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読書迷子の親子に朗報
ちょうど私の娘も小学一年生になり、絵本から卒業し、何を読んでいいか分からなくなる時期に入りつつあります。
そんな時に「READ FOR LIFE」という、子どもに読んでもらいたい本を選んでくれるというサービスの実証実験が地元渋谷区であることを知り、参加してみました! 共同代表の山本裕介さんと清水一浩さんにお話を聞くことができました。
プロフェッショナルな大人が珠玉の本を選んでくれる
選書プロジェクトを立ち上げたわけは
本が届いたら気にいった1冊を選ぶ
子どもの学年、好きな本三冊、興味・関心のある生き方・働き方をフォームに入力します。それらのデータに基づき、キュレーターの選んだ本が届きます。本が届いたら試し読みをして気に入った1冊を選びます。「READ FOR LIFE 」の月額料金(未定)には1冊分の購入代金が含まれているので、気に入った本はそのままキープ。他2冊に関しては、到着後5日以内であれば無料で返送可能です。
他のサービスとの違いは?
- 1) キュレーターが子どもの頃に読んだ本や職業選択の参考になった本が選書されていること
- 2) 子どもが読むことを念頭においている選書だが、必ずしも一般的な絵本や児童書ばかりではないこと
- 3) 子どもとキュレーターの価値観をマッチングでつないでいること
本が届いた!その中身は?
さっそく我が家にも本が届きました! どんな本が届くかワクワクします。
出てきた本は、
・岡本太郎の「自分の中に毒を持て」
・マルジャン・サロラピの「ペルセポリス」
・水野敬也の 「最近、地球が暑くてクマってます。 シロクマが教えてくれた温暖化時代を幸せに生き抜く方法」。
それぞれ、全くジャンルの違う、芸術、宗教、環境などの本で、絶対に自分では選ばない本なので、とても興味深い選書でした。
素晴らしい選書!でも…
全て、知的好奇心をくすぐる本で、私は全部その日に読破してしまいました。ただ、小学一年生の娘には三冊ともまだ難しすぎて、今回の選書の対象年齢は、高学年から中学生くらいがちょうどいいのかなと思いました。もし、娘が中学生くらいでしたら、どれも、ぜひ読ませたい本です。もう少し経ったら、親子で一緒に読んで、芸術、宗教、環境について、ガンガン討論したいと思いました。ちなみに、同じ実証実験に参加していた友人は「チョコレート戦争」や「みどりのゆび」など年齢にあった子ども向けの本が届いていたので、いろんなケースがあると思います。
より細かいフィルターがあれば
小学生一年生にはまだ早いと言う理由には、難易度だけではなく、恋愛や性に関しての内容や拷問や殺人など残酷な描写もあったことにあります。この点は、開ける前に親御さんに確認してもらうなどのアドバイスなどがあってもよいかなと感じました。
ただ、難易度に関しては山本さんも読解力のレベルは個人で全く違うので、線引きは難しいと話していました。親だとどうしても難しい本だからと避けてしまいがち。試し読みができるサービスであるからこそ、多少難しい本に出会うのも選書サービスならではの良さかなとも思います。
キープした本は「環境問題」の本
子どものためであれば、一番読みやすかった「最近、地球が暑くてクマってます。」を選びます。ルビがないのでまだ一人では読めませんが、内容は子ども向けで大変読みやすいので、読み聞かせであればOK。
環境問題系の本はどちらかというと苦手な本なのですが、予想外にこれがおもしろかったのです。「レジ袋が有料化なんて地球温暖化が一ミリも止まらない」というくだりから、もう読むのが止まりませんでした。
その他の本は、どう感じた?
残りの二冊はタイミングが来たら、読ませたいと思いました。特に「ペルセポリス」は女性の権利や宗教に関してなので、ぜひ娘には知ってもらいたい内容です。残酷な描写があるもののイラスト調でグロテスクではないので(その淡々さがより非情な現実を際立てているのですが)、高学年になったら渡したいと思います。5日以内であれば、無料で返却できるので、今現在、無理にキープする必要がないのも気が楽ですね。
本を選んでくれるのはどんな人?
今回の実証実験では、「選書する大人」(キュレーター)は渋谷エリアに縁がある方で社会起業家・パティシエ・デザイナー・企業経営者・テレビプロデューサー・公務員・ジャーナリスト・公認会計士・エンジニア・大学教授などさまざまな職業の方、約50人が参加しています。一人平均三冊、もしくはたくさん選んでいる方もいるそうです。
将来の職業につながる読書
渋谷の地元のキュレーターさんも多いということで、知り合いの方の選書もあり嬉しくなりました。岡本太郎の本は、なんと、以前に取材した壁画アートの「一般社団法人 CLEAN & ART」の理事の傍嶋賢さんのチョイスでした。この人の本だったら間違いないし、読んでみたいという興味を引くきっかけにもなります。
他のキュレーターさんの経歴も面白く、この職業についている人はこんな本を読んでいたのだと、将来の参考にもなります。知識や知性を共有する素晴らしさを感じました。山本さんも「子どもたちが新しい世界に触れ、将来の職業選択やイメージを膨らませるサポートがしたい」と話してくれました。
子どもに合う本を選ぶ基準とは、何?
「その子に合う本とはどんな本なのでしょう?」という率直な疑問を山本さんにぶつけてみました。山本さんによると、大きく分けて、二つあるそうです。
今の本と未来につながる本。視野を広げる本選び
まず一つは「その子の読書レベルも近しいもの。つまり、現時点で興味関心があったり、読みやすい本」だそうです。
もう一つは「その子が将来興味関心を持ちそうなもの。現在はそこまで興味関心がなくても視野を広げるという意味で機能する本」とのことです。一つ目であれば、なんとか親でも探せそうですよね。が、山本さんいわく「今読みやすい本」だけだと子どもの世界を広げるのが難しいとのこと。「色々な職業の大人の方が選書した幅広い本に触れる2つめの部分も大事だと考えています」と話してくれました。
満足度は7割
また、実証実験に参加した7割以上の方にサービス内容に対して満足したと回答があったそうです。これから、本の精度と幅を大きく広げていくために、キュレーターの方々の獲得にも力を入れていきたいとのことです。
ヒカリエ「渋谷○○書店」に選書を展示中
キュレーターの方の「珠玉の一冊」が、どんな本があるのか気になりますよね? 渋谷ヒカリエ8階にあるシェア型書店「渋谷◯◯書店」とのコラボレーションで、店内の棚で「READ FOR LIFE」の選書を展示中。子ども向けの本、という言葉の一般的なイメージからはかなり違った、大人も子どもも楽しめる本が展示されています。「どんな本がおすすめされているのか」ということを体験できるのでぜひ、親子で足を運んでみてくださいね。
子どもと一緒に楽しむ読書
本以外にもたくさんの情報源がある今、子どもたちは本を読まないという選択をすることが多くなっているでしょう。だからこそ、大人が子どもに本を読む手助けをする必要があると思います。そのきっかけの一つに「READ FOR LIFE」のようなサービスを利用するのも一つの方法だと思いました。
清水さんも「絵本だけではないので、大人も楽しめます。読書を通して、親子で一緒に楽しんで欲しい。読書の教育的で堅苦しい面だけではなく、楽しむということを大事にして欲しい」と話してくれました。
現在、実証実験は終了しており、8月以降に正式ローンチを予定。ご興味のある方は、現在フォームより事前登録を受け付けていますので、ウエブサイトをチェックしてみてくださいね。
※1 渋谷区の官民連携オープンイノベーションについて詳しくはこちら>>
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文・写真 Rina Ota