奈良が誇る「吉野葛」とは? 「吉野本葛」との違い、高級品である理由、自宅レシピなどを解説

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葛粉の中でも高級品として知られる「吉野葛」。日本では古くより料理やお菓子、漢方に重宝されてきました。本記事では、「吉野葛」とはどんなものか、なぜ高級品なのか、葛の効能、また「吉野本葛」との違いなどを紹介していきます。

暑い夏には、喉越しが良く、見た目も涼しげな葛切りや、葛まんじゅうなどの和菓子が食べたくなりませんか? これらの和菓子に使われているのが葛粉です。その中でも「吉野葛」は高級品として知られています。

しかし、吉野葛とはどんなものか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。まずは吉野葛とはどんなものなのか、原料となる「葛」とはどんな植物なのか、「吉野葛」と「吉野本葛」との違いなどをを一緒に見ていきましょう。

「吉野葛」とは?

「吉野葛(よしのくず)」は、奈良県吉野地方でつくられる葛粉のことをいいます。葛粉とは、葛の根に含まれるデンプンを精製して粉にしたもの。水に溶かして熱を加えると、とろみがつき、冷やすと透明なまま固まるという特性があります。

吉野葛の粒子は細かく、コシや粘りがあり、尚かつ滑らかな食感が特徴です。また透明感に優れ、日本では古くより和菓子や精進料理など、幅広く使われてきました。

「葛」ってどんな植物?

葛粉の原料となる「葛」は、秋の七草の1つ。マメ科クズ属の植物。秋の七草の1つです。北海道から九州まで、日本全国の日当たりのよい山や野原に生息する、つる性の多年草。長いつると大きな葉っぱが特徴で、初秋には赤紫色のきれいな花をつけます。

葛の花

葛は繁殖量が強く、現在では雑草として厄介がられることもあるようです。しかし葛の葉は食用、花は生薬、茎は繊維に、そして根は葛粉に使われ、「葛は捨てるところがない」といわれるくらい、生活に役立つ植物なのです。

「葛」という名前の由来は?

その昔、大和の国(現在の奈良)の吉野川上流に「国栖(くず)」という地域がありました。そこは葛粉の産地であったことから、由来するといわれています。

また葛の葉は、表が緑色ですが、葉の裏側は白色をしているのが特徴。風に吹かれると、葉の裏の白さが目立つことから、葛は「裏見草」という別名をもちます。平安時代には、「恨み」と「裏見」をかけて詠まれた和歌が多くあるようです。

「葛」の効能とは?

「葛」はマメ科のつる草。つまり大豆の仲間です。そのため大豆と同じく、イソフラボンが多く含まれています。骨粗しょう症の予防や、コレステロールを抑制したり、更年期障害の軽減も期待できるとされています。

また、葛の根といえば、風邪のひき始めに飲む「葛根湯」を思い浮かべる方も多いでしょう。この葛根湯は、葛の根を含めた7つの生薬が配合されたものです。血行促進作用などの効果があるため、風邪のひき始めだけでなく、肩こりや頭痛など、効果があるとされています。

「吉野葛」と「吉野本葛」の違いは?

「吉野葛」と「吉野本葛」の違いは、原料の分量です。

吉野葛は、葛デンプン50%にサツマイモなどのデンプンを50%混ぜてつくられたもの。一方で吉野本葛とは、葛根からつくれたデンプンを100%使った、混ざりけのない葛粉のこと。添加物や化学薬品などもいっさい使用されていません。

なぜ「吉野本葛」は最高級品なのか?

