「岩国寿司」とは? 知られざる歴史や特徴、牛乳パックで作るレシピまでをご紹介!

山口県岩国の郷土料理「岩国寿司」は、祝いの席などに食べられている押し寿司。地元の食材が使われていたり、岩国を訪れたら食べたい一品です。そんな岩国寿司について、本記事では歴史や作り方、どんなものが使われているのか、また自宅でも作れるのかを紹介していきます。

岩国寿司とは?

山口県の岩国といえば、5連アーチの木造橋「錦帯橋」が有名ですよね。そして、ご当地グルメとしてあげられるのが「岩国寿司」です。

岩国寿司とは、チシャを下に敷いて、その上に魚の身や寿司飯、錦糸卵やでんぶ、椎茸などを何層にも重ねて作られる、豪華な押し寿司です。使われる具材は家庭や店で様々。岩国ではお祭りや冠婚葬祭など、人が大勢集まる際に欠かせない料理なのだそうです。

別名「殿様寿司」。岩国寿司の由来や歴史は?

岩国は城下町として栄えた歴史ある町。そんな岩国の郷土料理である岩国寿司の由来には諸説あります。しかし広く信じられているのは、初代岩国藩、藩主、吉川広家にまつわる説です。

岩国城は山の上に建ち、水や食糧を調達するのに工夫が必要でした。そこで吉川広家は料理番に、運搬が便利で保存が可能な料理の考案を命じます。そこで考え出されたのが、地元で作られた野菜や、近海で獲れた魚の身を使った岩国寿司です。

完成した岩国寿司を藩主に献上すると、大変よろこんだそう。そのことから岩国寿司は、別名「殿様寿司」とも呼ばれています。

岩国城(山口県岩国市横山)

また、岩国寿司は、武士が城にあがる際に持参する保存食で、当初は武士しか食べられなかったそう。一般的に岩国の郷土料理として広まったのは、明治時代に入ってからだと言われています。

岩国寿司の特徴とは?

豪華な押し寿司、岩国寿司の特徴をチェックしていきましょう。

具材を何層にも重ねて押して作られている

まず岩国寿司の特徴としてあげられるのは、酢飯と具材が何層にも重なっているということ。

木枠にチシャや酢飯、魚の身、錦糸卵など具をのせていき、それを何層にも重ね、フタをし、重石をのせて作られます。あまり層が高くなると崩れやすくなるため、3~5層が一般的だそうです。

大量に作る

岩国寿司は、保存食として作られたといわれていたり、お祭りや祝事の席で大勢人が集まる際の食事として作られてきたものです。そのため、一度に大勢で食べられるように大きなものが多いのが特徴。

一度に10升もの酢飯を使われることもあり、特に大きなものを作る際、職人が上から乗って、重石になることもあるそう! そうしてできた大きな岩国寿司は、1人分ずつ切り取って食べられます。

岩国れんこんを使うのが定番

岩国寿司に使われる食材は各家庭や店によって様々ですが、その中でも「岩国れんこん」を使うのが定番のよう。岩国れんこんを薄くスライスして、甘酢で煮たものが使われます。

岩国レンコンが栽培されている蓮田(山口県岩国市)

また岩国れんこんと、一般的なれんこんには違いがあるんです。一般的なれんこんの穴は8つ。しかし、ほとんどの岩国れんこんの穴は9つ。そのことから「見通しがいい」と、縁起ものとして祝いの席やお正月などにも用いられています。

自宅で岩国寿司を作るには?

親族の集まりなどに欠かせない岩国寿司。その際は各家庭で作られることが多いため、昔、岩国では、嫁入り道具として、岩国寿司を作る木枠を持参したともいわれています。

そんな岩国寿司は木枠がなければ作れない訳ではありません。牛乳パックや、底が抜けるケーキ型、保存容器など、自宅にあるものを使って作ることが可能です。

牛乳パックでも岩国寿司は作れちゃう?

