単独親権の日本でもできる「共同養育」には利点が多い? 留意点や話し合いを進めるポイントとは

共同親権について国会で審議されていますが、単独親権の日本でも、離婚後も父母が一緒に子どもを育てる「共同養育」の考え方が取り入れられつつあります。子どもや親に利点が多い反面、デメリットについても考えていきます。そのうえで、共同養育の流れや話し合いを進めるポイントを解説します。

共同養育とは?

子どものいる夫婦が別居や離婚をする際、「共同養育」を選択すれば、子ども・同居親・別居親の抱える悩みが解決に向かう可能性があります。日本の親権制度の特徴と、共同養育のメリットについて理解を深めましょう。

離婚後も父母で子どもを育てること

共同養育とは、「離婚後も父母が互いに子育てに関与すること」です。日本では、婚姻中と離婚後の親権が以下のように変わります。

●婚姻中:父親と母親が共同で親権を持つ(共同親権)
●離婚後:父親または母親が親権を持つ(単独親権)

多くの先進国では離婚後の共同親権を認めていますが、日本では単独親権のみが認められています。親権を持たない親は、子どもの教育に関われなかったり、交流の機会が断たれてしまったりするケースが多く、離婚時には親権を巡る対立が生じやすいのがデメリットです。

離婚後の共同親権が認められない日本において、共同養育の考えが取り入れられつつあります。

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共同養育を行うメリット

共同養育は、子どもと親の双方にメリットがあります。子どもにとってのメリットは、離婚の影響やダメージを最小限に抑えられることです。父親と母親の両方から愛情を受けられる上、自分の居場所を二つ確保できます。

近年は、ひとり親家庭における「子どもの孤食(こしょく)」が問題になっています。一人きりでの食事を防ぎ、子どもの健全な成長をサポートできるのも大きなメリットでしょう。

同居親は離婚後に仕事と子育ての両立に悩むケースが多いですが、共同養育を選択すれば、育児の負担が軽減されます。別居親は子どもとの交流が増えるため、養育費などの経済的なサポートをするモチベーションを保てます。

共同養育を選択する前に考えたいこと

共同養育には多くのメリットがありますが、全ての物事がスムーズにいくとは限りません。よい面だけを見ずに、デメリットや問題点も頭に入れておく必要があります。

二重生活による子どもの負担

共同養育を始めると、子どもが定期的に父母の家を行き来するスタイルになるのが一般的です。長期的な二重生活は、時間的・体力的に子どもに負担がかかるのがデメリットです。父母の家が徒歩圏内でなければ、バス代や電車代などの交通費もかさみます。

成長して部活動や勉強が忙しくなると、二重生活を続けるのが困難になる可能性が高く、交流の方法をあらためて考えなければなりません。

子どもが定期的に行き来する点を考慮すると、同居親と別居親の家は遠くないことが望ましいといえます。人によっては、遠方への引っ越しが難しくなったり、転勤で子どもと疎遠になったりするケースも考えられるでしょう。

子育て方針の違いによる父母の対立

共同養育を選択しない場合、親権者が子育て方針を決定できますが、共同養育では父母の話し合いが不可欠です。性格の不一致や考え方の違いが離婚原因だった場合、子育て方針を巡って対立する恐れがあります。

父母の対立はどの家庭にもありますが、離婚に至った親同士は冷静な話し合いや歩み寄りが難しいケースが少なくないようです。父母が争うたびに、子どもの心は深く傷つきます。子育て方針が食い違ったときは、「子どもにとって何がベストか」に立ち返りましょう。

共同養育の進め方とポイント

離婚後の共同親権が認められていない日本では、一人で子どもを育てる父親や母親が多いのが現実です。中には「共同養育を望んでいるけれど、何から手を付けてよいか分からない」という人もいるでしょう。共同養育の進め方とポイントを解説します。

サポート窓口に相談する

共同養育を進めるに当たっては、親同士でさまざまな取り決めをする必要があります。話し合いがスムーズにいくように、まずは地方自治体や民間団体のサポート窓口に相談しましょう。以下は、窓口で受けられるサービスの一例です。

●カウンセリング
●面会交流の支援
●離婚協議のサポート
●共同養育に関する講座
●コミュニティの利用

相談窓口を設けるとともに、「養育プラン作成の手引き」や「養育に関する合意書の見本」を配布している自治体もあります。

冷静に話し合える関係性をつくる

共同養育を選択すると、離婚した後も元配偶者との関わり合いは続きます。受験や進学など、子どものために力を合わせなければいけない場面も多くなるでしょう。

さまざまな取り決めを行う前に、冷静に話し合いができる対等な関係性をつくる必要があります。まずは、「相手に変わってほしい」という思いや期待を手放し、少しずつ歩み寄る努力をしましょう。

離婚後の共同養育において、親同士は必ずしも仲良くする必要はありません。大切なのは、子どものために協力できるかどうかです。

離婚に向けた話し合いが円満に進まないときは、「ADR(裁判外紛争解決手続き)」を利用するのも一つの手です。当事者による自律的解決を目指す手続きで、中立な立場の専門家を介します。

共同養育計画書を作成する

冷静に話し合える関係性を築けた段階で、「共同養育計画書」を作成します。共同養育に関する条件やルールをまとめたもので、離婚後はこの計画書を基に父母が協力します。法律の定めはありませんが、以下のような内容を盛り込むのが一般的です。

●監護者の決定
●養育費の支払い
●学校行事への参加
●面会交流(場所・時間・頻度)
●電話・その他の交流
●国外への連れ去り禁止
●否定的な発言の禁止
●日誌による記録

共同養育計画書は、調停・裁判・公正証書作成の際の資料として使えます。ただし、計画書がなければ離婚届が受理されないわけではありません。

共同養育を知り、子どもにとって最善の選択を

現在、日本の国会では、離婚後の共同親権を認めるか否かの審議が行われています。しかし共同養育であれば、法改正を待つ必要がなく、話し合いで養育の在り方を決められます。

一方で、離婚を考える夫婦は関係性が冷え切っていることが多く、養育に関する取り決めが円滑に進むとは限りません。共同養育を選択した後は、二重生活が子どもの負担になる恐れがあるでしょう。

共同養育のメリット・デメリットを理解した上で、子どもにとって最善の選択をする必要があります。

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構成・文/HugKum編集部

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