『クリスマス・キャロル』ってどんな話? 3人の幽霊が主人公に伝えたものとは【不朽の名作を深堀り】

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『クリスマス・キャロル』は、クリスマスの時期になると必ず読みたくなるという人がたくさんいます。タイトルは知っているものの、どんなお話か知らないという人に、作者やあらすじ、登場人物について解説していきましょう。

クリスマス・キャロルとは?

まずは、『クリスマス・キャロル』がどういう作品なのかを解説していきます。

イギリスのチャールズ・ディケンズの作品

『クリスマス・キャロル』は、イギリスの文豪、チャールズ・ディケンズの作品です。『クリスマス・ブックス』というクリスマスの物語集の第1作として、1843年12月に出版されました。

この作品は、クリスマス・ストーリーのなかでもっとも有名で、多くの読者を獲得し、ディケンズの名前を世界中に知らしめた作品です。

国: イギリス
発表年:1843年
おすすめの年齢:小学校高学年以上

チャールズ・ディケンズってどんな人?

チャールズ・ディケンズ Wikimedia Commons(PD)

ディケンズは、1812年イングランドハンプシャー州に生まれます。父親の借金のため、12歳から働き、新聞記者を経て作家となります。子どものころに貧困で苦しんだ経験から、貧しい人たちの立場で社会のさまざまな問題について強く訴える作品が多くあります。

代表作は、『クリスマス・キャロル』のほかに、『オリバー・ツイスト』『大いなる遺産』などです。

いつの時代の話?

1840年代のイギリスは、資本主義の欠点が表面化し、農作物の大不作に見舞われたこともあり、国民の貧富の差が大きくなったころです。物語には、お金持ちと貧しい人々の関係性や社会状況なども描かれています。

ちなみに、日本でいうと1843年は江戸時代後期にあたります。

物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介

1843年に刊行された『クリスマス・キャロル』。扉絵は挿絵画家ジョン・リーチによる。Wikimedia Commons(PD)

ここでは、『クリスマス・キャロル』のあらすじを、「詳しく」&「簡単に」2バージョンでお伝えします。

詳しいあらすじ(ネタバレあり)

ロンドンの下町で、「スクルージ・アンド・マーリー商会」という事務所をかまえるスクルージ。彼は金儲けのことしか頭になく、冷酷で非情な男でした。ある年のクリスマスの前夜、そんな彼の元に、7年前になくなった相棒・マーリーの幽霊が現れます。マーリーの幽霊は、「これからおまえさんは、3人の幽霊に取り憑かれる」と告げて、消えてしまいます。

マーリーの予言通り、幽霊が現れます。1の幽霊は、スクルージに過去のクリスマスを見せます。金の亡者になりつつあったスクルージには、かつて将来を約束した恋人がいました。しかし、スクルージの金ばかり追い求める姿に愛想をつかし、その恋人から別れを告げられてしまったのです。その過去を見せられ、打ちひしがれるスクルージ。

2の幽霊は、スクルージに現在のクリスマスを見せます。事務員のクラチットが家族といっしょに、貧しいながらも楽しいクリスマスパーティーをしている様子や、甥のフレッドがクリスマスの食卓を囲む姿など、知人たちがクリスマスを楽しむ光景を見せたのでした。その光景のなかで、スクルージはクラチットの子どもが病気がちで長く生きられないことを知り、過去の自分の言動を深く後悔します。

3の幽霊は、未来のクリスマスを見せます。未来のクリスマスでは、ある男の死を皆が喜んでいました。その男の墓碑には、スクルージの名が刻まれていました。

クリスマスの朝、目を覚ましたスクルージは、マーリーと3人の幽霊に感謝し、改心を誓います。そして、クラチット家にごちそうを贈り、フレッドの家でクリスマスのお祝いを満喫します。

改心したスクルージは、のちに「ロンドンで一番クリスマスの楽しみ方を知っている人」となるのでした。

簡単なあらすじ(ネタバレなし)

金儲けのことしか頭になく、冷酷で非情な男、スクルージ。ある年のクリスマスの前夜、彼の前に7年前になくなった相棒・マーリーの幽霊が現れます。マーリーの幽霊は、「これから3人の幽霊に取り憑かれる」と告げて、消えてしまいます。マーリーの予言どおり、次の夜からスクルージの目の前に幽霊が現れ…。

