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Q.入学後、張り切って学校に通っていたのに急に行き渋るように。どうしたら?
4月に入学し張り切って小学校に通っていましたが、連休が明けると急に学校に行きたがらなくなりました。
特にはっきりした理由はなさそうで、毎朝はげましながら学校に向かわせていますが、以前のように生き生きと学校に行ってほしいなと思ってしまいます。
(6歳の男の子ママ)
A.頑張る気持ちがぷつんとしてしまう季節。コミュニケーションとリラックスを意識した絵本を
学校が始まってしばらくはお子さんも気を張って頑張っていたと思いますが、GWで気持ちが途切れてしまう……そんな季節ですよね。大人でも「五月病」になりますし、そろそろ疲れも出てきます。なのに新しいクラスや先生、まだ仲良くなっていないお友達……などなど、新しい環境にはまだ慣れてはいません。私の周りでも、真面目で完璧主義な子ほどぐったりしています。
ただ、子どもはそういったもやーっとした状況をなかなか説明できませんし、ママパパも我が子が何に疲れているのか、つかみきれませんよね。
ですので、まずは「読み聞かせ」という親子時間を確保しつつ、その中での2ステップでお子さんの疲れやお悩みを探って言語化していってみてはいかがでしょうか?
【疲れてしまったお子さんへの読み聞かせポイント】
1.小学校生活、園生活を舞台にした絵本を一緒に読んでみましょう
2.読んで心強い絵本、ほっとできる絵本を意識的に選んでみましょう
1.小学校生活、園生活を舞台にした絵本を一緒に読んでみよう!
まずは、お子さんが何に疲れてしまっているのか、小学校生活、園生活を舞台にした絵本を一緒に読んでみましょう!
今の子の学校生活は、パパママが思っているものとはいろいろと違う点もあるかもしれません。会話の中で「うちの子は、何に引っかかりがあるのかな」とパパママも一緒に考えてみるきっかけにしてはいかがでしょうか?
それに、自分の気持ちというものは大人だって言語化するのが難しいものです。絵本を仲立ちに、心のもやもやは何なのだろう? となんとなーく話してみましょう。もちろん原因を追究する必要はありません。あれやこれや話すことで、お子さんが「わたしって、こういう気持ちだったのかも」と輪郭をたどる手がかりができれば、気持ちを前に進めるきっかけになるはずです。
そんな小学校生活、園生活を舞台にした絵本をいくつかご紹介します。
『ぞうくんはいちねんせい』(ながしまひろみ アリス館)
主人公は、ぞうの男の子“ぞうくん”。今日から小学一年生。ぞうくんも、おうちを出るまでは元気に「いってきまーす!」のはずだったのですが、「ひとりぼっちになったらどうしよう」「せんせいってこわいのかな」「べんきょうむずかしいかな」などなど、心配で押しつぶされそうになっています。
そんな新一年生のぞうくんに、「小学校ってこんなところだよ。思ったほどこわいところじゃないよ」と伝えてくれる、やさしい絵本です。
読み聞かせしながら「こんなときってあるの?」などと自然に学校についてお話しするきっかけとなりますよ。
『えらいこっちゃのようちえん』(文/かさいまり 絵/ゆーちみえこ アリス館)
こちらはもっと小さな、3歳で幼稚園に入った男の子のお話です。園バスに乗るのがいやで逃げたら捕まり“えらいこっちゃ”。おトイレを失敗して“えらいこっちゃ”。お弁当を食べている間に疲れて眠ってしまい“えらいこっちゃ”、という幼稚園のえらいこっちゃな毎日を描いてます。
3歳といったら、言語化どころか何で泣いていて何がいやなのかすら本人もわかっていない状況ですよね。私も園のお迎えのとき、どうしても靴を履きたくなくて泣き続ける我が子に耐えかねて、裸足のまんま「なんじゃこりゃ」と思いながら帰った記憶があります。
とにかく環境が変わるごとに「イヤー!」となる時期ですが、我が子がどういう時にイヤになるのかちょっと聞いてみるきっかけになりますし、「うちだけじゃないのよね」とパパママをちょっと励ましてもくれる絵本です。
2.読んで心強い絵本、ほっとできる絵本を意識的に選んでみましょう!
