滋賀県長浜の郷土料理「焼鯖そうめん」にハマる。サバ缶でも作れる! 海のない県でなぜサバ?の疑問も解消

滋賀県長浜を代表とする郷土料理「焼鯖そうめん」。実は、この「焼鯖そうめん」には母が娘を思う気持ちが込められているそうです。本記事では、「焼鯖そうめん」とはどんなものか、親が娘を思う気持ちとは? なぜ鯖を使うか、またレシピなどを紹介していきます。

「焼鯖そうめん」という料理を知っていますか? 聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。

「焼いた鯖にそうめん?」と、味が想像しにくいかもしれませんが、甘辛く煮た鯖の煮汁とそうめんがマッチしてとても美味しいのです。そんな滋賀県長浜の郷土料理、「焼鯖そうめん」について一緒に見ていきたいと思います。

「焼鯖そうめん」とは?

「焼鯖そうめん」は、「鯖そうめん」とも呼ばれ、鯖を甘辛く煮て、その煮汁に茹でたそうめんを絡めたもの。滋賀県の東北部に位置する長浜などの湖北地方で古くから、食べられている郷土料理です。

長浜の町中では、毎年4月9日から17日間、長浜八幡宮の祭礼として、「曳山(ひきやま)まつり」が行われます。この祭りの時期に、ご馳走として家庭で食べられるのが、「焼鯖そうめん」です。主に家庭料理として親しまれていた「焼鯖そうめん」ですが、最近では多くの料理店でも提供されていて、長浜を代表するご当地グルメになりました。

またメイン料理としても十分ボリュームがある焼鯖そうめんですが、長浜では一般的におかずとして、ご飯と一緒に食べられているそうです。

なぜ海がない滋賀県で鯖が郷土料理に?

滋賀県の湖北に位置し、琵琶湖に面している長浜ですが、海には面していません。では、なぜ海で漁れる鯖が郷土料理に使われているのでしょうか? それは福井と京都に隣接する滋賀ならではの立地に関係しています。

「鯖街道」によって古くから長浜にも鯖が出回っていた
「鯖街道」によって古くから長浜にも鯖が出回っていた

鯖街道によって運ばれた鯖

その昔、福井県若狭から都のあった京都へ、海産物を運ぶ道がありました。その道が「鯖街道」といわれる道です。鯖街道は1つだけでなく何ルートもあります。その1つが、長浜がある湖北地方へも伸びたため、長浜へも鯖が持ち込まれるようになったそうです。そのため、長浜をはじめとする滋賀県内には、鯖を使った郷土料理が多くあります。

また、鯖は鮮度が落ちるのが早く、若狭湾で漁れた鯖はすぐに濃い塩でシメられたそう。長浜に着く頃に鯖は、程よい塩加減になっていたといわれています。

焼鯖に込められた親の愛

「焼鯖そうめん」は、「曳山まつり」の時期に食べる家庭料理である他、春の農繁期に農家などで「五月見舞い」としても食べられている料理です。

滋賀県湖北地方では田植えなどで忙しくなる5月、農家へ嫁いだ娘を案じて、親が嫁ぎ先に焼鯖を届けるという風習がありました。その焼鯖を使って作られたのが「焼鯖そうめん」です。繁忙期で忙しくしているであろう娘に、「栄養があって日持ちする焼鯖を」という親の愛が込められていました。

鯖は栄養豊富な魚!

鯖は豊富な栄養を含んだ食材です。中性脂肪を減らしたり、アンチエイジングにも効果があるとされている、「DHA」や「EPA」を多く含んでいます。また、疲労回復を助ける成分として注目されている「イミダゾールペプチド」や、カルシウムの吸収を助ける「ビタミンD」も豊富。

さらに、動脈硬化や血栓の予防、血圧を下げる効果があるとされている「オメガ3脂肪酸」は、肉よりも多く含まれています。

実は栄養たっぷりの鯖
実は栄養たっぷりの鯖

長浜名物、焼鯖そうめんを作ってみよう!