牛乳パックで方を作る方法

【用意するもの】

・牛乳パック
・ハサミ
・クッキングシート
・マスキングテープ

【作り方】

1、牛乳パックの前面を、底から3cmほど残して両サイド縦に切ります。

2、クッキングシートを牛乳パックのサイズに切ります。

3、牛乳パックにクッキングシートをマスキングテープで固定して型の完成です。

底が抜けるタイプのケーキ型

【用意するもの】

・そこが抜けるタイプのケーキ型
・クッキングシート
・ハサミ

【作り方】

1、ケーキ型に合わせて、クッキングシートをハサミで切ります。

2、ケーキ型にクッキングシートを敷いて完成です。

保存容器を使う方法

【用意するもの】

・保存容器(深いものがおすすめ)
・ラップ

【作り方】

保存容器にラップをきっちり敷きます。この時、あとで引っ張り出せるように容器からにラップを出しておくのがおすすめです。

自宅で岩国寿司を作ってみよう!

自宅にあるものを使って岩国寿司の型が作れることがわかりました。そこで実際に上記で説明した牛乳パックを使って、岩国寿司を作ってみましょう。

一般的に揃えやすい材料で作ってみましたが、具材はアレンジ可能です。

材料・用意するもの

<用意するもの>

・牛乳パック(1リットル)
・クッキングシート
・ハサミ
・マスキングテープ
・重石(ペットボトルなど)
・酢飯… 2合分
・錦糸卵… 卵1個分

<椎茸の甘辛煮>

・干し椎茸… 10枚くらい
・醤油… 大さじ2
・酒… 大さじ2
・みりん… 大さじ1
・砂糖… 大さじ2
・干し椎茸の戻し汁… 200cc

<甘酢れんこん>

・れんこん… 薄くスライスしたもの10枚くらい
・酢… 大さじ2
・砂糖… 大さじ2
・水… 大さじ2
・酒… 少々
・塩… 少々

<その他の具材>

・でんぶ… 適量
・大葉もしくはサニーレタス… 適量

1、型の準備をする

洗ってよく乾かした牛乳パックを切り、クッキングシートを敷いておきます。

2、具材を用意する

・大葉やサニーレタス

大葉やサニーレタスなどお好みの葉物野菜は、洗って食べやすい大きさにカットしておく。

・椎茸の甘辛煮

干し椎茸は水で戻し、薄く切って、鍋に醤油、砂糖、酒、みりん、椎茸の戻し汁を入れ、甘辛く煮ます。

・甘酢れんこん

れんこんは薄くスライスし、酢水(分量外)につけておきます。鍋に、水、酢、砂糖、酒、塩を入れ沸騰させ、薄くスライスしたれんこんを入れ、一煮立ちさせます。軽く煮たれんこんは、冷ましておきましょう。

3、具材が揃ったら、酢飯を5等分にしておく

あらかじめ酢飯を5等分にしておくと詰める際に便利です。

4、牛乳パックに敷き詰めていく

まず、牛乳パックに5等分にした寿司飯、1つを入れ、軽く押しながら平らにする。その上に、椎茸の甘辛煮、でんぶ、大葉、錦糸卵、甘酢れんこんをのせていきましょう。これを繰り返します。最後に上からクッキングシートをのせ、牛乳パックの周りを輪ゴムなどで止めて、さらにその上に重石をのせて30分ほど置いておきましょう。

5、一段ずつ取り分けて完成

30分ほど置いたら、牛乳パックの端を包丁などでカット。一段ずつ取り分けて、牛乳パックで作る岩国寿司の完成です!

山口の華やかな郷土料理、「岩国寿司」

山口の郷土料理「岩国寿司」は、錦糸卵の黄色や、でんぶのピンク、葉物野菜の緑と色とりどりの華やかな押し寿司です。

もともと持ち運びできたり、日持ちする食事として作られたといわれているだけあって、ピクニックやお持たせの料理としてもぴったり。また華やかさもあり、雛祭りやお祝いごとにも重宝しそうです。具材はアレンジも可能ですので、ぜひお試しください。

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構成・文・写真(一部を除く)/松田慶子(京都メディアライン)

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