「AIがあるのに暗算って必要?」これからの時代に必要な「数のセンス」を育てよう!

演算能力が人間を遥かに凌駕するコンピュータ、だれもが携帯しているスマートフォン、音声で質問に答えてくれるAI…便利な現代ツールを手にしながら、なぜ子どもにとって計算力・暗算力が重要なのでしょうか。

大人になって、「暗算ができなくてもたいして困らない」と考えている方もたくさんいますよね。しかし、暗算力があるレベルを超えると、世界の解像度が変わってくることをご存じでしょうか。暗算力を経験のない方にとってはなかなか想像しづらいかもしれませんが、実は非常に有用なのです。

AI技術が活躍するこれからの時代。必要なのは「数のセンス」

暗算を習っているお子さんの保護者から、「新型コロナ関連のニュースをみて、ワクチン供給数や感染比率の数字を計算し、世界のワクチン接種率に興味をもちはじめた」などといったエピソードを、よくうかがいます。このような子には、間違いなく情報リテラシーが芽生えています。

さまざまな事象に関する数値の割合や残数を、瞬時に把握したり比較できると、文脈のなかの「数字の意味」を正確にとらえ、情報の奥の問題を深く理解できます。すると、おのずと社会的、科学的テーマへの判断力と興味がついてきます。

情報にあふれ、AI技術が活躍するこれからの時代には、数字に踊らされず、データの信頼性を判断でき、いざというときに自分で数字の意味を理解できる人こそ、重宝される人材になるでしょう。

「数のセンス」を育てるには?

では、「数のセンス」を育てるにはどうすれば良いのでしょうか。

子どもが低学年頃までは、まだ抽象的思考力が十分に伴わないため、具体物をつかって数量感覚を育てることが有効とされています。数量感覚とは、数字を直感的に量として捉えることができる、数に対するセンスです。五感を利用した実体験をとおして、数の概念にたくさん触れた経験が、就学後の数への理解に生きてきます。

しかし、桁が大きくなると、具体物で量の感覚をつかむことが難しくなります。中学年からはじまる単位の換算、比例問題、速さの問題など、あつかうテーマが抽象的な概念に移行すると、つまずく子も増えてきます。この段階における戸惑いを減らすためには、やはり日常のなかで数への感覚を研ぎ澄ましておくことと、問題解決に不自由しない計算力を育てることが重要です。

そろばん式暗算は、計算過程で数の変化が目にみえる点、低学年の子どもでも大きな桁を扱える点で、従来から数のセンスをきたえる、すぐれたツールとして選ばれてきました。

低学年の算数は、計算力が肝であるため、はじめから「自分は算数が得意!」と得意意識をもつことで、のちに学習への抵抗感を抱くことがなくなります。

計算が得意になるとさまざまなメリットが

創造性を育むために幼少期からのSTEAM教育が重要視されていますが、その基礎となる学問は数学です。しかし、幼児にいきなり「数学」を教えることはできません。数学の前段階として小学校で学ぶ「算数」があり、そのまた入口にあるのが「計算力」です。

数学嫌いは計算嫌いから始まると言われていますが、その逆もしかり。計算が得意な子は、学問の扉のまえで、強力な武器を手に入れたようなものです。

メリット①:ヒーローになれる!

子どもはひとの役に立つのが大好きです。暗算ができるようになった子が、「買い物をするとき、合計金額を計算してくれて助かる」という声を、保護者の方々からよく聞きます。

数に敏感な子どもたちは、日常のふとした会話で数字が出たときに、さまざまな計算を喜んで行うようになり、周りを驚かせるのです。ドライブ中に到着時間を予想したり、クラスの平均点をパッと計算したり、時間を逆算してスケジュールを立てたり、建物の高さを一瞬で換算したり…。大人よりもすばやく答えを出してしまう彼らのすがたは、暗算力をもたない者には超能力のように映り、まさにヒーローになれるでしょう。

「カッコいい!」「助かった、ありがとう!」と褒められ、自分の能力がまわりの役に立った経験は、子どもの自己有用感・自己効力感を高め、積極的にチャレンジに臨むマインドを育てます。

メリット②:学びが楽しくなる!

生活のなかで暗算力を積極的に使うようになると、学びが深まり、いろいろな場面で算数が役に立つことに気づきます。例えば、多くの子が苦手とする文章題のシチュエーションを、教科書の外でリアルに思考することで、自ら課題を発見し、解決するおもしろさが分かるようになります。

学問や知識が身近な生活にひもづくことを体感できると、主体的に学習に取り組む意欲もおのずとわいてきます。

メリット③:受験で有利になる!

