2024年秋の天文ショー「紫金山・アトラス彗星」特徴と観察のコツとは? 崩壊が始まっているって本当?

2023年1月に初めて発見された新しい彗星「紫金山・アトラス彗星」。2024年10月には再び地球から観察できることになり、2024年の天文ショーのひとつに加わります。そんな紫金山・アトラス彗星とは一体どんなものなのか、特徴や見ごろの時期や場所、観察のコツなどをご紹介します。<上画像はイメージ>

紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)とは?

まずは「紫金山・アトラス彗星」がどんなものか、見ていきましょう。

彗星ってどんな天体?

「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)」とは、ネーミングからもわかるように彗星のひとつです。彗星とは、太陽系のまわりを周る天体のことをいいます。地球は太陽のまわりを周っていて、地球だけでなく火星や土星も同じように太陽のまわりを周っています。太陽系では太陽を中心としてさまざまな天体が周っていて、それらは大きさの順に次のように分類されています。

・惑星
比較的重量のある天体を惑星といいます。太陽系に存在する惑星は、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星、海王星の8つです。

・準惑星
惑星は自身の重力によって、球のような形になります。準惑星は、惑星以外でそのように丸い形になれるだけの質量を有するものを指します。

・小惑星
惑星と準惑星、彗星以外の天体を小惑星と呼びます。特に火星と木星の間にはたくさんの小惑星が帯状に存在し、小惑星帯と呼ばれています。

・彗星
数km〜数十kmほどの大きさの小さな天体を彗星といいます。彗星の8割は氷でできていて、それ以外は二酸化炭素、一酸化炭素、その他のガスや微量の塵からできています。

・太陽系外縁天体
小惑星のほとんどは、火星と木星の間にあるとご紹介しました。太陽系外縁天体は、海王星よりも外側にある天体のことをいいます。冥王星は以前は惑星のひとつと考えられていましたが、国際天文学連合の定義によって、現在では惑星には該当せず太陽系外縁天体とみなされています。

さまざまな大きさの天体が無数に存在する太陽系の中で、彗星はとても小さな天体です。そのため太陽から遠く離れているときは太陽の光が届きにくく、高性能の望遠鏡を使ったとしても観察するのが難しいのです。

また彗星には、太陽に近づくのは一度きりであとは離れていくものと、楕円形の軌道で周期的に太陽に近づくものがあります。よく知られている彗星に「ハレー彗星」がありますが、これは75.32年の周期をもっているものです。

紫金山・アトラス彗星とは

紫金山・アトラス彗星は、2024年9月末から10月始めころに太陽に近づき、太陽の光を受けて明るく見えることが予測されています。そんな紫金山・アトラス彗星の、さらなる特徴を見ていきましょう。

紫金山・アトラス彗星の特徴

2024年4月26日の紫金山・アトラス彗星 Photo by C messier, CC BY 4.0,Wikimedia Commons

紫金山・アトラス彗星は誰が発見したのか、サイズなどの特徴を見ていきましょう。

いつ誰が発見したの?

紫金山・アトラス彗星が発見されたのは、2023年1月9日のことです。中国のツチンシャン(紫金山)天文台が発見しました。

少し後の2023年2月22日、今度は南アフリカのアトラスという望遠鏡でも同じものが確認されました。このことから「紫金山・アトラス彗星」という名前が付けられました。

紫金山・アトラス彗星のサイズ・構造

2023年に発見されたとき、紫金山・アトラス彗星は太陽から約7.7天文単位(地球から太陽までの距離の約7.7倍)離れた場所にありました。

これが2024年9月末には約0.39天文単位(地球から太陽までの距離の約0.39倍)と、水星と同じくらい太陽に近づきます。紫金山・アトラス彗星が大きいサイズの彗星なら、このときかなりの明るさを放つ大彗星になると期待されています。

紫金山・アトラス彗星はなぜ特別?

彗星は、大部分が氷でできているとご紹介しました。彗星が太陽から遠く離れているときは凍り付いていますが、太陽に近づくと太陽の熱によって、彗星を構成している氷などの物質が蒸発し、ガス状になって吹き出します。

さらに太陽に近づくと、太陽からの電磁波やプラズマ波によってそれらのガスが太陽とは反対方向に伸びていき、尾のように見えます。彗星が「ほうき星」と呼ばれるのは、彗星の周囲がぼんやりと見えて尾が伸びているように見えることが理由です。

薄暗い彗星では「ほうき星」が見えることはあまりありませんが、今回の紫金山・アトラス彗星はかなり太陽に接近することになり、美しく長く明るい尾を引くことになると期待されています。

2024年10月、紫金山・アトラス彗星が見ごろ!

