「絵がうまいだけが大切ではない」 世界で注目される画家 井田幸昌さんのワークショップは子どもの感性を刺激!【HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館】が開催中

子どもの可能性を伸ばすために、大人は何をしてあげられるのか? それは、義務教育の範疇では得られない体験のきっかけをあげることかもしれません。実は大きなイベントでなくても、地元の自治体や施設では子どもが参加できるワークショップを実施しています。

今回伺ったのは、千葉県立美術館で実施されたワークショップ。世界的にも注目されている画家の井田 幸昌さんなど著名アーティストが子どもの生の才能に向き合っています。自由に参加できる作家プロデュースのワークショップコーナーもあります。

どんなワークショップであったかとともに、井田さんにもお話を伺ってきました。

会期中の参加で、子どもの作品を美術館に展示! ワークショップを実施中

千葉県立美術館で開催中の展覧会「HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館」では、ZOZOTOWN上のラグジュアリー&デザイナーズゾーン「ZOZOVILLA」のトップページに掲載するキービジュアルとして使用した、井田幸昌、ロッカクアヤコ、Hi-dutch、矢入幸一、長場雄のアート5作品を展示。

千葉県立美術館は、千葉県のJR千葉みなと駅にあり、すぐ近くには海があります。
井田幸昌「Monkey puzzle」(C)Yukimasa Ida

また、千葉県立美術館が所蔵するコレクションから、コローやミレー、クールベなどの作品や、浅井忠、石井林響の県指定有形文化財に指定された作品なども展示しています。

会期中には、「新しい価値をソウゾウする」をテーマに、子どもたちが作家とともに作品の創作活動に挑戦できるワークショップを開催。講師にはアーティストの井田幸昌さん、Hi-dutchさん、矢入幸一さんが参加しています。

ワークショップは事前申し込みが必要で、すでに満員となっていますが、常設の体験コンテンツとして来場者が自由に創作活動を楽しめるセルフワークショップのコーナーも設置しています。

会場内のセルフワークショップのコーナー。

制作した作品は美術館内に展示されるので、ぜひセルフワークショップに参加してみてはいかがでしょうか。

『二度とない「いま」を表現しよう』をテーマに描かれたワークショップの作品。
海の生き物を作ってみるワークショップでは、Hi-dutchさんの作品の周りに子どもたちが作った海の生き物を仲間にできます。

井田幸昌さんのワークショップのテーマは「自画像を描く」

アーティストの井田幸昌さんによるワークショップでは「自画像を描く」ことを実施。50人ごとに2回行われたワークショップには、最も遠いところで北海道から参加した人もいました。

井田さんによると、自画像を描くということは古くはレオナルド・ダ・ヴィンチ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホなど、著名なアーティストもみんな挑んできたモチーフだそう。

今回は子どもたちが挑戦するにあたり、各自で鏡を持参。その鏡を使っていまの自分の顔を描くのですが、ルールはなく、全身でも頭の部分でも自由に描いてほしい。あとは、用意されている絵の具から7色以上をたっぷりと出して、そこから描き始めるというアドバイスがありました。

井田さんの説明を聞く小学生の皆さん。
みんな井田さんの話を真剣に聞いています。

中でも井田さんがよく声をかけていたのが「観察する」ということ。描く時間と同じぐらい、鏡を通した自分自身を観察すること。そして自分と一緒に映る「世界」をも描いてほしい。これは「青色だ」というように観念的に世界を見るのではなく、新しい気づきを自分の意思で得る。1日じゃ身につかないことだけど、そんなきっかけになればいいなと思っているそうです。

ワークショップ終了後にはみんなで作品を飾って記念撮影。
参加者1人1人と井田さんが写真を撮っていただいて、みんな大興奮でした。

井田さん「子どもたちに成功体験を積み重ねてほしい」

子どもたちとのワークショップ後に、井田さんに感想を伺いました。

―子どもたちの作品を観ていかがでしたか?

