O・ヘンリー作品集とは?
まずは『O・ヘンリー作品集』の作品情報や、作者について知りましょう。
アメリカの小説家、O・ヘンリーの作品
『O・ヘンリー作品集』は、アメリカの小説家のO・ヘンリーの短編小説から31編を選んだ作品集です。貧しい労働者や無名の芸術家、ホームレスなど、一生懸命生きる人々の人間模様がユーモラスに描かれています。
この作品集に収録されている「賢者の贈りもの」は、1905年にアメリカで発表されました。「賢者の贈りもの」は、クリスマスを舞台にしたストーリーであることから、クリスマス劇の演目として人気があります。
作者:O・ヘンリー
国:アメリカ
発表年:1905年(『賢者の贈りもの』)
おすすめの年齢:小学校高学年以上
O・ヘンリーってどんな人?
O・ヘンリー(1862-1910)の本名は、ウィリアム・シドニー・ポーターといいます。銀行の出納係をしていたとき、お金をつかいこんだ疑いで起訴され、逃亡生活ののち刑務所に入ってしまいます。その服役中に短編の小説を書き、「O・ヘンリー」のペンネームで発表しました。
出所後はニューヨークに移り住み、作家として活躍し、1903〜1906年ごろまで毎週1篇の作品を書きあげたというエピソードがあります。そのため、生涯に残した短編の数は、270〜500篇ともいわれています。
いつの時代の話?
『O・ヘンリー作品集』に収録されている話は、20世紀初頭のアメリカの話です。このころのアメリカは、工業が大きく発展し、金融の中心がロンドンからニューヨークに移り、移民がたくさんアメリカに入ってきた時代でした。
O・ヘンリー作品集の代表的な物語とあらすじ
ここでは、『O・ヘンリー作品集』の代表的な物語のあらすじを、「詳しく」&お子さんへの説明に便利な「簡単に」の2種類ご紹介します。
賢者の贈りもの
『賢者の贈りもの』は、クリスマスを舞台に、若い夫婦が贈り物をしあうストーリー。読み終えたときに、きっと心が温まります。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
若い夫婦のジムとデラは、貧しかったが仲むつまじく暮らしていた。ある年のクリスマス・イヴに、デラはジムにプレゼントを贈りたいと考えていたが、どうしてもお金が足りない。そこで自分の自慢である長い髪の毛を売り、ジムの自慢の懐中時計にぴったりな鎖を買う。
その晩、帰宅したジムは、髪の毛が短くなったデラを見て呆然とする。というのも、ジムもデラのために懐中時計を売り、プレゼントとしてくしを買っていた。
ふたりはお互いのために大切なものをお金に換え、プレゼントを用意したのだった。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
若い夫婦のジムとデラは、貧しかったが仲むつまじく暮らしていた。ある年のクリスマス・イヴに、デラはジムにプレゼントを贈りたいと考えていたが、どうしてもお金が足りない。一方、ジムもある決心をし、デラのために驚くようなプレゼントを用意したいと考えていて…。
改心の救済
『改心の救済』は、「よみがえった改心」「よみがえった良心」「改心した男」というタイトルでも知られている話です。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
金庫破りの名人・ジミー・バレンタインは、刑務所を出所してすぐに金庫破りを再開する。刑事のベンはすぐにジミーの仕業だと見抜くが、ジミーはうまく行方をくらませていた。
ある日ジミーは、小さな町の銀行家の娘アナベルに一目惚れし、互いに恋に落ちる。ジミーは名前を「ラルフ」と変え、金庫破りをやめてまっとうに暮らし始める。
いよいよアナベルとの結婚を2週間後にひかえたときに、アナベルと「ラルフ」は新しい金庫室を見学しに行く。しかしそこには、証拠を見つけてジミーを捕まえようとベンが待っていた。たまたま一緒にいたアナベルの姉の長女・メイが、次女のアガサをうっかり新しい金庫に閉じ込めてしまう。アナベルは「ラルフ」に助けを求めると、彼は手際よく金庫を破り、アガサを救け出す。
「ラルフ」は覚悟を決め、ベンに自分を逮捕するように言う。しかし、ベンは彼を見逃す。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
金庫破りの名人・ジミー・バレンタインは、刑務所を出所してすぐに金庫破りを再開する。刑事はすぐにジミーの仕業だと見抜くが、ジミーはうまく行方をくらませていた。ある日ジミーは、小さな町の銀行家の娘アナベルに一目惚れし、互いに恋に落ちる。ジミーは名前を「ラルフ」と変え、金庫破りをやめてまっとうに暮らし始める。時は経ち、いよいよアナベルとの結婚を2週間後にひかえたときに思いもよらぬ事件が起きる。
最後のひと葉
「最後のひと葉」は、O・ヘンリーの短編のなかでも有名な話です。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
スーとジョンジーは若い画家の卵。ふたりは芸術家達が集まるニューヨークのアトリエで一緒に暮らし始めた。その年の秋、ジョンジーが重い肺炎にかかってしまう。ジョンジーは生きる気力を失い、窓の外のツタの葉を数えながら「最後のひと葉が落ちるとき、私も一緒に死んでしまう」と言う。
彼女たちと同じアトリエには、老画家のベアマンが住んでいた。彼は「いつか最高傑作を描く」と豪語しつつも、しばらく絵を描くことなく酒を飲んだくれる日々を送っていた。
スーはベアマンに、ジョンジーが「葉が落ちたら死ぬ」と思い込んでいることを相談する。
その夜、冷たい雨風が一晩中続いた。翌朝窓の外を見ると、たった一枚だけ葉が残っていた。その次の日も強い雨風はおさまることがなかった。しかし、最後の一葉は残り続ける。それを見たジョンジーは、生きる気力を取り戻す。
