「書き初め」の目的や由来は? おすすめのお題と、筆・用紙など道具の選び方も解説

書き初めは、正月の伝統行事の一つです。子どもの頃に学校や書道教室で書いたり、コンクールに出品したりした経験のある人もいるでしょう。書き初めの由来や必要な道具、おすすめのお題など、家族で楽しむための基礎知識を解説します。

書き初めの目的は?

書き初めとは、その年初めて毛筆で字を書くことです。正月行事の一つであり、俳句では新年の季語にもなっています。では書き初めは、そもそも何のためにあるのでしょうか。まずは書き初めの目的を見ていきましょう。

書の上達を祈願する

書き初めの目的は、書の上達祈願とされています。

現代でも、きれいな手書き文字に好印象を持つ人は多いはずです。公的文書や手紙など、筆を手に持ち文字を書く機会が多かった時代は、なおさらといえるでしょう。昔の人にとって、字が上手なことは重要なスキルの一つだったといわれています。

書き初めは1月15日の「左義長(さぎちょう)」で、松飾やしめ縄などの正月飾りと一緒に燃やします。左義長とは「どんど焼き」や「どんと焼き」などとも呼ばれる行事のことです。ここで書き初めを燃やす火が高く上がれば上がるほど、書が上達するといわれています。

書き初めは正月の伝統行事

書き初めはもともと、宮中行事の一つでした。それがなぜ現代のような形になったのか、書き初めの歴史とあわせて紹介します。

平安時代の「吉書の奏」が始まり

書き初めの起源は、平安時代の宮中行事「吉書の奏(きっしょのそう)」とされています。吉書の奏とは年始や改元など、節目のときに天皇に文書を奏上する儀式です。

吉書の奏は、のちの時代にも引き継がれます。鎌倉・室町時代には「吉書始(きっしょはじめ)」と呼ばれ、新年の行事として定着しました。

江戸時代には、吉書始が庶民にも広まります。「正月に書を書く」という、現代の書き初めと同じ形です。明治時代には学校教育に取り入れられ、現在まで続いています。

書き初めを1月2日に行う理由

書き初めの基となった吉書の奏は、年始などの節目に吉日を選んで行われていましたが、現代の書き初めは1月2日に行うのが一般的です。1月2日は、習い事を始めると上達するとされる「事始め」でもあるといわれています。

書の上達を願うための書き初めを、1月2日に行うことになったのも、納得できる理由といえるでしょう。1月2日にできない場合は、年神様が家にいるとされる松の内(1月7日または15日まで)に書けばよいとされています。

書き初めする際に用意するもの

書き初めに使用する道具は、手持ちの書道用具でも代用できます。しかしせっかく書き初めをするなら、専用の道具もそろえたいと考える人もいるでしょう。書き初めの際に必要なものや、選び方を紹介します。

筆は太いものを

書き初めに使う筆を用意する場合、書き初め用の筆と、太めの書道用筆の二つの選択肢があります。いずれにしても、自分の書きたいお題の文字数や画数、用紙のサイズに合わせて太さを決めるのが基本です。

筆の太さは、一般的に号数で表されます。ただし書き初め用の筆は号数が大きくなるほど「穂」が太くなるのに対して、書道用筆は逆に細くなるので、選ぶ際には注意が必要です。

穂とは、墨を含ませる筆先の部分を指します。メーカーによって多少の違いはありますが、書き初め用の筆なら5~8号、書道用の筆なら1~4号の「太筆」が使いやすいでしょう。

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紙はさまざまなサイズがある

書き初めの紙の大きさに、特に決まりはありません。さまざまなサイズがあるので、書きたい文字数に合わせて選ぶとよいでしょう。

よく使われる紙には、「八つ切り(約680mm×175mm)」「条幅(じょうふく・約1,350mm×348mm)」「半紙(約334mm×242mm)」などがあります。条幅は「半切(はんせつ)」とも呼ばれます。

ただし書き初めコンクールでは、用紙が規定されていることがほとんどです。東京判・東京小判・千葉判など地域特有の用紙もあり、それぞれサイズが異なります。コンクールに挑戦したいと考えている人は、用紙の規定を事前に確認しておきましょう。

