学校を休んでも欠席扱いにならない「ラーケーション」とは? 賛成 or 反対? 導入されたら何をする? ママパパ450人に聞いた意見とアイディア

2023年9月から愛知・大分を皮切りに、茨城、山口……と徐々に公立学校で導入されている「ラーケーション」。学び(Lerning)と休暇(Vacation)を組み合わせた新しい言葉として注目を浴びていますが、実際に子育て中のご家庭からはどの程度認識されているのでしょうか。
本記事では、「ラーケーション」の認知度や、ママパパが抱える疑問点、実際にやってみたいことなどを450 人のHugKum読者の方たちに聞いてみました。

「ラーケーション」を知っていますか?

まず聞いてみたのはこちらの質問。どのくらいのママパパたちが「ラーケーション」をご存じなのでしょうか。

インターネットによるHugKum調査:2024年9月 有効回答数450

アンケートを集計してみると、「はい」が77人(17.1%)、「いいえ」が298人(66.2%)、「聞いたことはあるが詳しく知らない」が75人(16.6%)との結果に。

今回のアンケートで「はじめて聞いた」という親御さんが多いことがわかりました。

ラーケーションとは

「ラーケーション」という言葉をはじめて聞いた方向けに、この制度がどのようなものかをここで振り返っておきましょう。

「ラーケーション」とは、「learning(学ぶ)」と「vacation(休暇)」を掛け合わせた言葉で、家庭での体験活動を支援する制度です。具体的には、児童・生徒が平日に学校を休み、保護者などと一緒に体験活動で学びを深めるというもので、一部の公立学校ではすでに導入が始まっています。

通常は学校を休めば欠席扱いになりなすが、この「ラーケーション」を目的としたお休みは、事前に申請すれば欠席と見なされません。

過去の記事では、この制度の基本的な情報をまとめています。ぜひこちらもご参照ください。

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「ラーケーション」に賛成? 反対? ママパパの考えは

では、育児中のママパパたちはこの「ラーケーション」についてどのようにお考えでしょうか。賛成か、反対か、そしてその理由をお答えいただきました。

インターネットによるHugKum調査:2024年9月 有効回答数450

この質問では、228人(50.6%)が「賛成」、42人(9.3%)が「反対」、178人(39.5%)が「どちらとも言えない・わからない」と回答してくださいました。

多くの方が賛成する一方で、反対派も少なくないという実情が浮かび上がってきましたね。それぞれの回答の理由をご紹介いたします。

「賛成」と答えた理由

賛成派の回答の理由としては、「家族旅行の機会として活用できること」や、「混雑が避けられる平日に出かけられること」「学校ではできない体験が得られること」「親もいっしょに学べること」などが挙げられました。

土日や祝日のお休みでは、人気スポットは大混雑している場合が多いですよね。たとえ「学び」を目的にお出かけしても、思うように動けないこともあるのではないでしょうか。「ラーケーション」という制度によって、「平日に休んで出かけられる」ありがたみを感じる声が目立ちました。土日や祝日に働き、休日が平日に設定されている親御さんたちにとってもうれしい制度です。

以下には、みなさんのコメントを引用しました。

家族旅行の機会として活用できる

保護者がエッセンシャルワーカーであるなど、休日に体験活動が難しい家庭もあるので導入には賛成です [ 大分県・女性 ]
親の休みに合わせて使えるのでいいと思います。 [ 愛知県・女性 ]
受験勉強や塾に通わせると家族で旅行があまりできないので、勉強に支障がでず両方体験できるのはとても良い。 [ 東京都・女性 ]

空いている平日に出かけられる

人が分散して体験できることによってたくさんの人が好きな日に体験できるのがいいと思いますし、また出席扱いになるのも大変ありがたいため。 [ 群馬県・女性 ]
休日出かけたらどこも混雑しているので [ 大阪府・女性 ]
平日だからこそ出来る体験もあるから [ 千葉県・女性 ]

学校にはない体験が得られる

学校での学びはすべてではない。だから課外授業があるとおもっている。 [ 岐阜県・男性 ]
家族旅行など、学校では味わえない経験も大事だと思うから [ 鳥取県・女性 ]
学校から離れることで非日常場の環境に身を置き、リアルな体験ができるため、より記憶に残ると思うから。 [ 三重県・女性 ]

