子どもが発する下ネタに「いやらしい」「そんな言葉使わないで!」実はその声かけ、逆性教育になっているかも!

高校や小学校の保健室の先生を経て、現在はフリーランスの性教育講師、思春期保健相談士として各地の学校や講演会で活動しているにじいろさん。小学生ママたちの打ち明けにくい性に関するお悩みや疑問にお答えいただきました。
前回も大反響だった【性の赤裸々相談室】シリーズの続編。今回も親が知っておきたい性教育のたいせつなことをお届けします。

何気ない会話の中で「性」フィルターをかけている

Q. 子どもが言う下ネタに、どうリアクションしていいかわかりません。

にじいろさん(にじいろさん:以下にじいろ) 子ども同士の会話では特に、俗に言う下ネタが出てくることはありますよね。私が学校に性教育に行った時、生徒から聞かれることもありますし、漏れ聞こえてくることもあります。

実際に子ども同士の会話で出てくる“下ネタ”

  • お前、童貞なんだろ?
  • (英語の授業で「SIX」が出てきた時に)エロいこと言うなよ!
  • LINEやメールで「1919(イクイク)」を連打
  • 先生、「潮吹き」ってなんですか?

にじいろ これらの言葉を自分の子どもが使っているのを聞いた時、「そんな言葉使わないの!」「やめて、いやらしいわね」「そんなエッチなこと言わないで」などと、咄嗟に言ってしまうことがありますよね。

―実際にその場面に直面したら、思わずそういう声かけが出てしまいそうです!

にじいろ そうですよね。子どもにとって親が普段から使っている言葉や感覚などは、とても影響力の大きいもの。なので、そのような声かけをすることで、子どもに「性」のフィルターをかけてしまっているかもしれません。フィルターがかかってしまうと、「親の前でこういうことを言っちゃだめなんだ」と思ってしまい、性についての話がしづらい空気になってきます。そして、中高生になった時、「妊娠した(させた)かも」「痴漢にあった」など、重要なことが万が一あった時も、一番話すべき親に話しづらくなる可能性があります。

子どもの下ネタへの対応の仕方

Q.子どもの下ネタ発言にはどのように対応したらいいですか?

にじいろ 例えば、子どもから「童貞ってどういう意味?」と直接聞かれたら、まずは「その言葉はどこから聞いてきたの?」と出来るだけ普通の口調で聞いてみましょう。「友達が言ってた」「YouTubeで見た」「忘れた~」など、その回答によっても返答の仕方が変わるところはありますが、基本的には、体の仕組みとして、淡々とポジティブに答えてあげましょう。

子どもへの具体的な説明の例

  • 友達から「童貞」って言葉を聞いたんだね。「セックス」っていうのは、何をすることかはわかってる? それをまだしたことのない男性のことを言うんだよ
  • 「SIX」で笑っていたけどなんで? 「セックス」はふざけて言うことではなく、赤ちゃんができるかもしれない行為のことなんだよ。本当の意味は知っておいてね。
  • 「19」は「イク」という言葉を数字で表しているものだと思うよ。それは、セックスの時に気持ちが良くなって使うこともある言葉だよ。その意味を知らない人や、聞くのが嫌と感じる人もいるから、人前で言うのはやめたほうがいいね。

にじいろ 中には答えづらい内容もあると思います。そういう時は、「それは性的なことを表している言葉だね。お友達はどんな時に使っていたの?」とシチュエーションなどを聞いてみるのもいいと思います。回答を濁して説明をしないでいると、子どもは気になってネット検索をすることもあります。例えば「童貞」「痴漢」「セックス」などというワードで検索をすると、意味を記すもの以外にも関連性のあるAVのサンプルやアダルトコミック、「童貞でいると死ぬ」という誤情報など、あまり触れてほしくないメディアに触れるきっかけにもなります。

学校も下ネタ対応はしてくれるけど……

「その話はやめましょう」で終わらせる先生が多い?

Q. 下ネタは学校で話すことが多いと思いますが、先生は対応してくれませんか?

にじいろ もちろん、対応してくれる先生も多いです。例えば授業中「SIXってもう一回言えよ~」などと、一部の生徒がふざけ始めたとします。中には一緒になって笑う子、あからさまに嫌そうな顔をしている子、なんとも思っていない子、子どもによってリアクションはさまざまです。
先生によって対応は違うと思いますが、「静かに!」「やめなさい!」などと言って、注意して終わらせることが多いと思います。
私が性教育で学校に行く時も、ちょっとふざけた感じで「童貞ってなんですか?」などと聞かれることがあります。その場合は回答することもありますし、時間がない場合は「休み時間に来てくださいね。説明しますよ~!」などと、なるべくポジティブに声をかけるようにしています。

―学校内でそのような話題が出た時、嫌な気持ちになる子どももいますよね?

にじいろ そうなんです。子どもが「今日、こういう話が出て嫌だった」と言ってくれればいいのですが、言わないこともありますよね。なので、時々、「最近学校で嫌だったこととかない?」などとヒアリングすることも大切です。そして、子どもが嫌だと訴えてきた時は、先生に連絡したり、養護教諭に相談したりするのもおすすめです。

下ネタを苦手としている子どもへのケアも大切

Q. 下ネタは面白がっている子どもがいる反面、嫌悪感を抱いている子も多いのでしょうか?

にじいろ そう思います。例えば「お前、セックスって知ってる?」と聞かれたり、友達とのグループメールなどで下ネタを発信したりすることがあるとします。その時は、笑ってごまかしたとしても、「笑っている=おもしろい」とは限りません。どう反応していいかわからず、笑うというリアクションになった可能性もあります。そのため、子どもと性について話をする時は「言われて嫌だと感じる子もいるから、発言する時は気をつけようね」と話しておくことも大切です。

―自分の子どもは被害者にも加害者にもなり得るということですね。

にじいろ はい。でも、これは下ネタに関してだけのことではありません。性やジェンダーについての発言は、自分はなんとも思わなくても、不快に思う子もいるということを親子で認識して、気をつけていく必要があります。

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記事監修

にじいろ|性教育講師・思春期保健相談士
元保健室の先生であるにじいろさんが性教育を行う対象は子どもだけではなく、保護者や教員など様々。現場の声と知識を活かして、多岐にわたる活動をしている。昨年出版した著書「10代の妊娠」(合同出版)では、10代の子どもの妊娠や出産、中絶など、リアルな性の悩みを紹介し話題となっている。

 取材/本間綾

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