純度が高い地下水に恵まれ「葛」が自生する吉野地方は、昔から吉野本葛の製造が盛んに行われてきた土地です。

そんな吉野地方には、葛粉を精製する「吉野晒し(よしのざらし)」「寒晒し(かんざらし)」という伝統製法があります。極寒期に、葛根から取り出したデンプンを何回も冷水に晒し、攪拌して不純物を取り除く。この工程を10日ほどかけて繰り返します。

そうしてできた不純物のない純白のデンプンを、さらに2~3か月かけて自然乾燥。じっくり水分を抜いてできあがったものが吉野本葛なんです。

「吉野晒し」「寒晒し」は、冷水に晒して不純物が取り除かれますが、この工程で重要なのが水の温度です。水温が低ければ低いほど、葛が分離しやすいのだそう。また、良質な水を使用することも大切なポイント。寒さが厳しく、良質な地下水が豊富にある吉野地方だからできる製法と言えるでしょう。

いくつもの工程を経て、丁寧につくられた吉野本葛は、透明感に優れ、口当たりや喉越しが良く、最高品質の葛粉になるのです。

「吉野葛」はどんなもの使われる?

お菓子や料理にとろみをつける際に使われる葛粉。葛粉が和菓子や料理に使われるようになったのは、江戸時代中期以降だといわれています。また、奈良の吉野が葛粉の名産地であることから、葛粉を用いてとろみをつけた料理などは、「吉野仕立て」ということがあるようです。

主に葛粉は、どのようなお菓子や料理に使われているのか、チェックしていきましょう。

葛切り

葛切り

葛切りは、葛粉を水で溶いたものを型に入れて加熱。それを冷やし固め、うどんのように細長く切って、黒蜜などと一緒に食べます。また鍋の具材として入れる葛切りは、これを乾燥させたものです。

葛まんじゅう

葛粉に砂糖と水を加え、加熱しながら練ったもので餡を包んだ和菓子。中の餡が透けて見えて涼しげな、夏を代表するお菓子です。

葛まんじゅう

胡麻豆腐

胡麻豆腐は精進料理の1つ。胡麻を豆腐状に固めた食べ物です。ペースト状の胡麻に葛粉と水、だし汁などを入れて加熱し、型に流し込んで冷やし固めたものです。豆腐のように柔らかく、あんかけにしたり、しょうがや、ワサビなどと一緒に食べられます。

胡麻豆腐

葛湯

葛粉と水、砂糖を加え、加熱してつくった、とろみのある飲み物です。とろみがついているため、冷めにくく、体の芯まで温めてくれます。

葛湯

「吉野本葛」で葛もちを作ってみよう!

もちもちとした食感に、ほんのり甘くて美味しい葛餅の作り方の紹介です。今回はリッチに最高品質の吉野本葛を使って、葛もちを作ってみました。和菓子づくり初心者でも、美味しく作ることができたので、初めての和菓子づくりにもおすすめです!

材料

・葛粉(吉野本葛)… 40g
・砂糖… 40g
・水… 160g

作り方

1、ボウルに葛粉、砂糖、水を入れ、溶かします。

2、1をザルや茶こしで濾しながら鍋に入れます。

3、2を中火で加熱。

4、ヘラなどで「の」の字を書くように混ぜます。

5、葛水が透明になるまで混ぜながら煮詰めていきましょう。

6、葛水が透明になったら、水で冷やします。

7、食べやすい大きさに切って、器に盛りつけます。

8、きな粉や黒蜜などお好みでかけて完成です。

今回使用した「吉野本葛」はこちら

伝統的な製法である「寒晒し」でつくられた100%国産の本葛粉です。

葛粉の最高級品、「吉野本葛」

寒さが厳しく豊かな地下水がある奈良吉野は、良質な葛粉の産地です。その奈良吉野が誇る最高級品「吉野本葛」は、「吉野晒し」や「寒晒し」といった伝統的な製法で、手間ひまかけてつくられているのを初めて知ったという方も多いのではないでしょうか? 「吉野本葛」が高価であるのも、うなずけますよね。

アイスクリームやケーキもとても美味しいですが、この夏は日本に古くからある葛粉を使って、葛切りや葛もちなどの、和菓子を作ってみてはいかがでしょうか?

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構成・文・写真(一部を除く)/松田慶子(京都メディアライン)

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