『クリスマス・キャロル』の主な登場人物

ここからは、『クリスマス・キャロル』に登場する主なキャラクターを紹介していきます。

ストーリー内に登場する幽霊(ニュージャージー州発行のディケンズ生誕200周年記念切手)

スクルージ

「スクルージ・アンド・マーリー商会」という事務所をかまえている。金儲けのことしか頭になく、冷酷で非情な男。

マーリー

スクルージの相棒。7年前に亡くなり、スクルージの前に幽霊となって現れる。

フレッド

スクルージの甥。陽気で、気の優しい青年。

ボブ・クラチット

「スクルージ・アンド・マーリー商会」の事務員。家族思い。

第1の幽霊

過去のクリスマスの幽霊。見た目は子どものようにも老人のようにも見える。

第2の幽霊

現在のクリスマスの幽霊。明るく陽気な巨人。

第3の幽霊

未来のクリスマスの幽霊。真っ黒な衣を身にまとい、得体の知れない姿をしている。

『クリスマス・キャロル』が読み継がれている理由

クリスマス・キャロルが読み継がれている理由
180年以上も読み継がれてきた『クリスマス・キャロル』

『クリスマス・キャロル』が長きにわたり、多くの人に読まれているのには理由があります。作品の魅力や特徴、感動のポイントなどをご紹介しましょう。

世界中で親しまれ、メディア化されている

『クリスマス・キャロル』をはじめとしたディケンズの作品は、ビクトリア女王から貧しい子どもまで、幅広い世代から支持を得ています。また、各国語で翻訳され、世界中で親しまれるほどの世界的人気作家です。

『クリスマス・キャロル』はとくに人気があり、実写映画、アニメ映画、舞台などメディア化されています。

登場人物たちの魅力

スクルージは憎らしいキャラクターですが、どこか情けなさやコミカルな印象も受けます。また、フレッドは気持ちのよい青年ですし、ボブ・クラチットにもどこかおもしろさがあります。

なんといっても、ストーリーの鍵を握る幽霊たちも魅力的です。幽霊と聞くと、怖い印象がありますが、第1の幽霊と第2の幽霊には怖さがなく、むしろ親しみやすい雰囲気があります。第1の幽霊は、幽霊というよりは精霊のような出で立ち。第2の幽霊は多幸感に満ち溢れるような姿をしています。ただし第3の幽霊は、真っ黒な衣に包まれ、口もきかず、身動きもしないため、恐ろしさが際立ちます。

このような登場人物たちが魅力的であることも、『クリスマス・キャロル』の読みどころです。

クリスマスをよみがえらせた

現在では、クリスマスというとにぎやかで楽しいイベントとなっていますが、19世紀中ごろのイギリスでは、クリスマスを祝う習慣がなかったのだそう。しかし、この『クリスマス・キャロル』が発表されるやいなや、物語同様、クリスマスを家族や大切な人と過ごし、貧しい人にも心を寄せて、クリスマスを祝うという風習が広まったといわれています。

気持ちのよい読後感

スクルージは、幽霊たちによって心を入れ替えます。そしては物語はハッピーエンドに。読後感が気持ちよいのも『クリスマス・キャロル』の魅力といえるかもしれません。

名作『クリスマス・キャロル』を読むなら

名作と呼ばれる『クリスマス・キャロル』のおすすめの本をご紹介。本作に興味を持ったら、ぜひ手にとってみてください。

クリスマス・キャロル (小学館学習まんが 世界名作館)

「学習まんが 世界名作館」は、世代を超えて文学史にのこる名作に現代の子ども達が親しんでもらうための、新しい学習まんがシリーズ。まんがの表現形式で、名作『クリスマス・キャロル』を読むことができます。

クリスマス・キャロル

こちらは絵本版『クリスマス・キャロル』。小学校低学年でも読みやすいのが特徴です。

小学館世界J文学館

この1冊で125冊の電子書籍を読める新時代の児童文学全集。『クリスマス・キャロル』はもちろん、その他の世界名作、現代児童文学、日本やアジアの古典、SF、詩まで、125作品を電子書籍で読むことができるのが特徴です。紙の本は、1作品を見開きで紹介する名作図鑑となっています。

クリスマス・ストーリーの古典を読んでみよう

『クリスマス・キャロル』は、数あるクリスマス・ストーリーのなかでも名作です。幽霊が出てくる不思議な話でもあるので、小さなお子さんでもおもしろく読むことができるでしょう。

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文・構成/HugKum編集部

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