「鯖とそうめんで、なぜこんなに美味しいの?」と食べた人は「焼鯖そうめん」の虜になるそうです。夏はそうめんを食べる機会が多くなりますよね。「いつものそうめんに飽きた」というときにもおすすめです。

自宅でも鯖をそうめんがあればすぐに作れるので、長浜名物「焼鯖そうめん」を作ってみてはいかがでしょう?  では材料や作り方を紹介していきます。

材料(2人分)

・鯖の切り身… 2切れ
・そうめん… 2束
・水… 200ml
・醤油… 100cc
・酒… 100cc
・みりん… 100cc
・砂糖… 大さじ1
・生姜… 1片
・ネギ… 適量

下ごしらえ

鯖の表面に切れ目を入れ、塩をふって10~15分おいて、出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取りましょう。生姜は千切り、もしくは薄くスライス、ネギは小口切りにしておきます。

塩鯖は塩抜きをする

・塩水で塩を抜く

塩鯖を使う場合、塩抜きをするほうが良いでしょう。塩鯖は塩味がついているため、しょっぱすぎると感じることも。その際は、塩鯖を塩水に浸けて塩抜きする方法があります。鯖がつかるサイズの容器に200mlの水に対して、小さじ半分の塩を入れます。そこに塩鯖を2~3時間浸けておけば塩抜き完了。

キッチンペーパーで水分を拭きとってから焼きましょう。

・時間がないときは焼いてからでも塩抜き可能

塩鯖を焼いたら、容器に移し、そこへお湯をかけます。そのまま5分おいて完了。水気をとってから煮ましょう。時間がないときにおすすめの方法です。

作り方

1、下ごしらえした鯖は、グリルもしくはフライパンで焼き目がつくまで焼きます。

2、鍋に水、醤油、砂糖、酒、みりん、砂糖を入れて一煮立ちさせます。

3、2に焼いた鯖を入れ、煮ていきます。

4、沸騰してきたら、火を弱めて、さらに5分ほど、煮汁を鯖に回しかけながら煮ていきましょう。

5、4は火からおろして冷ましておきます。

6、その間に、鍋にたっぷりの湯を沸かし、そうめんを固めに茹でます。

7、茹でたそうめんは、流水で洗い、水気をきっておきます。

8、別の鍋に鯖の煮汁だけを入れ、その中にそうめんを入れ、煮ていきます。

9、そうめんに煮汁が絡んで、色が付いたらOK。

10、器にそうめんを盛り付け、その上に煮た鯖をのせ、生姜とネギを散らして完成です。

サバ缶でも焼鯖そうめんを作れる

サバ缶があれば、焼鯖そうめんは作れちゃいます。サバ缶を使ったレシピの紹介です。

材料(2人分)

・鯖缶… 2缶
・サラダ油… 適量
・水… 100cc
・醤油… 100cc
・酒… 100cc
・みりん… 100cc
・生姜… 1片
・ネギ… 適量

作り方

1、ネギは小口切り、生姜は千切りか薄くスライス。そうめんは固めに茹でて水で洗っておきましょう。

2、鯖缶の身だけを取り出します。あとで汁も使うので残しておいてください。

3、フライパンに油をひき、鯖の身を炒めます。

4、鯖に少し焦げ目がついたら、3に鯖缶の汁、水、醤油、酒、みりんを入れて5分ほど煮ていきます。

5、煮た鯖は、取り出し、4に茹でたそうめんを入れ、1~2分煮ます。

6、味が馴染んだら、そうめんを皿に盛り付け、取っておいた鯖をトッピング。

7、ネギと生姜を散らして、できあがりです。

長浜名物、焼鯖そうめんを自宅でも

焼いた鯖の栄養や旨味をそのまま煮込んだ「焼鯖そうめん」。いつものそうめんを豪華にアップデートしたいときにもおすすめです。また、「焼鯖そうめん」は、忙しい娘を想って作られた焼鯖が元になった料理です。お子さんの健康を願って作ってみてはいかがでしょうか?

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構成・文・写真(一部を除く)/松田慶子(京都メディアライン)

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