「大器晩成」は悪い意味だった? 語源、使い方、類語、対義語、英語表現までを一挙にご紹介!

「あなたはきっと『大器晩成』型ですね」といった使い方がされるこの言葉。どんな意味を持っているか、正しく理解できていますか? 他の言葉で言い換えることができますか? 今回は、『大器晩成』の意味や語源、使い方、関連語までを一挙にご紹介します。

「大器晩成」とは?

まずは、『大器晩成』の読み方や意味を押さえておきましょう。

読み方と意味

この言葉は、『大器晩成』と書いて「たいきばんせい」と読みます。「真に偉大な人は、若い頃は目立たず、遅れて大成する」という意味を持つ言葉です。

『大器』は、大きな容器という意味の他に、多くの才能や器量を持つ人物を表します。そして『晩成』は、晩年になってから成功することや、遅れて完成する、といった意味。『大器晩成』がこの2つの言葉の組み合わせであることを念頭に置いておくと、より覚えやすくなるのではないでしょうか。

「大器晩成」はポジティブなニュアンスで使われる言葉。ただし、由来には諸説あり

由来となっているのは、中国・春秋時代の哲学者である老子が残した書『老子道徳経』。この書には、「大方無隅、大器晩成」という一文が登場します。

この一文は「大方には隅無く、大器は晩成し、大音は声希く、大象は形無し」と読むことができ、現代語としては「大きな四角形の中にいると、まるで四隅がないように思えて、それが四角形であることがわからない。大きな器は完成が遅く、それがどんな器になるのか分からない」と訳すことができます。この言葉が、のちにポジティブな意味合いの四字熟語として広まったという説が有力とされています。

ただし、『老子道徳経』における「大方無隅、大器晩成」の一文を、「大きすぎるものは完成しない」とする解釈も存在するようです。この解釈の場合、元々『大器晩成』はネガティブな意味合いで用いられ、のちに『三国魏志』(中国の歴史書)における人を励ますシーンでポジティブな意味で使われたことから、現在のようなニュアンスで使われるようになったとされています。

使い方を例文でチェック!

ここからは『大器晩成』の使い方を例文を通して押さえていきましょう。

1:学生時代は努力が実らなかった彼だが、社会に出てから躍進した。まさに【大器晩成】だ。

こちらは、「真に偉大な人は、若い頃は目立たず、遅れて大成する」という意味を持つ『大器晩成』の、オーソドックスな例文。若い頃にはなかなか努力が実らなくとも、長く続けているうちにその努力が実った人などに対して使うことができます。

2:今はまだ成果が出せていないが、【大器晩成】を目指して日々の努力を続けていきたい。

『大器晩成』は、座右の銘や格言のような使い方もされる言葉です。若くしてすぐには成果が出なくとも、将来的に実現することを見越して、長期的に努力を続けたい場合などに掲げられます。

3:彼は自分を【大器晩成】型だと言い訳して、怠けようとしているように見える。

『大器晩成』は基本的にはポジティブなニュアンスで用いられる言葉ですが、場合によっては、このような使い方をされることも。『大器晩成』型だから「すぐに成果が出ないのは仕方がない」と驕ってしまうのは良くないですよね。

類語や言い換え表現は?

では、『大器晩成』を言い換えたい場合は、どのような言葉が使えるのでしょうか。ここでは、『大器晩成』に近い意味を持つ類語をご紹介していきます。

1:大才晩成(たいさいばんせい)/大本晩成(たいほんばんせい)

『大器晩成』と同様の意味を持つ言葉として、まず『大才晩成』と『大本晩成』が挙げられます。

『大才晩成』の「大才」とは、優れた才能のこと。また、『大本晩成』の「大本」とは、ものごとの根となるものを指します。「大才」や「大本」が「晩成」と組み合わさることから、このどちらもが「優れた人は遅れて大成する」といった意味を持ちます。

どちらもそのまま『大器晩成』の言い換え表現として使うことができますが、『大器晩成』のほうがメジャーな表現ではあります。

2:大きい薬缶は沸きが遅い(おおきいやかんはわきがおそい)

『大きい薬缶は沸きが遅い』とは、「大人物は大成するのに時間がかかる」ということを、大きな薬缶(やかん)でお湯を沸かすと時間がかかることに喩えたことわざです。

こちらも「偉大な人は、遅れて大成する」という意味の『大器晩成』の類語と言えます。

3: 遅咲き(おそざき)

『遅咲き』とは、「他より時期が遅れて花が咲くこと」を指す言葉ですが、「成功するのに時間がかかる(かかった)こと・ひと」を指す際にも用いられます。

ポジティブな意味合いで使われることが多く、『大器晩成』と似たニュアンスを持つ類語と言えますが、こちらは格言的な使われ方はあまりしない点に注意しましょう。

対義語は?

『大器晩成』には、明確に対となる対義語が存在しません。ここでは、反対に近い意味を持つ言葉をさがしてお伝えします。

1:啄木鳥の子は卵から頷く(きつつきのこはたまごからうなずく)

『啄木鳥の子は卵から頷く』とは、「生まれながら、将来を予見させる素質を持っていること」を指すことわざです。「頷くようにして器用に木を突くキツツキの子は、卵の中から頷いている」とキツツキに喩えている点が面白い表現ですね。

「偉大な人は、若い頃には目立たず遅れて大成する」という意味を持つ『大器晩成』とは反対の意味を持つ表現と言えるのではないでしょうか。

2:栴檀は双葉より芳し(せんだんはふたばよりかんばし)

『栴檀は双葉より芳し』とは、「大成する人は、幼いときから優れていること」を意味することわざです。栴檀(せんだん)とは、良い香りを放つ白檀(びゃくだん)という木のこと。「成長してから芳しい香りを放つ白檀は、双葉の頃(発芽した時)からすでに良い香りがする」と、白檀を喩えに挙げた言葉です。

こちらもまた、若いときから出来上がっているという意味で、『大器晩成』とは反対の意味を持つ言葉として覚えておきましょう。

英語表現は?

では、『大器晩成』は英語ではどのように表現できるのでしょうか。最後に、『大器晩成』がもつ意味を言い表せる英語表現をご紹介します。

1:late bloomer

“late bloomer”とは、“late”=「遅い」と“bloom”=「花が咲く」が組み合わさって、『遅咲き』という意味を持つ英語表現です。

“He is a late bloomer.(彼は遅咲きです)”のように使うことができます。

2:great talents mature late

“great talents mature late”とは、「大きな才能はゆっくり成熟する」という意味の英語の慣用句です。「偉大な才能のある人は、遅れて大成する」ことを言い表した『大器晩成』の英語表現として使うことができます。

こちらも『大器晩成』と同様に、格言的なニュアンスで用いられることが多いようです。

座右の銘として胸に留めておきたい言葉

今回は、『大器晩成』の意味や語源、関連語をご紹介してきました。長いこと努力を重ねていても、なかなか芽が出ないこともあります。そんな時は、この『大器晩成』という言葉が心の支えになってくれるかもしれません。座右の銘として、ぜひ胸に留めておいてくださいね。

あなたにはこちらもおすすめ

「釈迦に説法」は他のことわざとの混同注意! 意味や例文、関連語まで一挙ご紹介!
「釈迦に説法」とは? まずは、この言葉の読み方や意味、語源を押さえておきましょう。 読み方と意味 この言葉は、『釈迦に説法』と書いて「...

文・構成/羽吹理美

編集部おすすめ

関連記事