「付け焼き刃」の何が悪い?「つけやいば」は間違い? 例文や言い換え、対義語、英語表現などをまるっと解説

「その場しのぎで身につけた知識や技術」を意味する『付け焼き刃』という言葉をご存じですか? 今回は、『付け焼き刃』の意味や語源、使い方、類語、対義語、英語表現までを一挙にご紹介いたします。

「付け焼き刃」とは? 「つけやいば」は読み間違い

まずは、この言葉の読み方と意味、語源を押さえておきましょう。

読み方と意味

この言葉は『付け焼き刃』と書いて、「つけやきば」と読みます。「一時的な間に合わせに、急いで覚えたり身につけたりした技術や知識」を、切れそうに見えて実際は脆く切れない刀に喩えた言葉です。

「つけやいば」と読まれることがありますが、これは読み間違いなので注意しましょう。

由来・語源

先述したとおり、『付け焼き刃』は日本刀に関する言葉です。切れない刀の間にあわせに、はがねの焼き刃を付け足したもののすぐに折れてしまって、結局のところ役に立たなかったことから、この表現が生まれたと考えられています。

短い期間で身につけた浅い知識や技術を揶揄したり、戒めたりする言葉として使われるようになりました。

ことわざ 「付け焼き刃はなまり易い」として使われることも

『付け焼き刃』はそのままで使われることもありますが、『付け焼き刃はなまり易い』ということわざとして使われることもあります。

『付け焼き刃』が「その場しのぎの技術や知識」であることに対して、『付け焼き刃はなまり易い』は「その場しのぎの技術や知識はすぐにぼろが出ること」を意味します。

使い方を例文でチェック!

では、実際には『付け焼き刃』は、どのような会話や文章の中で使われるのでしょうか。例文を通してチェックしていきましょう。

1:今日発表した知識は【付け焼き刃】に過ぎないので、明日にはもう忘れてしまっているだろう。

テストや発表のために、その場しのぎで知識や教養を頭に叩き込むことってありますよね。そのような知識は、すぐに忘れてしまうほど、記憶として脆く儚い場合が大半ではないでしょうか。このようなシチュエーションで『付け焼き刃』は使うことができます。

2:【付け焼き刃】の知識で取得した資格に何の意味があるんだろう?

こちらもまた、「その場しのぎの知識や教養」の意味合いで『付け焼き刃』を用いた例文です。『付け焼き刃の知識』『付け焼き刃の教養』といった言い回しも頻出するので覚えておきましょう。

3:【付け焼き刃】の知識で受験に合格してしまった。入学後の授業についていけるのか不安だ。

短期間に頭に詰め込んだ知識は、自分の「実力」と呼べるほどにはしっかりと身についていないかもしれません。このような、その場しのぎで身についていない知識のことを『付け焼き刃』と言うことができます。

類語や言い換え表現は?

そんな『付け焼き刃』は、どのような言葉に言い換えることができるのでしょうか。近い意味を持つ類語をご紹介します。

1:一夜漬け(いちやづけ)

『一夜漬け』とは、「試験の前日などに徹夜で勉強する勉強法」を意味する言葉です。試験前夜の短期間に、一時しのぎ的に知識を頭に詰め込むことから、『一夜漬けの知識』のように形を変えれば『付け焼き刃』の言い換え表現としても使うことができそうです。

ただし、『一夜漬け』は資格試験や学校の試験などにシチュエーションが限られる点に注意しましょう。

2:間に合わせ(まにあわせ)

『間に合わせ』とは、「その場をしのぐこと」「代わりの物でその場の役に立てること」を意味する言葉です。こちらも『間に合わせの知識』のように補足すれば、『付け焼き刃』の言い換え表現に適しています。

3:にわか仕込み(にわかじこみ)

『にわか仕込み』には、「間に合わせるために急いで覚え込むこと、もしくは覚え込んだ物事」を意味する言葉です。こちらは形を変えないままでも、『付け焼き刃』の言い換え表現として使うことができそうですね。

対義語は?

では、『付け焼き刃』とは反対の意味を伝えたい場合、どのような言葉が使えるのでしょうか。『付け焼き刃』の反対に近い言葉を集めてみました。

1:用意周到(よういしゅうとう)

『用意周到』は、「準備が隅々まで行き届いて、万全であること」を意味する四字熟語です。『付け焼き刃』が持つ「知識・教養」の意味合いは薄まりますが、「その場しのぎな間に合わせ」を指している点において、近い表現と言えそうです。

2:円木警枕(えんぼくけいちん)

『円木警枕』とは、「苦労して懸命に勉学に力を尽くすこと」を、「物事に精励する際に、寝る間も惜しんで“丸木の枕(眠ると転んで目が覚めることから)”を使ったこと」に喩えた四字熟語です。勉学に力を尽くすわけではなく、その場しのぎで頭に詰め込んだ知識を指す『付け焼き刃』とは反対の言葉と言えるのではないでしょうか。

3:点滴穿石(てんてきせんせき)

『点滴穿石』とは、「どんなに小さな努力でも、積み重ねていけばいつかは大きなことを達成する力となること」を、「どんなに小さな水滴でも一点に落ち続ければ、石に穴を開けることができること」に喩えた言葉です。その場しのぎでことを済ませようとするのではなく、コツコツとした小さな努力を重んじている点において、『付け焼き刃』とは反対の言葉として挙げられます。

英語表現は?

最後に、『付け焼き刃』を英語で伝えたい場合に使える英語表現も押さえておきましょう。

1:borrowed knowledge/wisdom

“borrowed knowledge/wisdom”とは、「借り物の知識/教養」と直訳できる表現です。その場しのぎのかりそめの知識や教養をこのように表現することから、『付け焼き刃』の英語表現としても知られています。

2:a thin veneer of〜

“a thin veneer of〜”とは、「うわべだけのもの」という意味を「薄い板」に喩えた英語表現です。“a thin veneer of knowledge”とすれば「うわべだけの知識」というニュアンスになり、『付け焼き刃』の英語表現として使うことができます。

『付け焼き刃』にならないよう、コツコツと努力を重ねよう

今回は、『付け焼き刃』の意味や使い方、語源、関連語までをまるっとお伝えしてきました。学校のテストや資格の試験、受験等において、多くの人が『付け焼き刃』に頼らざるを得ない状況に一度は陥ったことがあるのではないでしょうか。

最後まで諦めないことは大切なことですが、テストや試験は点数を獲ることよりも、コツコツと努力を重ねた経験や、知識の定着にこそ意義があるもの。『付け焼き刃』にならないよう、日々の努力は怠らないようにしていきたいですね。

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文・構成/羽吹理美

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