子どもの英語、2歳頃から始めるのがおすすめな理由は?パパママの英語力は関係ないってホント?

生後23日の赤ちゃんでも日本語と英語の区別はできる!

――小さい子ども向けの英語教育が盛んですが、赤ちゃんにも英語教育ってできるものですか?

はい、0歳でもできますよ。生後23日の赤ちゃんでも、お母さんの声とそれ以外の人の声、日本語と英語などの区別はできると言われています。赤ちゃんはその後、身近な人にかけてもらう声を聞きながら、母語の意味の区別に必要な音を理解していきます。母語とは、周囲の人たちが話すのを聴いて、最初に覚える言語です。日本で生まれパパママが日本語で話す赤ちゃんの場合、母語は日本語であることが多いですね。つまり、小さな赤ちゃんでも、日本語と英語の区別をつけながら学んでいくことはできます。

ただ、生まれたての赤ちゃんのときは英語、日本語と分けて考えず、とにかくママやパパが話しかけることが大事。乳児はまず、『ハトのクークー鳴く声(coo)という意味を表すクーイングと呼ばれる声を出します。クーイングとは、生後13カ月頃にはじまる赤ちゃん特有の発声で、「アー」「ウー」などといった、唇や舌を使わない母音からなる単音の発声のこと。こんな早期でも「アー」と言ったら「アー」と同じ音を返してあげると赤ちゃんはパパやママに分かってもらえたと安心し、うれしいのです。

また、言葉の意味がわかる、わからないに関わらず、大人は楽しく赤ちゃんに語りかけることを習慣づけましょう。「会話をするのが楽しい」と親子で思うことが、英語を楽しむ土台、将来の英語好きにもつながります。

 

子守歌がわりに英語の歌をゆっくり歌ってあげる

――では、そうやって話しかける土台があった上で、英語をどのように生活の中に取り入れればいいですか?

取り組みやすいのは、歌ですね。子守歌を歌うように英語の歌を歌うことをおすすめします。生活の中で歌を歌いやすいのが子守歌だ、ということでもありますよね。たとえば「ABCDEFG~」でも、ゆっくり歌えば子守歌になります。好きな歌手の英語の歌、たとえばBTSでも(笑)、英語の曲をゆっくり歌ってあげましょう。

1歳半くらいになったらフレーズや短い文の英語で話そう

そうこうしているうちに、1歳半くらいから爆発的に語彙力が増えていきます。子どもからも少しずつ単語が出てくるようになるでしょう。そういうときには、日常会話の中に英語をはさんでいくといいんですよ。

たとえば、散歩のときに鳥をみつけたら、ただ「鳥」と言うだけでなく、「鳥が飛んでいるね」と言いますよね? 英語でも同じで、フレーズや短い文で話しかけるといいです。難しく考えなくていいんですよ。

“Good morning!”

“LookA beautiful flower!”

とかね。

LookA beautiful flower!”と言うときには、花を指さしたり、茎を持ったりして子どもの目の前に見せてあげましょう。そして“flower”ともう一回言ってあげると、花というものが英語でそう言うのだな、というのがわかります。そして、子どものほうも親を真似て“flower”と言うようになります。

絵本を読むときも、猫がミルクを飲んでいるイラストがあれば、

LookThe cat is drinking milk!

と言ってミルクをゴクゴク飲む動作をしたり、赤ちゃんの手が描かれていたら、

LookA babys little hand!”

と言って、絵を指したり、お子さまの手を取ったりすると、その言葉と動作、ものが一致して、わかるようになります。

やさしい英語を日常化しましょう。肩肘張らずに日本語で話しかけたり英語で話しかけたりすればいいです。とにかく、英語で話しかける生活がごく自然で楽しいものになっていることが大事ですね。遊んでいる中で英語に触れる、というのがいちばん効果的と言われます。

パパママは発音を気にしなくていい!楽しそうに英語で話して

――でも、英語の発音に自信がありません。子どもも、パパママのあまりよくない発音で英語を覚えるのはよくないのでは?

英語の教材の映像や音声を上手に利用しながら、話しかけることも継続してください。赤ちゃんは教材の音と保護者の音、両方聴いていると、必ず教材の音を真似するという傾向があります。そこで、発音は気にせず、簡単な英語で良いので、楽しみながら英語で話しかけてください。子どもは、パパママとお話することが楽しいので、英語で話しかけられれば、段々英語で答えるようになりますよ。

例えば、パパママが良い発音でも、話しかけたり遊んだりせずに、映像や音声のかけっぱなしで他のことをしていれば、英語の定着効果は期待できません。教材を使うならパパママも一緒に発音したり歌ったりしながら、楽しそうに英語を口に出すといいんですよ。音声ペンつき絵本(イラストをペンでさすと正しい発音の音声が出る)でお子さんと遊びながら発音してもいいでしょう。この際、お子さんの教材で大人も発音を学んでもいいんじゃないですか? ぜひ楽しんでください。

 

4,5歳までは日常生活や遊びの中で大人と英語を使って楽しむ体験を

子どもは親子で遊ぶことがとても好きです。調査では、4歳くらいまでは大人の英語の語彙力とか発音は、お子さんのそれとは相関がないという結果が出ています。むしろ、大人のロールプレイ力が大事だと。遊びが上手だとお子さんの英語力が伸びるようです。ままごと遊びをしているときや、お昼ご飯を食べるときに、

A sandwich, please.