井田さん:子どもたちは本当に天才です。素晴らしいしかないですし、みんな集中して描いていました。作品がどうとかいうことではなく、まずはやったことが大事で、それを積み重ねてほしい。そして親は理想を押し付けず、子どものやりたいことをなるべく肯定してあげてください。

絵でいうと、やはり日本では『うまい子』というと似せて描ける子がほめられがちですが、別にそんなことはなくて。きれいな色を塗れる子、大胆に描ける子、それぞれいいところがあります。

―自画像をテーマにしたのはなぜですか?

井田さん:大人になっていく過程で、いろいろな環境のなかで世界を観察して勉強していきます。自分の顔は一生付き合う自分の原点。画家である僕が何かを伝えるなかで一番伝わりやすいものは何かな?って考えたなかで、自分の顔を描くことだなと。そのため、今日は観察することを何度も伝えていました。

―なかでも「鏡を見たときに自分の後ろに世界があるでしょ」とおっしゃっていたのが印象的でした。

井田さん:鏡って情報が詰まっている。ただ顔を見ろっていったら、だいたい自分の顔などをフォーカスして見がちです。でも、観念で見ると、例えばいま光が落ちてきて、背景の色はこうで、いろんな情景が実はある。そういうことをちょっとわかってほしかった。鏡の中の世界というのは写しなので、それをよく見てねってことを言っていました。子どもたちにそれが通じているかはわからないですが、いつかそういうことを言っていた大人がいたなっていつか気づいてくれればいいなと思っています。

子どもたちに語り掛ける井田さん。

-井田さんが作品を作るようになったきっかけはありますか?

井田さん:もちろん自分自身の情熱もありますが、うーん、やはりおふくろですかね。僕のことを天才、天才って、何をやってもうまくいくからって。親から褒められることは、子どもにとっての一番身近な成功体験。それの集積で愛を感じて生きていくし、大事なことだと思います

会期中はセルフワークショップは随時実施しており、自由に参加できます。また、会場を訪れなくても、自宅で鏡を同じように用意して挑戦してみるのもいいかもしれませんね。

千葉県立美術館開館50周年記念 『HELLO! コレクション ZOZO×千葉県立美術館』開催概要

会期:2024年4月6日(土)~5月19日(日)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
会場:第1・2・7展示室
時間:午前9時~午後4時30分(入場は午後4時まで)
料金:一般300円(240円) 高大生150円(120円)
*( )内は20名以上の団体料金
*中学生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方と介護者1名は無料

井田 幸昌(いだ ゆきまさ・アーティスト)

画家、現代美術家。1990年鳥取県生まれ。2019年東京藝術大学大学院油画修了。2016年現代芸術振興財団主催の「CAF賞」にて審査員特別賞受賞。2017年には世界的な作家とともにレオナルド・ディカプリオ財団主催のチャリティオークションに史上最年少参加2021年にはDIORとのコラボレーションを発表するなど多角的に活動。2022年鳥取県文化奨励賞受賞。2023年には個展「Panta Rhei|パンタ・レイ-世界が存在する限り」が鳥取、京都を巡回するなど国際的に注目を集める。主な個展に『Now is Gone』(パリ 2022)、『Here and Now』(シカゴ 2021)『King of limbs』(東京 2020)、『Rhapsody』(ロンドン 2019)など。作品集に『YUKIMASAIDA:Crystallization』(美術出版社)、『YUKIMASAIDA PANTA RHEI』(小学館)
がある。

こちらの記事もおすすめ

【ちひろ美術館・東京】おもしろ鏡やおもちゃ、子どもがハマる仕掛けがたっぷり!美術館デビューにぴったりなその魅力を徹底レポート
ちひろ美術館とは? ちひろ美術館・東京は、絵本画家・いわさきちひろ(1918〜74)の住居跡に建てられた美術館です。いわさきちひろは、生涯...

文・構成/北本祐子

編集部おすすめ

関連記事