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アンデルセン童話『みにくいアヒルの子』
まずは、『みにくいアヒルの子』の基本情報と作者についてをチェックしておきましょう。
『みにくいアヒルの子』とは
『みにくいアヒルの子』(原題: Den grimme Ælling)は、1843年にデンマークのハンス・クリスチャン・アンデルセンによって発表された作品です。
ハンス・クリスチャン・アンデルセンはどんな人?
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805~1875年)は、デンマークを代表する作家です。『みにくいアヒルの子』のほかにも、『人魚姫』や『雪の女王』、『おやゆびひめ』など、現代まで長く親しまれ続けている作品を多数発表しました。
数々の挫折や辛い経験も多かったため、貧しさや苦労が童話の中に表現されたと考えられています。グリム童話のような民俗説話からの影響はあまりなく、創作童話が多いことがアンデルセンの作品の特徴です。
あらすじ・ストーリー紹介
ここでは『みにくいアヒルの子』のあらすじを見ていきましょう。あらすじは「詳しいバージョン」と「簡単なバージョン」の2種類にまとめました。
詳しいあらすじ
あるところに、卵の孵化を見守るアヒルのお母さんがいました。アヒルのお母さんはかわいい雛たちがどんどんと生まれて喜んでいましたが、ひとつだけなかなか孵化しない卵がありました。その卵から、ようやくアヒルの子が生まれましたが、その身体は他の雛たちとは違って、大きく、色も変わっています。
周りのアヒルの仲間たちやきょうだいたちは、そのアヒルの子を「みにくい」と言っていじめ始めます。お母さんにまで「お前がどこかに行ってくれたら…」と言われてしまったアヒルの子は、とうとう巣を逃げ出しました。しかしながら、どこへ行ってもアヒルの子は仲間はずれにされたり、いじめられてしまったり……。
行くあてもなく彷徨っていると、ある日、アヒルの子は美しい白鳥の群れを見かけました。白鳥の美しさに見惚れながら、アヒルの子は「あの群れの仲間に入れてもらえたら、どんなにうれしいだろう」と考えます。しかしながら、「みにくい」と言われて暮らしてきたアヒルの子には、白鳥のように美しい姿になるなんて、夢に見ることもできませんでした。
ひとりぼっちで寒い冬を越えると、ようやく春がやってきました。アヒルの子はつばさで羽ばたいてみると、前よりも強く空気をうつことができ、体が持ち上がって、飛ぶことができました。そんなとき、白鳥の群れが泳いでいくのを再び見かけました。
「あの美しい白鳥のもとへ飛んでいこう。こんなにみにくいんだから、きっと殺されるに違いないけれど、白鳥にだったらいいや。殺されてしまおう」
そうして近づいて行くと、美しい白鳥たちもアヒルの子のもとへと近づいてきました。
「さあ、ぼくを殺してください」と、アヒルの子は頭を水の上に垂れて殺されるのを待ちました。ところが水面に映った自分の姿は、あのみにくいアヒルの子ではありませんでした。このときはじめて、アヒルの子は自分がアヒルではなく、白鳥だったことに気づいたのです。
白鳥たちは、この新入りの白鳥を歓迎してくれました。白鳥は「美しい鳥の中でもいちばん美しい」と言われながらも、決していばったりはせず、仲間たちと幸せに飛んでいきました。
あらすじを簡単にまとめると…
アヒルのお母さんのもとに、他の雛たちとは変わった見た目のアヒルの子が生まれました。きょうだいや仲間の鳥から「みにくい」といじめられ、旅に出たアヒルの子は、どこへ行っても仲間はずれにされて、孤独に暮らしていました。
春になり、空を飛ぶことができるようになったアヒルの子は、水面に映る自分の姿を見ました。すると、そこに映っていたのはみにくいアヒルの子ではなく、美しい白鳥の姿でした。自分がアヒルではなく白鳥の子だったことにこの時はじめて気づきました。
主な登場人物
ここでは、『みにくいアヒルの子』の主な登場人物を押さえておきましょう。
みにくいアヒルの子
他の雛よりも遅く生まれ、体も大きく、色も異なるアヒルの子。
お母さんアヒル
はじめのうちは、他とは見た目が違っても、アヒルの子を可愛がっていたものの、やがて邪険にしはじめる。
アヒルのきょうだいたち
みんなとは見た目が違うアヒルの子を「みにくい」と言っていじめる。
白鳥
鳥のなかでも大変美しい鳥。
みにくいアヒルの子の正体・結末は?