と言って食べるふりをしたり、美味しそうに食べます。

Yummy, yummy.

と言ってみる。そんなことが楽しいし、楽しいから真似するようになります。

5歳以降になると、パパママの英語もちょっと上手な方が、子どもに話しかける機会が多くなるのでいいかもしれませんが、お子さまと一緒に英語を学んでいると間違いなくお上手になりますよ!

 

日本語と英語をミックスしても大丈夫。むしろ日本語にもいい影響

 

――英語と日本語を日々の生活の中でミックスさせていると、母語である日本語の習得に問題が生じる、という話を聞いたことがあります。その点ではどうでしょうか。

パパがイギリス人、ママが中国人、住んでいるところがフランス、となればちょっと違うかもしれませんが、ご両親が日本人で家族で日本に住んでいれば、圧倒的に日本語に触れる方が多い環境ですから、日本語に支障をきたすことはありません。私は研究者としてもたくさんのデータをとっていますが、4歳の子でデータをとってみると、英語を学んだ子は日本語の反復力も高いんです。反復力が高いと、語彙力も高い傾向があります。悪い影響どころか、いい影響の可能性は高いです。

 

親子で一緒に英語の動画を見たり音を聞いたりして集中して取り組むことで、日本語についても、聞く力において集中力が増すと考えられます。文法の面でも4歳児で同様の実験をしましたが、英語学習を0歳児から始めたお子さまでも、日本語の助詞の欠落や、二語文や三語文の間違いを起こす率が英語を学習したことがないお子様と比較して多い、ということはありませんでした。

むしろ、語の学習をすることで、2歳児くらいから発達すると言われる短期記憶の一種であるワーキングメモリー(作業記憶)の力が発達します。聞いた英単語などの音を一時的に記憶してそれを反復する力がアップしたり、今聞いた音を長期的に記憶している音と照らし合わせる情報検索の力が速くなるなどの可能性があり、英語のみならず、日本語力のアップにも良い影響があると考えられます。

できれば2歳ごろから英語の習い事をはじめた方がいい理由

――発音についてはどうでしょうか。なんとなく早く始めたほうが、発音がよくなる気がします。

そのとおりです。まずは、5歳くらまでが音の聞き取りが上手です。日本語を参考にすることなく、英語をそのまま聞き取ることができます。言葉の意味を日本語で考えたり、カタカナで置き換えたりする前に発音したほうが発音も良いのです

また、日本人は「LRの発音の違いが難しい」と言われています。それは、日本語の中に、LRを区別する要のある語がないからです。例えば、「リンゴ」の「り」の音は、英語の「l」とも「r」とも異なる音です。

そもそも、英語の「l」と「r」の音は発音が難しく、ネイティブのお子さんでも5,6カ月頃まではLR聞き取り区別がうまくできません。発音もうまくできません。も、日常の中で、例えばlrの発音が異なると、play遊ぶ)とpray(祈る)の意味は異なることに気づき、10カ月以降くらいからLR発音を聞き取りもできるようになり、区別して発音できるようになるのです。

特にカタカナ語にもなっているbaby(赤ちゃん)など、日本語への置き換えなどを考えないうちに、たくさん英語を浴びて音を真似すると、発音がよくなるのですね

ですから、いろいろとご家庭によって事情はあると思いますが、英語の習い事をするなら、できれば2歳くらいのときがいいんじゃないかなと思います。2歳なら英語にも抵抗がなく、音声で出されるままに英語の音を覚えていきますからね。とはいえ、「英語を楽しむ」ことに年齢制限はありません。お子さんもパパママも、できるだけ楽しく、ご一緒に英語に触れてほしいですね。

 

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記事監修

佐藤久美子|玉川大学大学院名誉教授

玉川大学大学院教育学研究科(教職専攻)名誉教授。(株)Study-plus代表取締役。津田塾大学学芸学部卒、同大学院文学研究科博士課程修了。ロンドン大学大学院博士課程留学。
NHKラジオ「基礎英語」講師。専門は英語教育、言語学。2012年度よりNHK Eテレ「えいごであそぼ」「えいごであそぼwith Orton」「えいごであそぼMeets the World」の総合指導、2017年度よりNHK Eテレ「エイゴビート」、2020年度より「エイゴビート2」の番組委員もつとめる。

取材・文/三輪 泉

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