「くるみ割り人形」はどんなお話? チャイコフスキーのバレエで知られる作品の、原作あらすじをあらためて知る!

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チャイコフスキーによる音楽を用いたバレエ作品として知られる『くるみ割り人形』。タイトルや音楽は知っていても、「ストーリー自体はよく知らない」という方はきっと多いのではないでしょうか。
本記事では、そんな『くるみ割り人形』の原作となった『くるみ割り人形とねずみの王様』が描かれた背景やあらすじ、おすすめの書籍をご紹介します。

「くるみ割り人形(くるみ割り人形とねずみの王様)」とは

まずは、本作が描かれた背景や作者についてを押さえておきましょう。

基本情報|ドイツで生まれたメルヘン小説

本作は、1816年にドイツでE.T.A.ホフマン(Ernst Theodor Amadeus Hoffmann)によって発表された幻想的なおとぎ話です。発表当初は、フリードリヒ・フーケという別の作家の作品とともに『少年童話集』という作品集に収録されました。

その後、1892年にはロシアにて、オペラ『イオランタ』と共に、本作を原作としたチャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』が初演されます。バレエ作品としての『くるみ割り人形』は、その後、同じくチャイコフスキーが作曲した『白鳥の湖』『眠れる森の美女』と共に「3大バレエ」と呼ばれるようになり、現代でもクラシック・バレエを代表する名作のひとつとされ、世界中で広く公演されています。

作者のE.T.A.ホフマンは多才すぎた人物

E.T.A.ホフマン の肖像 wikimedia commons(PD)

E.T.A.ホフマン(Ernst Theodor Amadeus Hoffmann、1776年1月24日 - 1822年6月25日)は、ドイツの作家でありながら、作曲家、音楽評論家、画家、法律家としても活躍した人物です。

才能豊かでありさまざまな方面で精力的に活動した一方で、その無理がたたって46歳という若さで逝去。しかしながら、その長くない人生の中で多くの作品を遺し、『くるみ割り人形とねずみの王様』のほかにも、オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』や、シューマンのピアノ曲『クライスレリアーナ』など演劇や音楽作品の原作・モチーフとなった作品が存在します。

あらすじ・ストーリー紹介

では、『くるみ割り人形』の原作となった『くるみ割り人形とねずみの王様』はどのようなお話なのでしょうか。ここでは、本作のあらすじを詳しいバージョンと短いバージョンの2種類にまとめてお伝えします。

詳しいあらすじ

あるクリスマス・イブの夜、7歳の少女マリーはクリスマスプレゼントに伯父のドロッセルマイヤーさんからくるみ割り人形をもらいました。

とても気に入ったマリーはそのくるみ割り人形を心から可愛がりましたが、兄のフリッツによって顎を壊されてしまいます。そんなくるみ割り人形をマリーが看病していた夜、マリーの部屋にたくさんのネズミが侵入。くるみ割り人形や、マリーの部屋に飾られていた人形たちと大変な戦争を始めてしまいます。

くるみ割り人形の正体

気がつくとベッドで目覚めたマリーは、自分がその戦いの中で怪我をして気を失っていたことを知ります。ネズミたちと人形たちの争いのことを家族に話しても信じてもらえないマリーに、伯父のドロッセルマイヤーさんは、ある物語を聞かせました。

それは、「むかし、美しいピルリパータ姫という王女様が、ネズミの呪いで醜い姿に変えられてしまった。その呪いを解くための魔法のくるみを割るように命じられたのが、自分の甥のドロッセルマイヤー少年だった。ドロッセルマイヤー少年は魔法のくるみを見事に割って王女に食べさせ、その呪いを解いたにもかかわらず、代わりに醜い姿に変えられてしまった。ドロッセルマイヤー少年の呪いが解けるのは、ネズミの王様を倒し、ひとりの女性から愛されたときだけである」というものです。

この話を聞いたマリーは、自分が大切にしているくるみ割り人形が、そのドロッセルマイヤー少年なのだと気が付きます。

ネズミの王様との決着と人形の国

その後、マリーの部屋に再び現れたネズミの王様は、今度は大切なお菓子や絵本、服を渡すようにとマリーを脅します。怒ったくるみ割り人形は、マリーの兄フリッツからもらった剣で、ネズミの王様を倒しました。

ネズミの脅威を消し去ったくるみ割り人形は、自分が住んでいた人形の国へとマリーを招待し、ふたりはクリスマスの森や、オレンジ川、ハチミツクッキーの村、ケーキの城などを見てまわります。

マリーとドロッセルマイヤー少年の結婚

気がつくと、再びベッドで目覚めたマリー。家族にそのことを話しますが、誰からも信じてもらえません。

すると、ドロッセルマイヤーさんがある少年を連れてマリーのもとへと現れます。それは、甥っ子のドロッセルマイヤー少年であり、その正体は、マリーが救い、呪いが解けた、あのくるみ割り人形でした。

ドロッセルマイヤー少年は、今や人形の国の王様になっていて、マリーといっしょに王国を治めたいと言います。マリーはその申し出を受け、すぐに許嫁となり、ふたりは次の年には結婚しました。

あらすじを簡単にまとめると…

マリーという女の子は、クリスマスプレゼントとして贈られたくるみ割り人形を心から大切にしていました。しかし、そのくるみ割り人形の実の正体は、呪いをかけられたひとりの少年。呪いを解くにはネズミの王様を倒し、ある女の人から愛される必要があります。くるみ割り人形は苦戦ののち、ネズミの王様を退治。マリーの愛情によって呪いも解け、ふたりはめでたく結婚をしました。

「くるみ割り人形(くるみ割り人形とねずみの王様)」を読むなら

最後に、『くるみ割り人形とねずみの王様』や『くるみ割り人形』を読む際におすすめの書籍をご紹介。小さいお子さんでも楽しめる絵本から、小学校高学年向けの完訳版まで3つの本を集めてみました。

チャイコフスキーのくるみわりにんぎょう (おとがなるしかけえほん)

チャイコフスキーの楽曲が流れる『くるみ割り人形』の絵本。ストーリーとともに音楽を知ることもできる、一石二鳥な一冊です。ひらがな(一部カタカナ&ふりがな)で書かれているので、読み聞かせにはもちろん、小さいお子さんがひとりで読むのにもおすすめです。

くるみわり人形 (ポプラ世界名作童話 27)

児童用に読みやすい文章・ふりがな・注釈付きで書かれた『くるみ割り人形』。かわいらしい挿絵も豊富なので、読書に不慣れなお子さんでも比較的取っ付きやすいと好評です。お子さんへのクリスマスプレゼントにもぴったり。

クルミわりとネズミの王さま (岩波少年文庫 75)

岩波少年文庫の『クルミわりとネズミの王さま』は、ほぼ原作の完訳版。難しい漢字にはもちろんふりがなが付いており、小学5・6年生以上のお子さんなら問題なく読むことができます。バレエ『くるみ割り人形』を観賞した方たちも、元の物語を確認するために本書を手に取ることがあるようです。

不思議な物語を支える、細部の幻想的な描写も見どころ

今回は、バレエ『くるみ割り人形』の原作となった『クルミわりとネズミの王さま』が書かれた背景やあらすじについてをご紹介してきました。

タイトルや音楽は誰もが一度は聞いたことがあるほど有名な一方で、内容自体は意外と知られていない作品です。不思議で幻想的な大筋も魅力的ですが、人形の国やマリーの部屋に飾られた人形たちの、きらきらとした細部の描写も素敵な作品です。ぜひ、原作も手に取ってみてくださいね。

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文・構成/羽吹理美

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