実は、残った葉はベアマンが嵐の中、壁に描いたものだった。老いた体にむちを打って描いたため、ベアマンは肺炎にかかり亡くなってしまう。壁に描いた最後のひと葉が、ベアマンの最高傑作となってしまったのだった。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
スーとジョンジーは若い画家の卵。ふたりは芸術家達が集まるニューヨークのアトリエで一緒に暮らし始めた。その年の秋、ジョンジーが重い肺炎にかかってしまう。ジョンジーは生きる気力を失い、窓の外のツタの葉を数えながら「最後のひと葉が落ちるとき、私も一緒に死んでしまう」と言い出す。スーは同じアトリエに住む老画家・ベアマンにそのことを相談し…。
警官と賛美歌
O・ヘンリーの短編5編をオムニバス映画化した『人生模様』。この「警官と賛美歌」もそのなかの1編として映画になっています。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
ニューヨークに住むホームレスのソーピーは、もう何年も寒さの厳しい冬の間は刑務所で快適に過ごすことにしていた。今年もそろそろ警官に逮捕してもらおうと、無銭飲食を試みたり、ショーウィンドーを割ってみたりするが、なかなかうまく思い通りにいかない。
ソーピーは静まり返った街の一角にあった古い教会で足を止める。教会からはオルガン奏者の奏でる讃美歌が流れてきていた。その歌を耳にした瞬間、ソーピーは金網にしがみつく。その歌は、母親や友人がいて、自分自身も立派な人間になりたいと思っていたころによく聞いていた讃美歌だった。ソーピーは真人間に戻る決意をする。その瞬間、巡査に腕を捕まれてしまう。翌朝、法廷で「島で三か月」とソーピーに判決がくだされる。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
ニューヨークに住むホームレスのソーピーは、もう何年も寒さの厳しい冬の間は刑務所で快適に過ごすことにしていた。今年もそろそろ警官に逮捕してもらおうと、無銭飲食を試みたり、ショーウィンドーを割ってみたりするが、なかなかうまく思い通りにいかず…。
二十年後
この「二十年後」は、短編として世界的名声を得た作品ともいわれれています。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
幼馴染で親友のボブとジミーは、20年後の同じ日時、同じ場所での再開を約束して別れる。ボブは一旗あげようと西部に行き、ジミーは生まれ育ったニューヨークに残った。
そして約束の日、時刻通りにやってきたボブはジミーを待っていると、夜中に巡回中の警察官がやってくる。ボブは警察官に、ジミーとの約束のことや西部での成功体験を語る。警察官が去った後、 ジミーと思しき男が現れる。2人はともに歩き始めるが、明るい場所に出たところでボブはいっしょに歩いていた男がジミーではないことに気づく。その正体は警察官で、指名手配されていたボブを逮捕しに来たのだった。
警察官はボブに手紙を手渡す。実は、最初に会った警察官がジミーだったのだ。ジミーは自身の手で親友を逮捕したくなかったため、別の警察官を派遣したことが明らかになる。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
20年前、幼馴染で親友のボブとジミーは、20年後の同じ日時、同じ場所での再開を約束して別れた。ボブは一旗あげようと西部に行き、ジミーは生まれ育ったニューヨークに残った。そして約束の日、時刻通りにやってきたボブはジミーを待つが…。
O・ヘンリー作品集が読み継がれている理由
『O・ヘンリー作品集』がこれまで読み継がれているのには理由があります。その理由を解説していきましょう。
起承転結がはっきりしていて飽きない
O・ヘンリーが書く小説の特徴は、ほとんどが短編小説です。そのため、すぐに読み終えることができます。また、起承転結がはっきりしていてメリハリがあるので、途中で飽きることがなく読めるのもよい点です。
物語の最後にどんでん返しが待っている!
O・ヘンリーの作品は、いずれもユーモアや哀愁を感じられます。また、物語の出だしの巧妙さと、物語の最後にどんでん返しが待っている作品が多く、驚きの結末が鮮やかです。これらの特徴がO・ヘンリーの作品の魅力と言えるでしょう。
さまざまなエンターテイメントに
O・ヘンリーの作品は、映画化や舞台化され、その魅力は世界中で親しまれています。また、『賢者の贈りもの』は、日本のカタログギフトの会社のCMのモチーフにもなりました。
名作「O・ヘンリー作品集」を読むなら
ここからは、『O・ヘンリー作品集』のおすすめの本を3冊ピックアップしてご紹介します。
最後のひと葉: O・ヘンリー傑作選II
「最後のひと葉」のほか、「感謝祭の二人の紳士」「芝居は人生だ」「金のかかる恋人」など、O・ヘンリーの名作短篇が14篇詰まった本です。すべて新訳で読むことができます。
賢者の贈り物
小・中学生向けのO・ヘンリー短編集の決定版です。新たな挿絵で、「人間って、ちょっぴり悲しくて、でも、愛しい」そんな物語が10編収録されています。
小学館世界J文学館
この1冊で125冊の電子書籍を読める新時代の児童文学全集。『O・ヘンリー作品集』はもちろん、その他の世界名作、現代児童文学、日本やアジアの古典、SF、詩まで、125作品を電子書籍で読むことができるのが特徴です。紙の本は、1作品を見開きで紹介する名作図鑑となっています。
読み終えたら心が温まる話
O・ヘンリーの作品はどれも、物語の結末に驚きが隠されています。また、読み終えたら心がじーんと温まるものばかりです。過去に読んだ方も未読の方も、機会があればぜひ手に取ってみてください。
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文・構成/HugKum編集部