今回は1歳児の子どもがいるママのお悩みをピックアップ! 初めての誕生日を終え、少しずつ育児のペースをつかんできている中で、今悩んでいることとは?
Q. 1歳児にも“しつけ”は必要ですか?
A. どの年齢でも子どもにしつけは必要ありません
「しつけなくて大丈夫?」「たまにはしっかり叱ったほうがいい」という声を耳にすることがありますが、しつけは必要ありません。ただ、“しつけ”をどう定義しているかによります。モンテッソーリ教育では、あくまで子どもと大人は人格を持った一人の人間として平等と考えています。例えば「夫が妻をしつける」ということはしないですよね。それと同様に、子どもをしつける必要はありません。
しかし、以下の3つのような場面では、制限を設けることが必要です。
①危険な場合
「ここで遊ぶと椅子から落ちてしまいそうだから、あっちで遊ぼうか?」
「この木にぶつかりそうだから、広い方に行って遊ぼうね」
②人や物に危害を加えている
「こっちに投げたら人に当たってしまうから、この箱の中に投げようか?」
「(叩いている手を制止して)人のことはたたきません。返してほしい時は『かえして』って言うんだよ」
③次に同じことをやった時に「いいよ」と言ってあげられないこと
「この棒はぶつかると痛いから、(タオルを筒状にして)これにするのはどう?」
「ドアの向こう側にいる人がびっくりしちゃうから、こっちのおもちゃで遊ぼうか?」
この時に大事なのが、「何がだめなのかを明確に伝えること」「代替案を提案すること」です。1歳児は考える力や自制心がまだ未発達なため、私たち大人が育ちを助けてあげる必要があります。
Q. 食事中に席を立って食事が進まない
A. 「運動の敏感期」など、3つの原因が考えられます
1つ目は10ヶ月~4歳ごろに見られる「運動の敏感期」。これは、とにかく動きたい、手を使いたい衝動にかられる時期。プラス自己コントロール力が未発達なため、衝動が抑えられないということが考えられます。
2つ目はコンディションの悪さ。疲れていたり、眠かったり、おなかが空いていなかったりすることが食事に集中できない原因になっているかもしれません。
3つ目は食事の時間の長さ。1歳児の集中力はあまり長く続きません。そして、食事時間が長くなってくると、満腹中枢が刺激されて満腹感を感じてしまうため、集中できなくなることもあります。
食事をスムーズに進めるための5つのポイントをご紹介します。
① 環境を整える
テーブルと椅子の高さが合っているか、ベルトはきつくないか、足がブラブラしていて不快感がないかを確認。あとは、子どもの視線の先にテレビやおもちゃが入らないよう、座る位置を調整するのも◎。
② ルールを伝える
社会で生きていく上で必要なルールやマナーはしっかり伝える必要があります。「ごはんは椅子に座って食べるよ。ここにお尻をつけて座ろうね」「フォークは食べる時に使うものだよ」など、何度も繰り返し伝えていきましょう。
③ 活動の中で子どもの欲求を満たす
運動の敏感期なこともあり、子ども自身も動く衝動に突き動かされて行動しているため、コントロールすることが困難な状態。そのため、食事以外の時間に公園でめいっぱい体を動かしたり、おうちの中で手先を使った遊びをするなど、「動きたい!」衝動を満たしてあげましょう。
④コンディションを見極める
眠い、疲れた、おなかがすいていないなどのコンディションを見極めて「これだけ食べたら終わりにしよう」など、「ここまで」という終わりを大人が設けてあげましょう。食事時間は30分と決めるなど、時間制限を作ることもいいですね。
⑤ 大人がお手本となる
子どもに「席を立ったらいけない」と伝えていても、大人は調味料やスプーンなどを取りに席を立つことがありますよね。乳幼児期の子どもはあらゆることを吸収している最中なので、大人の振舞い方も気をつけていきたいところです。
Q. 1歳児にも習い事は必要?
A. 「子どもが自らやりたいと望んだ時」がタイミング
習い事は、周りが始めると焦ったり、子どもの姿を見て何かやらせたほうがいいのではないかと漠然と不安になったりすることがありますよね。
しかし、習い事を始めるポイントは「子どもが自らやりたいと望んだ時」です。もちろん、それ以前に何かやることが悪いことでは決してありません。
子どもの習い事で大切なこと
・子どもの「やりたい!」が叶う
・子どもに無理がない
1歳では「やりたい」「やりたくない」の意思表示は難しいかもしれませんが、新しい場所に行くことで子どもが人とかかわる機会が持てたり、私たち大人も子ども以外の人とかかわってリフレッシュに繋がったり、安心に繋がったりすることもあります。
意思表示ができるようになってくると、習い事に「行きたくない」「練習をやりたくない」と言うことも出てくるかもしれません。その時も無理やりやらせるのではなく、子どもの意志を尊重してあげることが大切です。
1歳になるとできることが増え、悩みの幅も広くなる
歩く、押す、つかまる、さわるなどなど、いろいろなことができるようになり、常にアンテナを張り巡らせて、いつも元気いっぱいの1歳児。その姿は微笑ましく、とてもかわいいですが、行動範囲が増えることで、その分悩みも増えますよね。しかし、「しっかり子どもをしつけなくては!」と、必要以上に責任感を感じなくても大丈夫! 発達の主役は子どもだからこそ、大人はその育ちを導くガイド役に徹して、子どもの育ちを助けてあげることが大切です。
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記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
取材/本間綾