彗星の一般的なイメージ

2024年10月に太陽に接近する紫金山・アトラス彗星。どこから、いつ見えるのでしょうか?

大接近!見える場所は?

紫金山・アトラス彗星をもっともよく観察できるのは北半球です。つまり日本全国の各地から観察できるということです。肉眼でも見られるかもしれないと期待されています。

観測に適した日時は?

紫金山・アトラス彗星が太陽にかなり接近するのは2024年9月27日です。ここから数日間ほどは、明け方の東の低い空の位置に紫金山・アトラス彗星が見えるチャンスがあります。

この後、紫金山・アトラス彗星は太陽に近すぎて地球から見えない時期がありますが、10月12日頃から中旬にかけて再び観察できるチャンスがやってきます。このときは、夕方の西の低い空を探してみましょう。観察できる時間が比較的長めですから、この時期がもっとも観察しやすい時期になるかもしれません。夕焼けの空の中を探してみましょう。

10月21日頃になると月が出る時間が遅くなっていくため、夕焼けが終わってから月が出てくるまでの時間にも、紫金山・アトラス彗星を観察できるチャンスが出てくるでしょう。

最接近前に「崩壊」との予測も

上記のように観察のチャンスが期待される紫金山・アトラス彗星ですが、一方で、2024年7月に発表されたアメリカの天文学者ズデネク・セカニナ氏の査読前論文では「太陽に最接近する前に崩壊する」として、彗星の観察が難しいとの見解も出されています。

これは、彗星の明るさの変化から、彗星の本体「核」が激しく分裂し噴き出す塵(ちり)が既に少なくなっていること、また軌道が変化していることなどから、最接近のころには肉眼での観察が難しいとの予測で、果たして実際はどうなるか、多くの天文ファンをやきもきさせています。

参考:サイエンスポータル|科学技術振興機構

紫金山・アトラス彗星観察のコツと準備

紫金山・アトラス彗星を観察するときに必要なものや、コツをチェックしましょう。

彗星観察に必要なもの

肉眼で観察してもよいのですが、双眼鏡や望遠鏡があると、ほうき星の尾までしっかりと見られる可能性があります。あわせて星座早見盤なども準備すれば、一緒に星空の観察も楽しめます。

また、日によって寒さを感じることもある季節です。風邪をひかないように、しっかりと寒さ対策を行っておくのがおすすめです。

家の近くから彗星を楽しむ方法

紫金山・アトラス彗星が空のどの方角に見えるのかは時期によって異なりますから、まずはその方角をチェックしましょう。その方向が開けた場所を探すことが大切です。できるだけ、建物や街の明かりがない場所のほうが観察しやすいでしょう。

紫金山・アトラス彗星を観測するときにあると便利なアイテム

紫金山・アトラス彗星の観測に便利なおすすめアイテムをご紹介します。

星を楽しむ 天体観測のきほん

彗星、流星群、月食、日食などの観測のポイントをまとめた一冊です。道具は不要で肉眼でできる観測から、それぞれの天体や事象に最適なグッズも紹介しています。

ネックピロー

長時間空を見上げているのは、首が疲れるもの。そんなときネックピローがあると、首が楽になります。椅子と首の間にはさむだけのスタイルで、日常使いでも、飛行機や電車、バスなどでも利用できます。

充電式カイロ

充電して繰り返し使えるカイロ。電源を入れるとわずか数秒で高速加熱。低温~高温モードの三段階で温度を調節できます。手で持つのにちょうどいいサイズで、普段から温活にも使えそうです。

2024年秋に期待!紫金山・アトラス彗星を観測しよう

2023年に発見されたばかりの新しい彗星、紫金山・アトラス彗星。2024年9月末にはもっとも太陽に接近します。11月になると徐々に太陽から遠ざかり、11月中旬くらいになると肉眼では見えなくなり、その後2万年以上は太陽のほうには戻ってこないものといわれています。

最接近時には崩壊して観測不可かとのニュースも飛び交うなか、もし観察することができれば感激もひとしおです。親子でぜひ観察にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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文・構成/HugKum編集部

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