現状、進学に避けて通れないペーパーテスト。すべての試験で必要とされる計算力には、スピードと正確性が求められます。限られた時間のなかで、いかに速く答えにたどりつけるかが、勝敗をわけると言えます。

計算のみならず、そろばん式暗算はワーキングメモリが鍛えられることで、マルチタスク処理や文字情報が多い試験対策にも有効です。また、数学問題の解き方は、問題文から直接読み取れないことが多いため、ひらめきが必要になります。機械的に筆算の訓練をするだけでは、ひらめき力は育ちません。答案の違和感に気づき、思考の近道をひらめくチカラを養うため、瞬時に計算の工夫をできるようになるためには、数のセンスを育てる心がけが必要です。

メリット④:グローバルな舞台でも自信をもてる!

世の中はすでにグローバル時代、いつ海外で活躍するチャンスが訪れるか分かりません。そのときに備えて、幼少期から言語教育に力を入れているご家庭も少なくありませんが、じつは、「算数が子どもの自信につながる」ことも、国を跨いで子育てをしている多くの家庭の共通経験になっています。

現地の言語能力がその国の子どもたちに勝ることはなくても、算数・数学の成績はほぼ、国内にいたときと同じレベルを維持できるため、劣等感を感じがちな新しい環境で、一つの「得意」は大きな支えと自信になり、心を安定させることができます。これは、子どもに限らず、大人にとっても同様に言えるでしょう。

「数字」は、どの分野でも求められるうえに、世界でも通用する言語なのです。

メリット⑤:デキる社会人になれる!

ビジネスの場面において、数字にツヨい人間が信頼されるのは、疑問の余地はないでしょう。数字や情報を正確に理解し、正確に伝える能力は、社会人としても不可欠です。

エンジニアや研究者など技術職はもとより、企画、営業、経営…など文系職といわれている職種においても、コストや時間、統計情報など、意思決定に数字を扱う場面は欠かせません。会話のなかで商談を決める際に、いちいち電卓を叩いていてはスムーズに話がまとまらない可能性もあります。かなえたい夢があって起業する場合も、数字を仲間にできると強力な武器になります。

メリット⑥:テクノロジーを操れる!

いま、ほとんどの業界にIT技術が浸透し、職種に限らず「計算してくれるツール」が日常的に利用されるようになりました。そのため、「自分で計算する必要はない」という主張も聞きますが、テクノロジーを操るのはあくまでも人間です。

OECDが実施するPISA(生徒の学習到達度調査)の数学分野には、2021年からコンピュータを用いて効果的に問題解決するための思考法「Computational Thinking」などが追加され、爆発的に進化しているITやAIを使いこなす為の姿勢・スキルがいよいよ重要になってきています。

そのうえで、機械が出した答えのミスに気づくのも、その修正を行うのも、人間です。ツールだけに頼っていては、技術に操られる側になってしまいます。これからの未来を背負う子どもたちには、テクノロジーを操る主導権を手にしてほしいと切に願います。

幼少期に身につけた暗算力は、一生役立つ財産に

暗算力をきたえ、日常のなかで応用できるようになる。まわりの役に立ってヒーローになる。数に強い自分を好きになる。数字が世界で通用することに気づく。学習の早い段階でこのような経験や気づきを得た子は、数字が大好きな子に育ちます。

また、IT社会だからこそ、ITに頼らない力が大きな差別化になり、日々進化する技術を利用できる人間自身の能力が大事になります。

電卓は、正確性を求める場面で利用される補助ツールでしかありません。暗算力から生まれる数のセンスや概算力は、生活のなかで生きる能力なのです。幼少期に身につけた暗算力は、一生役立つ財産となるはずです。

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執筆

株式会社Digika 代表 橋本恭伸
マイクロソフトにグローバル新卒採用第一期生(MACH05)の一員として入社。The University of Sheffield MBAを経て楽天株式会社へ。PT. Rakuten Indonesia, PT. Rakuten Belanja OnlineのDirectorを歴任し、Rakuten Indonesia Country Headとして海外でのビジネスを現地の最前線で率いる。人々の可能性を最大限引き出す力になることを自身のテーマに掲げ、株式会社Digikaで世界最速の「計算力」の短期効率的習得を通じて世界中の子供たちの夢の実現をサポートします。

 

 

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