ウクライナがロシアによる侵攻を許してしまったのはなぜ?米大統領選の結果次第では、さらなる苦境に…【親子で語る国際問題】

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いま知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、ウクライナがロシアによる侵攻をなぜ許してしまったのか、その理由を紐解いていきます。

米国の大統領選次第でウクライナの立場はさらに苦しく

ロシアによるウクライナ侵攻から今年2月で3年目となりましたが、今日の戦況はウクライナが劣勢に立たされています。3月の大統領選挙で5選を果たしたプーチン大統領は、最近15万人を動員する大統領令に署名し、今後軍事的な攻勢をさらに強めていく方針です。ウクライナのゼレンスキー大統領は、米国からの支援が滞れば我々は戦争に負けるとの発言を繰り返し、これでウクライナへの支援を停止すると豪語するトランプ氏が大統領になれば、ウクライナの立場はいっそう苦しくなります。

メディアや新聞では、「ロシアがウクライナに侵攻した」という視点でこの問題を取り上げることが多いですが、ここでは反対に、「そもそもなぜウクライナはロシアによる侵攻を許してしまったのか」という視点で説明したいと思います。これには2つの理由が考えられます。

抑止力となる核を保有していない

1つは、ウクライナが核を持っていないということです。世界では核廃絶を目指した運動が盛んに行われていますが、米国や中国、ロシアなどの大国は依然として多くの核を保有していて、核を持つことで相手の行動を抑止しようとします。仮にウクライナが核を保有していれば、プーチン大統領もウクライナから核で攻撃されると恐れがあると判断し、軍事侵攻という決断はできなかった可能性があります。

NATOに加盟していない

そして、もう1つの方が決定的な理由と言えるかも知れません。それは、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないという事実です。NATOとは1949年4月に創設された多国間軍事同盟で、米国とカナダの北米2カ国と欧州30カ国(トルコも含む)の32カ国が加盟しています。ロシアによる侵攻以降、フィンランドとスウェーデンが新たに加盟しました。NATO条約の第5条では、「1加盟国に対する攻撃は全加盟国に対する攻撃とみなし、侵略国家に対して共同であらゆる措置を取る」と明記されており、これがロシアに対して大きな抑止力として機能してきました。仮にロシアが国境を接するフィンランドに侵攻すれば、フィンランドだけでなく32カ国が共同でロシアに対抗措置を取ることになりますので、ロシアとしても迂闊な行動に出ることはできません。NATO VS ロシアではそもそもロシアに勝機はありません。

フィンランドとスウェーデンが新たに加盟

仮にウクライナがNATOに加盟していれば、NATOが共同でロシアに対抗することになりますので、プーチン大統領はそもそもウクライナへの侵攻を考えなかった可能性が高いでしょう。ウクライナ周辺のポーランドやルーマニア、バルト三国など旧ソ連圏の国々の多くはNATOに加盟していますので、ロシアはそもそも侵攻がしにくいのです。この2つが、ウクライナがロシアの侵攻を許した決定的な理由と言えるでしょう。

この記事のPOINT

  • ①現状劣勢のウクライナ。米国大統領選次第でさらに苦しい立場に。

    • ②ウクライナは抑止力となる核を保有しておらず、またNATO(北大西洋条約機構)にも加盟していないため、ロシアにとって攻撃しやすい状況だった。

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記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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