訂正されたり、わからなかったりすると怒りでパニックに。発達遅滞の娘の学習サポートはどうすればいい?【専門医と現役教諭が回答】

月刊誌『小学一年生』(小学館発行)が、日常の子育てや発達・健康上の心配など、読者のママ・パパのお悩みを大募集。今回は、学習時に不安定になる特性があるお子さんのサポートについて、相談が寄せられました。子どもの心の発達に詳しい小児科医と、現役の小学校の先生にアドバイスをいただきました。

Q:訂正されたりわからなかったりすると怒ります。どうすればいい?

娘は軽度の発達遅滞があり、小学校の支援学級に通っています。勉強をがんばると張り切っていましたが、学習面で理解できないところが出てきています。そこで家庭学習や宿題は、私がそばにつき教えています。

けれども、私に訂正されたり、わからなかったりすると、消しゴムや鉛筆を投げたり、ぐちゃぐちゃに書きなぐったり、大声で叫んだりするので、学習どころではなくなります。

このままでは学習内容の遅れを取り戻すどころか、勉強自体嫌いになりそうで心配です。学習面のサポートをどのようにしたらいいのでしょうか。(しろっぷさん)

A:勉強は学校に任せ、家庭では生活の中でできる学習を探しましょう。

初めて耳にする方もいると思いますが、発達遅滞とは、正式には精神運動発達遅滞といい、知的に遅れていることを指します。ご相談のお子さんの場合、詳細がわからないので一般論としてお話ししますね。

結論から言うと、子どもの発達に遅れがあってもなくても、お母さんは「先生」にならなくて大丈夫です。それより子どもの最大の理解者であり、応援団であってほしいのです。

しろっぷさんは、娘さんの「勉強をがんばる」気持ちを応援したくて、一生懸命勉強を教えていらっしゃるのでしょう。ただ、娘さんからすると、学校で授業を受け、家ではお母さんから教えてもらう。これでは息が詰まってしまうのではないでしょうか。

1年生の学習は、日常生活の中でできることがほとんどです。教科書やドリルの勉強は学校の先生にお任せして、ご家庭では生活の中でできることを探してみてはどうでしょう。例えば、娘さんと一緒に買い物に出かけ、数を数えてもらったり、商品の名前を読んでもらったりしてもいいですね。

娘さんが自ら宿題に取りかかるようなら「えらいね!」とほめましょう。今できることをほめる。その姿を見守る心づもりでいてくださいね。

A:訂正や×はNG。今できることから「花マル100点」を増やしましょう。

発達に遅れがあろうとなかろうと、まちがえると嫌がる子は、1年生ではとても多いです。漢字や計算問題で「×」したり、赤字で答えを書いたりすると、「バツをつけないで!」とものすごく怒るんですよ。泣いてしまう子もいるほどです。それだけまちがえたり、指摘されたりするのが嫌なのでしょう。

ですから、1年生の担任は「花マル100点」をつけています。全部正解なら大きい花マルと100点を大きく書くのです。すると、子どもたちは「やった!」と大喜び。このように、子どもの学習意欲をいかに高めるか、先生はとくに気をつかっています。1年生でやる気をなくしてしまうと、この先が大変ですからね。

ご家庭でも同じようになさってみてはいかがでしょう。宿題で丸つけをするのであれば、間違えたところは空欄にしておきます。「ここがあっていたら100点だね」と言って、娘さんにもう一度考えてもらいます。悩んでいたら、お母さんがヒントを出してもいいですね。ただ、絶対に答えは言わないのがポイントです。それで正解すれば「やった、100点だね」というと喜びますよ。

しろっぷさんは、とても親身になってお子さんの勉強を見ているのだと思います。すごくいいお母さんだと思います。ただ、学習の遅れを取り戻すつもりの勉強ならば、娘さんはプレッシャーに感じていたかもしれませんね。

まだ1年生ですから、学ぶ楽しさを伝えていきましょう。そのためには、今できていることから「花マル100点」を増やしていくのです。ぜひ実践してみてくださいね。

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私たちがお答えしました

川上一恵先生 | かずえキッズクリニック院長・医学博士
診療の傍ら、地域の小学校、幼稚園、保育園の校医、園医も務める。日本小児科学会認定専門医。日本小児科医会「子どもの心相談医」。

佐々木陽子先生 | 公立小学校教諭
低学年の担任経験が豊富で、現在は主幹教諭として教鞭をとる傍ら、先生が読む教育情報サイト『みんなの教育技術』に執筆も行う。
『小学一年生』2023年9月号別冊『HugKum』
イラスト/かまたいくよ
構成/天辰陽子

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

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