【読み聞かせの悩み】同じ絵本ばかりを読みたがる2歳半の息子。 いろいろな絵本を読むべき?児童書編集者が答えます

子育てのなかでの絵本に関する悩みを解決していくこちらの企画「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」。
今回は「子どもが同じ絵本ばかりを読みたがる」そんなママからの相談です。

実は同じものを繰り返し読むことには、メリットがたくさんあるんです!絵本編集者であり、「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」室長の筆者が解説します。

    子どもが同じ絵本ばかりを読みたがります。

    子どもが絵本に集中できるようになり、最近、読み聞かせをがんばっています。

    ただ、好きな絵本ができて、そればかりを繰り返し読んでもらいたがることが気がかりです。

    読み聞かせは言語の発達によいと聞きますし、いろいろな絵本を読んであげた方がいいのではと思いますが、大丈夫でしょうか?(2歳半男児の母)

      A.好きな絵本を繰り返し読むことは、メリットがたくさんあります。

      日々、絵本を読んであげていると「同じものを読んで意味はあるのかな?」という疑問は出てきますよね。

      ですが、同じ絵本の繰り返しは全然問題ありません。むしろ、読み聞かせをしていくと、ほとんどの子が毎日読む「定番絵本」を作る傾向にあります。

      同じ絵本を読むことには、メリットがあるんです。

      〈繰り返し読みのメリット〉

      ・安心感を得る。

      ・繰り返し読みは探究につながる。

      1.安心感を得る。

      子どもたちが同じ絵本を読むのは、もちろん「それが好き」だからなのですが、その内容が分かっているからこそ「読んで安心感」を得ます。

      子どもたちは毎日「初めてする経験」がありますよね。

      ですが、初めてのことをするのは怖いし緊張するし疲れるものです。子どもたちの性格にもよりますが、初めてのことをしり込みせずなんでも突っ込んでいける子は少数派な感触です。

      そのため、まだまだ小さな子は「これ知ってる! わかる! 好き!」と安心して読むことってけっこう大事なことなんです。

      2.繰り返し読みは探究につながる。

      同じ本の1度めは、大体お話の流れであったり主要な絵を認識するくらいですが、繰り返し読むことでその絵本のすみずみまで覚えてきます。

      そうすると、その子は「この絵本のここが好き!」というこだわりポイントを自分で掴みますし、パパママも「うちの子は、こういう部分が好きなんだな。こういうものを好む傾向があるんだな」ということが分かります。

      こうした「小さな好き」を集めていくと、次に「こんな絵本が好きかもしれないな」という読み聞かせのステップアップにもつながりやすいですし、何より「好き」を深掘りしていくことにより、その子の強みを見つけやすくなります。これからの時代は、「みんな一緒」よりも、「どう人と違ったことができるか」がポイントとなる時代です。「好き」を探求していくと、その子の人と違った強みを育てることにもつながっていきます

      繰り返し読みは、そうしたその子自身を探求していく手がかりにもなるのです。

      繰り返し読みを、探究につなげていく方法

      それでは、具体的に絵本を繰り返し読むことで、どうその子を探究していけるのか、お試しの方法をご紹介します。

      読み聞かせに方法などは決まっておらず、各ご家庭それぞれ楽しく読むのが一番なのですが、「ちょっとでも変化をつけたい」、そんな時にお試しください。

      〈繰り返し読みの方法〉

      1.ゆっくり、子どもの顔を見ながら読む。

      2.反応を観察する。

      3.「好き」をもとにおしゃべりをする。

      1.ゆっくり、子どもの顔を見ながら読む。

      ふだんはパパママのお膝の間に子どもが入って読むことも多いと思いますが、子どもの顔が見えるような位置から1画面ずつゆっくりと読んでみましょう。

      2.反応を観察する。

      絵本の画面の中で、動きが好きなのか、その登場人物に興味がひかれるのか、笑えるのがいいのか、色が好きなのか……、お子さんの反応を見ながら観察してみましょう。
      パッと見て『コレが好きなんだ』と、すぐには分からないと思います。本人だって「ここがいい」とはっきり言うことは難しいでしょう。ですが、繰り返すうちに「こんな方向性が好きかもな」というのは絞り込めてくると思います。

      3.「好き」をもとにおしゃべりをする。

      だれでも好きなもののことを話すのは楽しいですよね。その「好き」のタネは、育てればその子ならではの魅力に成長します。おしゃべりできる年齢でなければ、「この場面が好きかな」「この絵が好きかな」と思うところを繰り返し見せてあげても良いと思います。