なかには『みにくいアヒルの子』の正体や結末だけをサクッと思い出したい方もいるかもしれませんね。ここではストーリーの大筋は省略して、アヒルの子の正体と結末だけを簡単に説明します。
みにくいアヒルの子の正体は白鳥
周りのきょうだいや仲間から「みにくい」と言われて仲間はずれにされていたアヒルの子は、実はアヒルではなく、白鳥の子でした。物語の冒頭で、みにくいアヒルの子だけ「孵化が遅い」という描写があるため、もともと白鳥の卵がアヒルの巣に混入していたのだと考えられます。
最後は白鳥の仲間の元へ
成長したアヒルの子は、水面に映った自分の姿を見てはじめて、自分が白鳥だったことに気がつきます。そして、最後は「美しい」と歓迎されながら、白鳥の仲間の元へと帰っていくのでした。
多くの鳥が、雛から成鳥へと育つ段階で羽が生え変わり、それまでとはまったく異なった色になります。たとえば、白鳥の雛の羽はグレーで、この段階では一見しただけでは白鳥とは分かりづらい見た目をしています。それに対して、アヒルの子もまた、雛のときはひよこのような黄色い羽毛で、大人になるにつれて白い羽に生え変わります。鳥のこのような特性が、巧妙に活かされた物語であることがわかりますね。
この物語から読み取れる教訓は?
この物語から読み取れる教訓は、「なんでも見かけで判断してはいけない」「みんなと違うことに劣等感を抱く必要はない」ということではないでしょうか。
なにか悪いことをしたわけでもなく、ただ「みんなと見た目が違う」だけでいじめられ、仲間外れにされたアヒルの子。結局は美しい白鳥の子であったことが最終的にはわかり、見かけは人の判断材料にならないことが実感できます。
また、「みんなと違う」ことで悩み、孤独を感じていたアヒルの子は、最終的には自分の仲間を見つけ歓迎されます。
いま現在「みんなと違う」ことで悩んでいる子には、「みんなと違うことに劣等感を抱く必要はない」そして、「世界は広く、自分を受け入れてくれる仲間はきっとどこかにいる」という希望を与えてくれるお話でもあります。
「みにくいアヒルの子」を読むなら
最後に、『みにくいアヒルの子』を読む際におすすめの書籍をご紹介します。
みにくいあひるの子 (ブティック社)
アニメ調の挿絵が特徴的な、ちいさなお子さんでも親しみやすい一冊。わかりやすい文章と、カラフルなイラストで、「子どもが飽きずに最後まで聞いてくれる」と定評のあるシリーズです。持ち運びやすい小さめサイズ&頑丈なつくりで、毎晩の読み聞かせにもぴったり。
アンデルセンの絵本 みにくいあひるの子(小学館)
知らない人はいないと言えるほど有名な『みにくいあひるの子』の物語。しかしながらこの絵本は「慣れ親しんだこのお話に、まさか涙するなんて……」と大人たちからも大好評の一冊です。繊細なイラストとともに紡がれるお話から、「いつかきっと変われる」という勇気がもらえます。
大人になって読むと、また違った感動が味わえる一作
今回は、アンデルセン童話『みにくいアヒルの子』のあらすじや読み取れる教訓、おすすめ絵本をご紹介してきました。
大人になって読むと、子どもの頃とはまた違った感動が味わえる本作。今回ご紹介した以外にも、なにか教訓を感じ取れるかもしれません。お子さんに読み聞かせをしながら、ぜひじっくりと考えてみてくださいね。
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文・構成/羽吹理美