「大和撫子」とは?
まずは、この言葉の意味や読み方、語源を押さえておきましょう。
読み方と意味
この言葉は『大和撫子』と書いて「やまとなでしこ」と読みます。日本の女性の外見的・内面的な美しさを讃える意味で使われる言葉です。
由来・語源
『大和撫子』という言葉の由来は、日本を原産とする花・「カワラナデシコ」の「ヤマトナデシコ」という別称にあります。これは、中国(唐)を原産とする「カラナデシコ(唐撫子)」と対照させて、日本特有のものであることを意味する「大和」が付けられた呼び方です。
ピンクや紫の花で、花言葉としては「純愛・無邪気・思慕・可憐・貞節」のほか、「才能・大胆・快活・勇敢・野心」などの意味ももつのだそう。
「大和撫子」に求められる美しさとは?
『大和撫子』という言葉は、諸説ありますが、『万葉集』に記されていたことから平安時代に生まれたと言われます。そのため、この言葉が指す「日本の女性の理想的な美しさ」として、「清楚」「しとやか」「可憐」「おくゆかしい」等々、現在から見れば少々古風な女性像をイメージする方が多いようです。
しかしながら、『大和撫子』が指す女性の美しさの特徴は、昔から具体的に定められているわけではありません。実際に、『大和撫子』をチーム名の由来としたと言われる「なでしこジャパン」の活躍によって、この言葉にも「エネルギッシュ」「強い」「たくましい」というイメージも付されたように思います。
古風な女性像を連想する方が多いことは認識しつつ、実際にはあくまでも「日本の女性の美しさを讃える」言葉であり、その美しさは、時代や褒める人・褒める相手、シチュエーションによって異なってもよいことを覚えておきましょう。
ちなみに、『万葉集』では男性も『大和撫子』と記していたことがわかっており、厳密には、元来、女性だけを指す言葉ではなかったと言えるようです。
使い方を例文でチェック!
では、実際には『大和撫子』はどのように使うことができるのでしょうか。例文を通してチェックしていきましょう。
1:観光客の人に「君はまさに【大和撫子】だね」と褒められて気分がよくなった。
『大和撫子』という言葉を、そのまま褒め言葉として用いた例。“Yamato Nadeshiko”は、外国でもそのままの形で知られる日本語のひとつです。
2:がさつで狡いところのあるうちの妹は、お世辞にも【大和撫子】とは言えない。
『大和撫子』を日本の理想的な女性像とした上で、相手の特徴を否定する際に用いた例。『大和撫子』が指す女性像自体には曖昧なところがありますが、「がさつ」「狡い」といった特徴が該当しないことは明らかではないでしょうか。
3:【大和撫子】を目指して、髪を黒く染めてストレートヘアを保っている。
【大和撫子】は、外見を指す場合、少々ステレオタイプ的なニュアンスを含む傾向があります。特に外国の方たちからは、「黒髪」「直毛」のイメージを抱かれていることが多いように思います。
類語や言い換え表現は?
では、『大和撫子』を他の言葉で言い換えたい場合、どのような表現を使うことができるのでしょうか。類語・言い換え表現をご紹介します。
1:淑女(しゅくじょ)
「品格の高い女性」や「しとやかな女性」を意味する『淑女』という言葉。『大和撫子』よりも少々具体的にはなりますが、理想の女性像を言い表している点においては類語として使えそうです。
ただし、『大和撫子』がもつ「日本の」という意味はなくなるので注意しましょう。
2:良妻賢母(りょうさいけんぼ)
『大和撫子』を少々古風な女性像を指す際に用いる場合は、「夫にとっては良い妻であり、子どもにとっては賢い母親であること」を意味する『良妻賢母』が似たニュアンスを持つ表現として使えるかもしれません。
ただし、これを手放しに「良いもの」として使うと、時代遅れなイメージを持たれる可能性があるので、使い方には注意しましょう。こちらにもまた、『大和撫子』がもつ「日本の」という意味はありません。
3:才色兼備(さいしょくけんび)
『才色兼備』とは、「才能と美しさの両方を兼ね備えていること」を意味する言葉です。理想の女性像のニュアンスで『大和撫子』を使いたい場合は、近い言葉として用いることができるかもしれません。
多くの場合「女性」を指す際に使われますが、こちらも同様に『大和撫子』がもつ「日本の」の意味が含まれない点に要注意。
対義語は?
『大和撫子』の反対の意味にあたる言葉も集めてみました。
1:大和男児(やまとだんじ)
『大和男児』とは、字面の通り「日本人らしい男性」を意味する言葉で、『日本男児』とも呼ばれます。
『大和男児』が指す男性像もまた、『大和撫子』と同様に具体的に定められているわけではありませんが、「頼りになる」「忍耐強い」「精神力がある」「強い」「たくましい」といったイメージを連想する人が多いことを覚えておきましょう。
2:益荒男(ますらお)
『益荒男』とは、「強く立派で勇気のある男性」を意味する言葉です。理想的な男性像を指すニュアンスがある点において、『大和撫子』の男性版とも取れるため、対義語にあたる言葉として挙げました。
『益荒男』が指す男性像もまた、少々古風なジェンダー観をもつ点に注意しましょう。
英語表現は?
では、『大和撫子』は英語ではどのように言い表すことができるのでしょうか。最後に、『大和撫子』の英語表現をご紹介します。
1:Yamato Nadeshiko
『大和撫子』は、“Samurai”などと同様に、英語でもそのまま“Yamato Nadeshiko”として使われます。
ただし“Samurai”のようには広く浸透していないため、“”Yamato Nadeshiko” is a word that means the ideal image of a Japanese woman.(『大和撫子』とは、理想的な日本の女性像を意味する言葉です)”といった説明が必要になる場合が多いようです。
2:a woman with traditional Japanese beauty
“a woman with traditional Japanese beauty”とは、「日本の伝統美を持つ女性」と直訳できるフレーズです。やや説明的にはなりますが、“Yamato Nadeshiko”で伝わらなかった場合などに使える表現として覚えておきましょう。
由来となった「カワラナデシコ」は美しくもたくましい花
今回は『大和撫子』が持つ意味や語源、使い方、類語、対義語、英語表現までをお伝えしてきました。
この言葉の由来となった「カワラナデシコ」は、可憐な美しい花を咲かせる一方で、河原などにも自生するたくましい一面も持つ花なのだとか。『大和撫子』が指す美しさは時代ごとに変化しますが、「カラナデシコ」のような可憐さと強さを兼ね備えた生き様は現代人でもやはり憧れます。
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文・構成/羽吹理美