖面標高日本一「湯ノ湖」
面積にこだわらず、「湖」と名の付く場所に対象を広げていくと、栃木県の「湯ノ湖(ゆのこ)」が日本一となります。湯ノ湖は「三岳(みつだけ)」の噴火によってできた小さな湖で、湖面標高は1,478mです。
湯ノ湖は中禅寺湖と同じ奥日光にあり、流れ出す水は戦場ヶ原(せんじょうがはら)を通って中禅寺湖へ注いでいます。付近には温泉も湧いていて、登山客やスキー客などに人気です。
人造湖の日本一もチェック
日本には、人が意図的に造った湖もたくさんあります。人造湖の日本一を、二つの視点から見ていきましょう。
日本一大きい人造湖「朱鞠内湖」
日本最大の人造湖は、北海道の「 朱鞠内湖(しゅまりないこ)」です。人造湖の面積は「湛水(たんすい)面積」と呼ばれ、「ha」で表します。朱鞠内湖の面積は2,373haで、東京ディズニーランド約30個分や、東京ドーム約507個分に相当するとされています。
朱鞠内湖は、1943年(昭和18年)に完成した「雨竜第一ダム」によってできたダム湖です。まるで自然にできた湖のような、雄大で美しい景観で知られ、1974年(昭和49年)には道立自然公園に指定されています。
日本一つつみが高い人造湖「黒部湖」
人造湖といえば、ダムをイメージする人も多いでしょう。ダムの規模は水を堰き止めるつつみである「堰堤(えんてい)」の高さで分かります。
富山県の黒部湖(くろべこ)は、日本一堰堤が高いダム湖として有名です。堰堤の高さは約186mで、都心の高層ビルに匹敵します。
立山連峰(たてやまれんぽう)に囲まれた自然豊かな地に建つ黒部ダムは、観光スポットとしても人気です。遊歩道ハイキングや遊覧船での黒部湖クルーズ、堰堤からの放流イベントなどを楽しめます。
さまざまな日本一の湖を知ろう
日本一の湖と聞くと、大きさだけに目が行きがちです。しかし、深さや透明度、湖面標高など視点を変えて調べてみると、日本の地形や自然への理解がより深まります。
この機会に子どもと一緒に、山・川・湾などさまざまな日本一を探してみると、よい勉強になるでしょう。
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構成・文/HugKum編集部