4歳の息子がことばを言いまちがえることが気になっています。その都度正しく直した方がいい?
4歳になったばかりの息子が、「てれび」を「てべり」、「パトカー」を「ぱこかー」、「食べる」を「ぱべる」など、言葉を言いまちがえます。注意しても言い直せたり言い直せなかったりします。その都度、指摘してあげたほうがいいのでしょうか?
「てれび」が「てべり」に、「パトカー」が「パコター」に、こうした言いまちがいは、お子さんによくみられます。以前、SNSで聞いてみたところ、お子さんのかわいい言いまちがいがたくさん寄せられました。小さいお子さんを子育て中のママパパの間では、定期的に話題になるテーマのようです。
大前提として、どのお子さんも、言葉をまちがいながら少しずつ獲得していきます。「生まれてから一度も言葉をまちがえずに話せるようになった子はいませんから、慌てなくても大丈夫!」とお伝えしています。
ぽつぽつ期:1~2歳ごろ 言葉の一番印象に残った音を言う
ことばをお話しはじめの1~2歳頃のお子さんには、「りんご」を「ご!」「ジュース」を「ジュ!」、「でんしゃ」を「ンチャ!」のように、ことばに含まれる音を1つだけ言うことがよくあります。こうした現象を、私たち言語聴覚士は「ワードパーシャル」や「部分語」と呼んでいます。
まだ大人のようには上手に動かせない小さなお口で、自分の言える音を使ってことばを伝えます。また、耳でことばの音をとらえるのもまだそれほど上手ではありません。音が3つ4つと並ぶような長いことばでは、頭の中に音を浮かべておく力も必要となります。こうしたことが発達していくことで、少しずつワードパーシャルを卒業していきます。
ワードパーシャルが中心で、ことばや表現のレパートリーもまだ多くないお子さんは、少ないことばでことば以上の思いを伝えようとすることもあります。ああかな?こうかな?と周囲が推測することが、お喋りの助けになります。一生懸命聞いてあげて、伝わった!という経験を日々積み重ねていくことで、もっと伝えたい!が育っていきます。
カタコト期:2~3歳ごろ 音同士がひっくり返ったり、他の音につられて変わる
単語と単語を並べたカタコトの2語文を話し始める時期になるとよくある言いまちがいです。たとえば、
・「テレビ[terebi]」と「てべり[teberi]」
・「パトカー[patoka-]」と「ぱこたー[pakota-]」
の言いまちがいは、ローマ字で書き取ってくらべると、テレビのほう[r]と[b]が、パトカーのほうは[t]と[k]がそれぞれひっくり返っています。それ以外の音は正しく言えていることに気が付きます。
それから、「食べる[taberu]」を「ぱべる[paberu]の言いまちがいについて。これは、じっくり眺めてみるとおもしろいことが分かります。
「たべる」の「た」が「ぱ」に変わっているところがまちがいですが、「ぱ」は唇を閉じて開けて出す音(両唇音)です。「た」の次の音である「べ」も、同じく唇の音です。舌で出す音である「た」を言った後、「べ」を言うために唇をいったん閉じるのが、「食べる」を話すときの順序ですが、唇を閉じる準備を音ひとつ分先取りすることで「ぱべる」となってしまうのです。お口の準備をフライングしたのかな?と想像すると、なかなか興味深いと思いませんか?
3~4歳ごろに多い「音のひっくり返り・言いまちがい」。日常で音韻意識を育てる遊びを
一般的な発達では、3〜4歳頃にこうした音のひっくり返り・言いまちがいが起こります。単語の中で音を順番通りに並べることを練習している過程です。
こうした音を並べる力は「音韻意識」と呼ばれ、この音韻意識があるからこそ言い間違いをしないように気をつけることができます。耳とお口が育っていくことで、少しずつ言えるようになっていくものなので、その都度話を遮って注意したり、言い直すよう求める必要はありません。
日常のなかで音韻意識を育てる遊びには、ことばの拍に合わせて「り・ん・ご」と手をたたくリズム遊び、しりとり遊び、かるた取り遊びなどがあります。音韻意識は、正しい発音や文字の読み書きを獲得する土台になります。遊びのなかで楽しく育んでいきましょう。
発音ができない音がある場合には、併せてこちらの記事もご参照ください
イラスト/べっこうあめアマミ(https://twitter.com/ariorihaberi_im)