      「好き」を手掛かりにすれば、同じ絵本の読み聞かせでも、途中の会話だったり読み聞かせ前のアプローチだったりが少しずつ変わってきます。そうすると、同じ絵本の読み聞かせでも、いろいろな変化の刺激を毎日子どもは受けられます。

      「読み聞かせはコミュニケーションの手段」が合言葉なので、「読み聞かせするぞ」という思いとともに、「息子の推し絵本について、今日もおしゃべりをするぞ」という心持ちで向かい合ってもよいんじゃないかなと思います。

      おすすめ絵本

      とはいうものの、親側としては「毎日同じ絵本読むのは飽きる!」という部分もありますよね。

      「この絵本しか読まない!」と、すでに決まってしまっている場合は、読み方でなんとかバリエーションを変えて乗り切っていただければと思いますが、そこまでではないけれど「うちの子は気に入るとずーっと同じ絵本を読み続けるんだよなー」という傾向のお子さんへは「シリーズ絵本」の中の1冊を読むことをおすすめします。

      1冊子どもが気に入って、繰り返しすぎて親も飽きてきたなーと思ったとき、同シリーズの別の絵本を読めば「あ、あのキャラクターの絵本だ」という安心感もありますし、内容的には変わるので、親としても新鮮な気持ちで臨めます。

      「ノラネコぐんだん」シリーズ(工藤ノリコ 白泉社)

      ノラネコぐんだん まだまださがしえブック (コドモエのえほん) 2023年7月6日発売の第三弾

      笑いあり、子どもたちの大好きな食べ物もあり、ノラネコぐんだんのチャーミングさ、笑えるストーリーなどいろいろな方向から幅広く楽しめる絵本シリーズです。

      ワイルドで妙な行動力のある8匹の“ノラネコぐんだん”が、ワンワンちゃんの開いているお店に、とんでもないちょっかいを仕掛けます。そして当然のごとく「ドッカーン」としっぺ返しをくらって……。と、シリーズ内のどの絵本も定番の始まりとオチで、ノラネコぐんだんたちが叱られてもまったくへこたれてない愛嬌さもあり、とにかく安心して親子で笑える絵本シリーズです。

      「へんしん」シリーズ(あきやまただし 金の星社)

      へんしんやきいも (へんしんシリーズ) 2023年9月16日発売

      読み手も声に出して楽しめる言葉遊び絵本です。小さなころ「『かっぱ』って10回言ってみて!」と言って「かっぱかっぱかっぱ……ぱかっ!」と違う言葉になっちゃったりする遊びをしたことはありませんか? そんな言葉の変化を楽しく絵本化したシリーズです。

      不思議なトンネルをくぐると言葉だけでなく姿まで変身してしまい、他の絵本ではマラソンをしているうちに変身したり、乗ったらバスが変身してしまったり、様々なシチュエーションでいろいろな変身言葉遊びを楽しめます。

      パパママにとってありがたいのは、子どもが一緒に声を出して参加できるので自分で読んでくれること。そして、いろいろな言葉に興味を持つきっかけにもなりますよ。

      「繰り返し読み」は、「好き」を育む

      今までは、「みんな、同じくらいできるようになろう」と、一通りのことができるようになることを目指す教育でしたよね。ですが、最近では「人と違ったどんなことができるのか」が求められるようになっています。

      そんな時代に「好き」というその子の核を見つけ育てていくことは、とっても重要なことです。

      私も子どもを育てている中で、この子たちが成長するうえで何を持っていたらいいのかな?とよく思うのですが、突き詰めていくと「好きなことを持っていれば大丈夫」なのかなと思います。

      気に入った絵本が見つけられたということは、そこにその子の「好きの種」があると思います。そしてまだそういった絵本はなくても、絵本には本当にいろいろなジャンル、表現がありますし、その子のドンピシャがこれからどんどん出てきます。

      そして、読み聞かせはたくさん読んで広く楽しむこともできますが、1冊のお気に入りの本を手掛かりに、どんどん深掘りしていくことも可能です。どちらの読み聞かせもその子を大きく成長させたり心の安らぎとなったり、大きなメリットもたらしてくれますよ。

      「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」を1話から読む!

      読み聞かせの時間を作れないのは私の要領が悪いせいですか?新連載【育児の悩みは絵本で解決】vol.1

      【育児の悩みは絵本で解決】連載担当者は……

       
      徳永真紀/「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」室長
      フリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。7歳と5歳の男児を相手に「読み聞かせとは何ぞや」を問う日々。最近は幼稚園・小学校でも読み聞かせおばちゃんとして活動中。絵本ナビスタイルにて「絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力」を連載中。

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