つぎに「今どんな状況なのかな、何に引っかかりがあるのかな」と、親子でお話ししたことをふまえて、「みんなが見守っていてくれるからね」「無理しなくていいんだよ」というメッセージのある絵本を読んでみてください。
気持ちが切れてエネルギーがなくなってしまっているお子さんに、ゆっくりと語りかけてくれる絵本をご紹介します。
『まよなかかいぎ』(浜田桂子 理論社)
小学校生活を頑張っているゆうきくんと、それを見守って励まし続けている「ゆうきくんの学用品」のお話です。
ゆうきくんがぐっすり眠っていると、ランドセルがパランと開き、筆箱、ノート、したじき、クレヨン、カスタネットなど、ゆうきくんの学用品たちがずらりと出てきました。みんなが輪になり始まったのは「まよなかかいぎ」。いつもゆうきくんと一緒にいて応援している学用品たちが、ゆうきくんの成長と課題について話し合うのです。
いつも消しゴムを使わずぐちゃぐちゃの字を書いていたゆうきくんが、消しゴムを使うようになった! 足で叩くなどカスタネットでふざけてばかりだったゆうきくんが、手でリズム通りに叩くようになった! というように、ゆうきくんの成長を言い合ってはみんなうれし泣き。本人にとっては、ただ学校に通っているだけなのにと、くすぐったい気持ちかもしれませんが、こんなに本気で見守り喜んでくれる仲間がいるなんてと思うと、学校生活がちょっと心強くなってくる絵本です。
『つるかめ つるかめ』(文/中脇初枝 絵/あずみ虫 福音館書店)
子どもが大変そう、ずっとそばについていてあげたい、そう思っていてもいずれ一人立ちはしなければいけません。無理する必要はありませんが、いやなことからいつも逃げられるわけではありません。そんなときには、子どもたちを勇気づける魔法の言葉を教えてあげましょう。
「つるかめ つるかめ」とは、いやなことがあったときに唱えることで、いやな気持ちを吹き飛ばす縁起直しのおまじないのこと。ほかにも「くわばら くわばら」は雷が落ちてこないように祈る雷除けのおまじない、など古くから伝わる“おまじない”をこの絵本では教えてくれます。
言葉だけ?と思うかもしれませんが、言葉には意外と強い力があるものです。「頑張りすぎて疲れてしまった……」という子に「もっと頑張れ」なんて言えませんよね。そんなとき、「もう頑張らなくていいよ。おまじないの力があるからね」と、ゆだねさせてあげることで、元気づけてあげることができます。
いやなことがあったときには「つるかめつるかめ」、頑張って何かしようという時には「だいじょうぶ」と一緒に唱えてみてください。
『ちょっとだけのんびりするひ』(文/ウェンディ・メドゥール 絵/ダニエル・イグヌス 訳/やまもとみき 化学同人)
こちらは、お子さんにもさることながら、パパママにぜひ読んでほしい絵本です。
ティシャは学校に行く前に、舞い散る花びらを追いかけるのに夢中で「いそいで! ちこくしちゃう」と怒られてしまいます。バスの運転手さんにも「いそいで!」、教室で本を読んでいても「いそいで! あさのかいに おくれますよ」と「いそいでいそいで!」の毎日。お迎えの時まで「いそぎましょ。バスにのりおくれちゃう」とママに言われて泣きそうです。
「ちょっとだけ、のんびりしたいな」ティシャが言うと、ママはゆっくりお散歩をして帰ることにしました。
今の子は、とにかく毎日忙しく過ごしています。頑張っていろいろなことをこなしているうちに疲れもたまっていくことでしょう。日常のルーティンから外れることはちょっと怖くもありますが、たまには外れてみてもいい、こんな日だって必要だよね、と「ゆっくり」の大切さを伝えてくれる絵本です。
「ゆっくり」を意識してすごしましょう
この時期は、本当にみんな疲れが出てきます。入園入学直後の子たちだけでなく学年が上がった子たちも、急にやることが増えたり授業時間も増えたりしていますので要注意です。単純に負荷がかかりすぎている場合も多いので、先生に「しばらく宿題は休ませてください」などなど、相談してみましょう。思った以上に柔軟に対応してくれますし、新学期中は先生のほうから「無理はさせないでくださいね」と言われることもあります。
読み聞かせも、お疲れの時期としての絵本をご紹介しましたが、本当に疲れてしまっていたら読み聞かせだって無理することはありません。ひたすらゆっくりリラックスして親子でだらっとするのもありです。悩みや疲れの言語化はその次の段階だと思うんですよね。
まず体と心を休め、その次に親子で話し合うにしても、面と向かって「どうして? なんで?」と聞くよりは、絵本を間に挟みながら雑談すると会話しやすいです。それを手がかりに、あせらず「だいじょうぶ」と言ってあげてみてください。
「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」を1話から読む!
読み聞かせの時間を作れないのは私の要領が悪いせいですか?新連載【育児の悩みは絵本で解決】vol.1