物理で習う「合力」とは
物理の授業で「合力」を習った記憶はあっても、詳しく覚えていない人もいるかもしれません。まずは、合力が何を表す言葉なのかをチェックしましょう。
合成した力の大きさや向きのこと
合力の読み方は、「ごうりき」または「ごうりょく」です。ただし物理用語では、基本的に「ごうりょく」の読み方が用いられます。
合力は、図のように物体にかかる二つ以上の力を、同じ効果の一つの力へと置き換えたときの、その一つの力を指す言葉です。なお合力を求めることを「力の合成」といいます。
物理における合力とは、「合成した力の大きさや向き」と考えてよいでしょう。合力の反対は「分力(ぶんりょく)」で、分力を求めることを「力の分解」といいます。
合力の求め方をケース別にチェック
合力の求め方は、物体への力のかかり方によって変わります。ケース別の求め方を見ていきましょう。
二つの力が一直線上にあるとき
二つの力が一直線上にあるときは、足し算または引き算するだけで、簡単に合力を求められます。力が二つとも同じ向きの場合は、二つの力を足した値が合力の大きさです。合力の向きも、元の力と同じと考えます。
二つの力の向きが反対の場合は、大きい方から小さい方を引いた値が合力の大きさです。合力の向きは、大きい方と同じになります。
二つの力が一直線上にないとき
二つの力が一直線上になく、それぞれ違う方向を向いているときは、二つを合計するだけでは合力を求められません。
その場合は図のように、まず二つの力を2辺とする平行四辺形を描きます。次に二つの力がかかっている点から、反対側へ向けて対角線を引きましょう。
この対角線が、二つの力の合力の大きさと向きを表しています。合力が二つの力の平行四辺形で求められることを、「平行四辺形の法則」といいます。
合力の大きさは二つの力の角度で変わる
二つの力が一定のとき、合力の大きさは「二つの力が成す角度」によって変わります。
図のように、実際に平行四辺形を描いてみると、その対角線は角度が小さいほど長く、大きいほど短くなっていることが分かるでしょう。
なお二つの力が作り出す角度が0°のとき合力は最大となり、180°で最小となります。
力が三つ以上の場合
これまでは「二つの力」の合力を求めてきましたが、力が三つ以上かかっている場合は、どうすればよいのでしょうか。実は力は、いくつあっても一つに合成できます。
力が三つの場合は下図のように、先に二つの力を合成し、その合力と残りの力を合成すると、三つの力の合力を求められます。四つ以上でも、同じように合成を繰り返していくだけです。
力が全て一直線上にある場合は、前述の通り足し算・引き算で求められます。
「合力」を身近に感じてみよう
「力」は目に見えないため、日常生活で合力を意識する機会は少ないかもしれません。合力を身近に感じられる事例を二つ紹介します。
箱を持ち上げてみる
合力を最も身近に感じる方法としておすすめなのが、重い箱などを2人で持ち上げる実験です。収納ケースやおもちゃ箱など、家にあるものを使って、二つの力の角度で合力の大きさが変わることを体験してみましょう。
箱には真下に向かって重力がかかっているため、持ち上げるにはその重力と同じ大きさで、向きが真上の力が必要です。箱に紐をかけて2人で左右から持ち上げる場合、左右の力の合力が、重力と同じ大きさでなくてはなりません。
そこで、紐の角度を変えながら、何度か箱を持ち上げてみます。下図のように、紐の角度が小さいときは小さな力で持ち上がるのに、角度が広がるにつれてより大きな力が必要となることを実感できるでしょう。
※実験の際はけがをしないように、箱の重さや紐のかけ方、持ち上げ方に注意しながら行いましょう。
建築物での応用例を探す
合力の仕組みは、建築物にも応用されています。外出の際に探してみると、よい勉強になるでしょう。
例えば電信柱の中に、地中や他の柱に向かって、電線とは異なるケーブルが伸びているものがあります。電信柱は通常二つ以上の電線に引っ張られているため、電線の合力がかかっているのです。
電線の重さや角度によっては、合力が柱を支える力よりも大きくなり、倒れてしまうでしょう。そのため、合力と反対向きにケーブルを設置して、倒れないようにしているのです。
また明石海峡大橋のような吊り橋には、小さな力で大きな合力を得る工夫が見られます。吊り橋は、支柱から伸びるワイヤーで、橋が受ける重力を支える構造です。
紐で箱を持ち上げるときと同様に、ワイヤーの角度が小さいほど合力は大きくなります。支柱を高くすればワイヤーの角度が小さくなり、重い橋を効率的に支えられます。そのため大きな吊り橋は、支柱を高くしてあるのです。
合力を知って物理に親しもう
合力とは二つ以上の力を合成した力です。物体には重力や摩擦力、引っ張る力などさまざまな力がかかっており、それが二つ以上なら、必ず合力も存在します。
親子で実際にものを持ち上げて試したり、図を描いたりしながら、合力について考える機会を持ち、物理の世界に親しみましょう。
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構成・文/HugKum編集部