「食」を通して子どもに伝える【ひな祭り】
ひな祭りにちなんだ食は数種類あります。一日を通して、食事・おやつと楽しむことができますよ。
ちらし寿司
「ひな祭り」というと、ちらし寿司が思い浮かぶ方多いのではないですか。スーパーで用意されるひな祭り用の特設の場にも、必ずと言っていいほどちらし寿司を作る材料が設置されていますよね。現在はちらし寿司をいただくことが多いですが、昔の祝い事には「なれ寿司」というものが食されていました。漢字で書くと「熟れ鮨(鮓)、馴れ鮨(鮓)」です。
魚に米と塩を長期間漬け込んで乳酸発酵させた食べ物です。酢飯で作るお寿司の原型のようなものですね。ですが発酵食品のため独特の匂いがあったこと、お祝いの席の食事として見た目の華やかさに欠けていたことなどの理由から、様々な具材を入れた「ばら寿司」をお祝いの席で頂くようになったようです。
ばら寿司とは皆さんの良く知るちらし寿司の原型です。ちらし寿司は華やかさに加え、語呂も「寿(ことぶき・めでたい)を司る(つかさどる・管理する)」と縁起もいいですし、見た目にも酢飯の上に華やかな具材を乗せたちらし寿司は、お祝いの席にぴったり。上に乗せる具材には女の子の成長を願った縁起の良い食材が用いられます。
海老:腰が曲がるまで長生きできますように
蓮根:先の見通しが良くなるように
錦糸卵:金銀を表し、豊かに暮らせるように
豆を入れて“まめに働けますように”という意味を加えるところもあるようです。
ちらし寿司をいただくときに「昔はこういうお寿司じゃなかったんだって!」と話してあげてみてはいかがですか?
はまぐりのお吸い物
ひなまつりの食事でいただく汁物は、はまぐりのお吸い物であることが多いですね。
これは、はまぐりの貝の特徴から用いられています。二枚貝のはまぐりは、対の貝殻がぴったりと合うのです。女性にとっては(誰にとってもそうですが)ぴったりと合う伴侶に恵まれることはとても幸せなこと。女の子を持つ親は“はまぐりの対になった貝のように娘に合う方がみつかりますように”と願いを込めてはまぐりのお吸い物をいただいていたのです。
白酒(甘酒)
昔のひな祭りでは、桃の花びらをお酒に漬けた桃花酒(とうかしゅ)を飲む風習がありました。その後、桃の花が映えるように白酒に桃の花を浮かべて飲んでいたものが、白酒のみでいただくことが主流になり、桃の花は目で見て愛でるという流れになったそうです。
そして、ひな祭りのお酒としてよく見かける白酒と甘酒。混同してしまいそうですが、実は全くの別物です。ひな祭りの歌にもある「すこし白酒 めされたか 赤いお顔の 右大臣」の白酒にはアルコールが含まれます。作り方がそれぞれ違うのです。
白酒は蒸したもち米にみりんや麹、焼酎を混ぜて仕込んだもの。ですから子どもは飲むことができません。甘酒はお米に麹を混ぜて保温し、でんぷんから糖分を取ったものですから子どもでもいただけます。購入するときはアルコールの有無を確認して購入しましょう。
甘酒の“酒”という字を見て『パパが飲むのにも書いてあるよ』『パパが飲んでいるお酒、飲んでもいいの?』『酔っぱらったりしないの?』と子どもが興味を持っていたら『大丈夫だよ、お名前に同じ字があるだけなの。お口つけてみてごらん』と言ってママやパパも一口飲んで、安心させてあげてくださいね。
おやつで伝えるひな祭り
ひな祭りは食事だけでなく、おやつとしていただく菓子もありますね。
菱餅
緑、白、ピンクの三食のお餅でできた菱形の菱餅。実際に食べたことはないけれどもひな人形の装飾の一つとして知っている、という方もいらっしゃるのではないですか。
菱餅は、ひな人形へのお供え物です。それぞれの色に意味があります。緑は大地を表し、子孫繁栄・長寿の願いも込められています。白は雪を表し、厄除けの願いがあります。ピンクは桃の花で魔除けを表します。昔はお餅を着色するにもヨモギの緑や天然のクチナシの果実から抽出した赤色色素を使いました。薬草の解毒作用や血圧低下の作用もあったようです。
形にも願いが込められています。菱餅のダイヤの形は、ある2つのものに似せた形です。1つは心臓や心の形、2つ目は厄除けや子孫繁栄の力がある菱の実です。いずれも女の子の健やかな成長と、子孫繁栄、厄除けを願ったもの。子どもと一緒に菱の実を図鑑で見ながら、菱餅の形と似ているか比べるのも一つの学びになります。「○○ちゃんの心の形だったらどんな形になる?」などお話してもいいですね。
ひなあられ
ひな祭りで人気の菓子と言えばひなあられですよね。ひなあられは江戸時代の「雛の国見せ」から始まりました。これは江戸時代、晴れた日にひな人形を外へ持ち出し、野外(国)の景色を見せてあげていたのが始まりです。その時のお供に食されていたのが菱餅を細かく切って作ったあられ。諸説ありますが、それが雛あられのはじまりと言われます。緑、ピンク、黄色、白と4色で作られているものが多いのですが、これは四季を表しています。一年を通して幸せを願う気持ちが込められていますよ。
食でひな祭りを楽しむ
ご紹介したお料理やお菓子、いずれも女の子の健やかな成長を願う気持ちが込められていますが、“お餅が苦手で菱餅は食べられない”“貝は苦手だからはまぐりは食べられない”という場合には無理をすることはないと思います。
しかし、込められた願いや意味は伝えていきたいですよね。例えば写真のように菱餅の色だけを合わせた洋風のケーキにして、色に込められた想いを伝えることもできます。
その他にも、男の子とママが楽しく食べられるようにカレーやサラダ、ケーキでひな祭りをお祝いするのはいかがですか?
行事を楽しく、美味しく楽しめますように。
文・構成/赤名麻由子
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赤名 麻由子