これなら書ける! 元小学校国語教師が教える「遠足・学習発表会の作文」の書き方。基本は「材料集め」→「構成」→「書く」の3ステップ。

小学校で「遠足」の作文を書きなさいと言うと「えー!」と声を出す子は少なくありません。「作文」を書くことを苦手とする小学生は多くいます。今回は、塾で国語を教えている筆者が「作文」を書くポインを小学校で行われる「行事」別にして、お伝え致します。

国語教師が「作文」の書き方をレクチャー

という私も、小学生のときは「作文」が嫌いでした。

「そして遊びました」「それから寝ました」と、ほんとにこんな文ばかり書いていました。

高校時代に「スピーチ」の勉強をしたとき、「話し方」の方法を作文にも応用できるのではないかと考えました。それからは好きになり、今は文章を書く仕事もしています。小学校の国語の授業では、で子どもたちに作文を何度も書かせてきました。

そんな私だからこそ「作文」の書き方のポイントをお伝えできます。

どんな作文でも書くための「工程」は同じ

作文を書くには、書くための「材料」がなければ書けません。材料がないと料理ができないのと同じです。作文のための材料は、要点を列挙したもの(付箋やノートに書いておく)を作ったり、親が子どもに質問して聞き出したりして、集めることができます。

次に、集めた材料の中から必要なものだけを選びます。選んだら書く順番に並べ替えます。並べ替える際には、構成を考えながら変えます。行事作文の構成には、大きく分けて

①「起承転結」
起:初めのできごと 承:起を受けた話 転:話がガラっと変わる 結:結末・結論

②「序破急」
序:話題 破:本論 急:結論

があります。

最後に並べ替えた構成にそって書いて行きます。そのとき、一番伝えたい部分だけを具体的にします。カラーテレビの映像のように、読者がイメージできる言葉(「駅」より「東京駅」にするなど)にすると具体的になります。

私が授業で子どもに「材料」を集めさせていたときのことです。「材料」を集めるときは、付箋かノートに短い言葉でメモ程度で書ければいいのです。しかし、子どものなかには、短い言葉で書けない子もいました。

付箋1枚に、できごとや自分の思いをすべてを書こうとしてしまうのです。子ども任せに自由にメモさせるのでなく、親が子どもにそのときの出来事や心情を質問して、その答えだけを短く書くように教えてあげると良いでしょう。

どの行事作文でも「材料集め」↠「並び替え(構成を考える)」↠「書く」という工程は変わりません。

では、初めに「遠足(校外学習)」「学習発表会・展覧会」の行事を例にして、れぞれのポイントを紹介していきます。

「遠足(校外学習)」の作文の書き方

ポイントは、2つあります。

感動した心情セリフからはじめよう

1つ目は「緊張した場面」「面白かったこと」「気に入った場所」や「そのときの心情」「会話」などから書き出すことです。

子どもに教える時のコツは、「緊張した場面や感動した心情セリフなどから書いていない作文」「書いてある作文」を交互に比較することです。緊張した場面から書いていない作文を読んであげるたびに、子どもは稚拙な文章のように感じ始めるようです。

書き出しの部分だけを比較した文章の例を載せておきます。この部分を子どもに聞かせてあげると良いでしょう。

×「10月1日は遠足でした」

「ドキドキしながら窓を開けた。外を見る。『やったあ! 晴れたあ! 遠足行けるぞー!』と、大声が出た」

 

×「遠足に行きました。友だちとたくさん遊べて、楽しかったです」

「ワ―! ギャア! 鬼がわたしのそばまで来ている。つかまらないように、ピューと走るスピードをあげた。わたしは遠足のお昼の時間に、みんなと鬼ごっこをしていたのだ」

 

×「校外学習でダムを見ました。水が流れる勢いがすごかったです」

「ゴーゴーと音をたてて流れる水。校外学習でダムがある所に行きました。まるでゴーゴーと流れる水が滝のようで、力強さ感じました。いつか、また、行きたい場所になりました」

このように交互に比較してみると、明らかに「緊張した場面や感動した心情セリフなどから書いている作文」のほうが、いきいきとしているように思えます。

起承転結を意識しよう

2つ目は「起承転結」の構成にして、できれば対立した内容も加えられると、作者の思いが伝わる作文になります。

 

