自由研究が塗り替えた新説!「セミの命は1週間」の常識をくつがえした中学生の執念がすごい〈ゆーまん博士の最新科学CatchUP〉

パパママの時代の常識はもう古い!? 科学の常識は日々更新されています。親子で共有しておきたい最新サイエンスを「ゆーまん博士」のコミカル漫画とともに、しっかり上書きしておきましょう!

セミが1週間で死ぬの? 死なないの?

セミは何年も土の中で暮らし、成虫になるとたった1週間で死んでしまう……切ないセミの一生ですが、2016年、高知県の中学3年生だった植松蒼さんが「ちょっと待った!」。植松さんはアブラゼミが最長で32日間も生きていることを突き止めたのです!

なんとセミが1週間で死ぬというのは間違いでした。日本中の人が何十年、もしかしたら何百年何千年も信じていた「セミの寿命は1週間」の常識をたった1人の中学生がひっくり返したのです。

小学1年生から自由研究はセミ一筋だった植松さん。素晴らしい探求心と科学する心ですね。

ゆーまん博士の「説明しよう!」

常識を疑えとよく言いますが、言うのは簡単。誰も疑わないから常識なんです。

よく子ども向けの科学の本に、小さな子どもがお母さんに「どうして空は青いの?」と聞いている絵が描かれています。描かれていますけど……そんなこと、疑問に思います?

空が青いのを疑ったことがある人!  手を上げてください!  ほらね。誰もいな……あ、いた。

子どもの時に不思議だったのは、「みんなチューイングガムで風船作れるのに僕だけできないのなんで?」とか、「大人が超苦いビールをおいしそうに飲むのは不思議」とか、もっと身近で生活感あふれることだったりしませんか?

空が青いことを疑問に思う子どもはいない!  と私は長らく思っていました。大人が作った、いかにもな疑問だと。でっち上げだと。

世の中広い。東京大学で天文学を専門にしている女の子に、子どもの頃のことを聞いたら、「空が青いのって不思議じゃありませんでした?」と言われました。

その時の私は、ゾウを見た江戸時代の人みたいな顔をしていたと思います。いたのか、空が青いと不思議に思う子ども!  私の常識が崩れた瞬間でした。

子どもが疑問に思うことは千差万別

植松蒼さんが小学校1年生の自由研究で調べたのは「4種類のセミの鳴く時間の違い」でした。信じられない。小学校1年生でセミが種類によって鳴く時間が違うかどうかを調べようと思いますか?

植松さんは2年生の時にセミのオスとメスのどちらが先に成虫になるのかを調べ、小学校4年生の時には冷蔵庫に5時間入れて、仮死状態になったセミがどのくらいで目を覚ますのかを調べたのだそうです。

電車でセミを運ぶ必要があり、電車の中でセミが鳴かないように冷やして仮死状態にすることを思いついたそうです。そして電車に乗っている間、仮死状態のままで運べるかどうか、目覚めるまでの時間を調べた……天才かよ。

そんな植松さんが中学3年生の時に調べたのが、「セミは本当に1週間で死んでしまうのか?

セミのことを調べまくってきた植松さんだからこそ、セミの寿命は1週間という常識に疑問に思ったのだと思います。

セミの寿命をどうやって調べたらいいと思います? 少し考えてみてください。

羽化したセミは、地上ではわずか1週間で死ぬといわれてきたが…

植松さんはセミを捕まえて日付をマジックでセミに書いて離し、しばらくしてセミを捕まえて生きているかどうかを確認するという地道な作業を繰り返しました。日付を入れたセミの数はなんと863匹!  そのうち15匹を再び捕まえることができたそうです。

その結果、アブラゼミ32日、ツクツクボウシ26日、クマゼミ15日目に捕獲成功。いずれも1週間どころか2週間~1カ月でした

セミの本当の寿命はわかりません。しかし少なくともセミの寿命が1週間という常識はここでひっくり返ったのです。

現在は大学生の植松さん。大学では海洋生物の研究をされているそうです。植松さんの偉大なる好奇心に幸多からんことを。

ゆーまん博士のワンポイント

●セミの成虫は最低でも2週間~1カ月生きる

●セミは冷蔵庫で仮死状態にできる

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構成・文/川口友万 漫画/まめこ

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