墨にもこだわってみよう

書道用の墨には、固形タイプと液体タイプ(墨汁)があります。固形の墨は「すす」を「にかわ(動物の骨や皮から作られるゼラチン様の物質)」で固めたもので、水と一緒にすって液状にして使います。

江戸時代には「若水(わかみず)」と呼ばれる、元旦の早朝に初めてくんだ井戸水で墨をすり、書き初めをしていたようです。本格的な書き初めに挑戦するなら、水道水でもよいので元旦にくんだ水で墨をするところから始めてみましょう。

一方、初めから液状になっている墨汁は、する手間がかからず気軽に使えます。墨汁にもさまざまな種類がありますが、書き初めに使うなら墨の色が紙にしっかり乗る「清書用」や「書道作品用」がおすすめです。

下敷きや文鎮も必須

下敷きや文鎮は、書道に必須の道具です。下敷きは使う用紙のサイズに合ったものを用意しましょう。文鎮は書いている間に紙がずれるのを防ぐものですので、特に書き初め用にこだわる必要はありません。自分が使いやすいものを選ぶのがおすすめです。

なお、大きな書き初め用紙を使う場合、床に膝をついたり四つん這いになったりして書くこともあります。書いている最中に床が墨で汚れる可能性も十分に考えられるため、あらかじめ周囲に新聞紙を敷き、近くに雑巾を置いておくと安心です。

書き初めにおすすめのお題

書き初めのお題は、新年や季節にちなんだものや四字熟語などが一般的です。新年の抱負や、自分の好きな言葉を選んでもよいでしょう。書き初めコンクールに挑戦する人は、応募先の課題を事前に確認しておきます。年代別に、書き初めにおすすめのお題を紹介します。

子どもでも書きやすいひらがな

幼稚園・保育園児や小学校低学年なら、ひらがな2~3字のお題を選びます。筆で文字を書くことになれていない小さな子どもでも挑戦しやすい上に、ひらがなを書く練習にもなります。家族で一緒に書き初めをすると、正月のよい思い出にもなるでしょう。

2文字のお題としては「ふゆ」や「ゆき」といった季節にちなんだものや、「ゆめ」「そら」のような分かりやすいものが挙げられます。3字なら「ひので」「あさひ」「おせち」などもおすすめです。その年の干支や、子どもが好きな言葉などを選んでも楽しめるでしょう。

熟語や漢字

小学校中学年以上の子どもには、熟語や漢字を使ったお題が適しています。2文字なら「新春」「初夢」など新年にちなんだものや、「挑戦」「飛翔」といった新しい年への希望が感じられるものがよいでしょう。

4文字では「初日の出」「希望の光」「千代の春」のようなお題や、「一期一会」「一意専心」「臥薪嘗胆」などの四字熟語もおすすめです。中学生以上なら「美しい自然」や「努力が実る」といった、5文字のお題にも挑戦してみましょう。

今年の抱負や目標もおすすめ

「有言実行」「初志貫徹」「七転八起」のような、抱負・目標・座右の銘に使われる言葉は、大人の書き初めにもふさわしいお題といえます。

四字熟語などにこだわらず、なりたい将来の姿ややりたいことを、自分の言葉で自由に書いてもよいでしょう。「〇〇の資格取得」「〇〇へ家族旅行」のように、個人的な目標でも構いません。

文字にすることで目標が具体的になったり、実現しようと決意を新たにしたりと、気持ちを高めてくれる効果も期待できます。書いたものは左義長で燃やすまで、目に付く場所に飾っておきましょう。

書き初めをして新たな気持ちで1年を過ごそう

書き初めは平安時代の宮中儀式から形を変えつつ、現代まで続く正月の伝統行事です。江戸時代には庶民が若水を使って書き初めをして、書の上達を祈願したといわれています。

現代ではコンクールに応募する場合を除き、紙のサイズやお題に特に決まりはなく、好きな言葉や1年の抱負・目標を書く人も少なくありません。どのような紙に、何を書くのかを考えるのも、書き初めの楽しみの一つといえます。日頃書道になじみのない人も、正月は家族で書き初めに挑戦してみるとよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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