「学習発表会(学芸会・展覧会)」の作文の書き方

序破急の構成が書きやすい

「学習発表会(学芸会・展覧会)」の作文は、「序破急」の構成にすると書きやすいです。破(本論)で「第1に~」「第2に~」と書いていくと、書きやすいことを子どもに教えておくと良いでしょう。

「学習発表会(学芸会・展覧会)」の作文は、説明的な文章にするのが適しています。観点別にする(一つ目の観点で書く、2つ目の観点で書く)と、自分の考えも入れやすくなるので、まとめやすいのです。

ここでは、書きやすい観点別で書いた説明的な作文の例を紹介しておきます。

 

普段から「観察力」を鍛え、「問題意識」を持たせておくことが大切

私が小学校で「作文」を書くことを子どもに指導していたときのことです。400字詰の原稿用紙で2~3行しか書けない子がいました。長く書けない理由として、「観察の不足」「問題意識の不足」をあげることができます。

普段から疑問をもち「なぜ」「どうして」と考えることで「作文」に書く材料を集めることができます。歩行者用の信号機の赤は上か下か、自動車用の信号機の赤はどこにあるのか、その位置にあるのはどうしてかなど、普段から考えておくと作文を書く際に、自分が考えたことも入れて書けます。

では、どうすれば「観察力」を鍛え「問題意識」を持たせることができるのでしょうか。私が先輩教師から教えてもらった方法で、授業で良くやっていたことがあります。家庭でも「応用して実践」できます。

教室の扉をあけて真ん中にある教卓まで黙って歩きます。教卓の所で止まって「パン」と1回だけ、手を鳴らします。これだけの短い動きを子どもに見せたあとで「今のできごとを作文にしなさい」

と言います。これだけです。

最初、子どもたちは「え~」と言いますが、そのうち400字詰原稿用にこれだけのことを2~3枚書けるようになってきます。慣れてくると、子どもたちは、どんどん長くしようと張り切り出します。

どうして長く書けるようになったのか。ひと言で言えば「10点満点で点をつけつつ、アドバイスした」ためです。授業では、どうしてその点数なのかを考えさせることもしました。評価の観点は、予め、決めておきます。

「先生がパンと手を叩いた」
1点 そのときの出来事だけが書かれているため。

 

「先生がパンと手をたたいた。大きな音だったので、びっくりしました」
5点 出来事だけでなく心情も書かれているため。

 

「先生がパンと大きな音をたてて手をたたいた。ザワザワしていた教室がシーンとなった。私は、ごくっとつばを飲み込んで先生のひと言を待っていた」
8点 出来事と同時に周りの状況や自分の心情も入れて書いているため。

 

「先生がパンと大きな音をたてて手を叩いた。ザワザワしていた教室がシーンとなった。みんな一斉に不思議な顔をしながら、先生のほうに顔を向けた。しばらくの間があった。私は、ごくっと、つばを飲み込んで先生のひと言を待っていた」
10点 来事と同時に周りの状況を具体的に書き、自分の心情も入れているため。

これを繰り返すだけで、本当に長く書けるようになる子が多くいました。

家庭でも親子で書いてみよう

この練習は家庭でもできます。親が子どもの目の前で「パン」と手を叩いて書かせればいいのです。そのあと点数をつけてあげて、そのときの周りの景色、自分の心情などを詳しくすることを教えてあげます。

家庭では、周りの子どもとは比較できませんが、私が授業でやってきたことと同じようにできます。もしも点数をつけられなくても、親と一緒に書いて子どもと書いた文章を比較することならできるでしょう。兄弟姉妹で、一緒にすることもできます。

普段から考える習慣をつけて、書く材料集めをスムーズに

普段から疑問をもち「どうしてかな」「もしかしたら…」などと考えることが大切です。問題意識があれば、長くも書けるようにもなります。あとは、行事別のポイントをおさえて、書き進めていけばいいのです。

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文・構成/須貝 誠(すがいまこと)

塾国語科講師。教育・旅行ライター。現代ビジネス・マネー、コエテコサイト・ソクラテスのたまご、子ども学びラボに執筆あり。著者に「若手教師の働き方」(東洋館出版)がある。教育以外では年間100公演観劇したこともある劇団四季鑑賞マニア。斎藤一人の愛弟子でもある。

                                                                                                               

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