落語『猫の皿』ってどんなお話? 結末が秀逸なあらすじや登場人物、おすすめ絵本も紹介!

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落語『猫の皿』は、江戸の道具屋がたまたま立ち寄った茶屋で、猫の餌入れに使われているのが高級茶碗であることに気づき、安く手に入れようとたくらむお話。最後は茶屋の店主が一枚上手で、道具屋のたくらみを見透かした一言を放ちます。
今回は『猫の皿』のあらすじから、おすすめの絵本も紹介!

『猫の皿』という落語を聞いたことはありますか? 落語は昔の話というイメージがあるかもしれませんが、動物が登場すると一気に親しみやすくなりますよね。今回紹介する『猫の皿』には、タイトルの通り、猫が登場します。一体どんなお話なのでしょうか?

『猫の皿』ってどんなお話?

猫の皿とは、江戸の道具屋が仕入れに行った地方での物語。収穫もなく、帰りに寄った茶屋で一休みをしていると、茶屋の猫が餌を食べています。よく見ると、餌が入った皿は、三百両もするという「絵高麗の梅鉢茶碗」! それに気づいた道具屋は、なんとか安くその茶碗を手に入れようと作戦を立てます…。

さて、道具屋は茶碗を手に入れることができたのでしょうか? 続きは「あらすじ」で紹介します。

三百両っていくら?

「三百両」とは、現在ではいくらの価値があるのでしょうか? 一両を10万円とすると、三百両は3,000万円ということに! とんでもない額ですね。

しかし、江戸時代の貨幣の価値を現在に当てはめることは、人々の暮らしが全く違うことから、かなり難しいことのようです。時代だけでなく、品物で比較するだけでも、一両の価値はかなり変わります。

18世紀に焦点を当てると、お米の価格で換算すると約6万円、大工の賃金で換算すると約35万円と、なんと29万円もの差が。時代に焦点を当てると、江戸時代初期は約10万円、中〜後期は4〜6万円、幕末で4千〜1万円と、約260年続いた江戸時代の中で、その貨幣の価値も変わっていったことがわかります。

絵高麗の梅鉢茶碗って?

「絵高麗の梅鉢茶碗」は名品のようですが、一体どんなものなのでしょうか? まず、「絵高麗」ですが、「えこうらい」「えごうらい」と読みます。素地を白泥土で化粧し、その上に黒や褐色に発色する鉄砂釉で文様が描かれたもの。高麗とは、かつて朝鮮半島に存在した国の名前です。近年は、朝鮮産だけでなく、中国産も絵高麗と呼ぶようです。

「梅鉢」は、「うめばち」と読み、点で描いた梅の花の模様のこと。花弁は5枚だったり6枚だったり。つまり、「絵高麗の梅鉢茶碗」とは、白地に褐色の梅鉢模様が入った茶碗のことだったのですね。珍しいものだったため、江戸時代の茶人は大切に使ったそうです。

物語のあらすじ

それではさっそく、あらすじを見ていきましょう! 道具屋はどうやって高価な茶碗を手に入れようとしたのでしょうか? そして、その作戦はうまくいったのでしょうか? まさかの結末を要チェックです。

あらすじ

江戸の道具屋は地方に仕入れに行きましたが、残念ながら成果はなし。一休みしようと入った茶屋でお茶を飲んでいると、茶屋の飼い猫が餌を食べていました。よくみると、猫の餌が入っている皿は、「絵高麗の梅鉢茶碗」と呼ばれる高価な茶碗ではありませんか。

その値はなんと三百両。道具屋は、これほど高価な茶碗を猫の餌入れに使っているとは、店主はきっと茶碗の価値を知らないに違いないと考えました。そこで、この茶碗を安く手に入れようとたくらみます。

道具屋は店主に声をかけると、餌を食べていた猫を抱き上げ「この猫が大変気に入ったので、三両で譲ってくれないか」と話を持ちかけました。猫一匹に三両とは破格の値段。道具屋の提案を、店主は承諾しました。

その後道具屋がさりげなく、「猫は皿が変わると餌を食べなくなると聞いたことがあるから、この皿も一緒にいただいていこう」と言うと、「それはできません」と店主が言いました。

「この皿は、絵高麗の梅鉢という茶碗で、三百両はする名品なのです」。そう、店主はその皿の価値を知っていたのでした。

計画が失敗した道具屋が、残念そうに「なぜそんな高価な皿で猫に餌をやっているのですか?」と聞くと、店主はこう答えました。「この皿で餌をやっていると、時々猫が三両で売れるんですよ」と。

主な登場人物

さて、最後のオチがなんとも面白い『猫の皿』でしたが、改めて登場人物をおさらいしましょう。

道具屋

江戸の道具屋。道具屋というのは、骨董品や古美術品、古道具を扱う人のこと。地方で安く仕入れ、江戸で高く売ることが多かったようです。

茶屋の猫

茶屋で餌を食べていた猫。まさか自分の餌が入っている皿が高価なものだとは、知らなかったでしょうね。

茶屋の店主

皿の価値を知りながら、わざと猫の餌やりに使っていた店主。大胆かつ上手にお金を儲ける策士です。

『猫の皿』読むなら

動物が登場し、怖いシーンもなく、子どもと一緒に楽しみやすい落語といえる『猫の皿』。落語を聞きに行くのはハードルが高くても、絵本が出版されているので気軽に楽しめます。今回は、猫の皿の他に、動物が登場する別の落語の絵本も2冊紹介!

『ねこのさら』(教育画劇)

落語と木版画の相性がぴったり。遠くからでも見やすいため、読み聞かせにも向いているとのレビューも。

『ごんべえたぬき』(KADOKAWA)

たぬきが登場する落語の絵本。山里のはずれに住む「ごんべえさん」の元に、いたずら好きの「たぬき」がやってきて…? 親しみのある可愛いイラストも魅力的。

『母恋いくらげ』(理論社)


『母恋いくらげ』は、落語家の柳家喬太郎が自ら作った新作の落語です。客席から「みかん」「電気」「水たまり」という3つのお題をもらって作ったそう。くらげが主人公のめずらしい物語です。柔らかく温かみのあるイラストも特徴。

『猫の皿』の魅力は?

『猫の皿』の魅力は、何と言っても、道具屋よりも一枚上手だった茶屋の店主の最後の一言。商売上手ですね。猫の皿については絵本を1冊紹介しましたが、かつてNHKのてれび絵本『えほん寄席』で猫の皿が放送されたことも。機会があればぜひ「落語」として語られる『猫の皿』を楽しんでください。

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構成・文/伊藤舞(京都メディアライン)

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