親もいっしょに学べる

子供と一緒に楽しめる時間がもてるのはいいこと [ 熊本県・女性 ]
子どもが積極的にやりたいことを親も一緒にできて、平日にそれがやることができるのがとても良いと感じました [千葉県・女性 ]
子供と一緒に体験学習ができるから [徳島県・女性 ]

「反対」と答えた理由

「反対」と答えた理由としては、「平日に学校を休む必要はないこと」や「家庭によって子どもの体験に格差が生まれてしまうこと」を懸念する声が寄せられました。

平日にフルタイムで働いている親御さんにとっては、仕事を休む必要があり、「ラーケーション」が重荷になる場合もあります。その他、親御さんのお仕事や家庭の状況によってはお子さんを思うように「ラーケーション」に連れて行くことができないことも。ご家庭の環境や状況によって、お子さんの体験に格差が生まれるのではないかと懸念する声も散見されました。

平日に学校を休む必要はない

わざわざ平日に休みを取らなくても、休日に体験活動はできるから [東京都・女性]
学校を休ませてまでやる必要が無いと思う。平日にしかできない事が特に思い付かない。 [福岡県・女性]
学校を休まなくてもお休みの日にすれば良いと思うし遠足や移動教室でも十分、学校外の学びがあると思うから。VacationとLearningの組み合わせであるなら尚更、Vacation(休暇)にすれば良いのでは?と思ってしまう。 [埼玉県・女性]
共働きの家庭が増えているなかで、ただでさえ日常をまわすのに手いっぱいなのに平日に仕事を休んでは難しいです。 [神奈川県・女性]

家庭によって子どもの体験に格差が生まれてしまう

仕事を休める保護者とそうでない保護者で差がうまれ、結果的に子どもの経験や気持ちに差が生まれてしまうと思います。塾や習い事など完全に私的なものは仕方ないとして、公教育ではあるべきではないと思います。 [岡山県・男性]
できる家庭とできない家庭の差が激しくなると思う。
経済面だけでなく、仕事を休めないなどまだまだその前に改善しないといけないことが沢山あると思う。 [大阪府・女性]
仕事をしている親は平日の休みが取りづらく、経済格差が体験格差につながりそうで、公立学校には向いていないと思います。 [宮城県・女性]

「ラーケーション」のここに疑問。ママパパが抱える懸念点や意見

反対派からも意見が挙がったように「ラーケーション」はさまざまな課題を抱えているのも事実。ママパパたちが感じている不安な点や疑問もご紹介していきます。

設問:ラーケーションが実施された場合の疑問点や課題点など、意見があればお聞かせください。

認知度の低さ

懸念点としてまず挙がったのが、「認知度の低さ」でした。学校でそのような制度が導入されたとしても、子どもたちの間で認知されていなかった場合「ずる休み」と勘違いされてしまうのでは、と心配する声が寄せられています。

学校の勉強についていけなくならないか、周りでの認知度が低ければ、さぼりやずる休みと言われないか懸念してます [大阪府・女性]
他の子から、なぜ休んだの?など聞かれることも多いのでその兼ね合い。たくさんでかけられる子とそうでない子どもの差が出てしまうこと。そのような問題はどうするのか。 [京都府・女性]

授業に遅れる

また、学校を休んでも欠席扱いにならない一方で、休んだ分「授業に遅れるのでは?」「補習はしてくれるのか?」といった疑問・不安を抱えるママパパも少なくありませんでした。

なかには、塾のように休んだ授業は動画で見られるようにしてほしい、といった意見もあります。

学校の授業に遅れが出ないか、心配になる。 [神奈川県・女性]
休んだ場合の授業の補填をどうするか。 [長崎県・女性]
休んでるときの学習について、どうなるのかとか評価などの、仕方? [北海道・女性]

公平性に欠ける

反対派の意見にもあったように、ご家庭によってはお子さんを「ラーケーション」に連れて行くことが難しい場合もあります。家庭ごとに格差が生まれ、公平性に欠ける可能性も大きな懸念点のひとつです。

公平性に欠ける。体験させてあげられる家庭は良いが、様々な理由で子どもに時間や費用を充分にかけられない家庭もある。里親さんや児童養護施設の子どもはどうなる? [埼玉県・女性]

きょうだいをどうするか?

また、きょうだいがいる場合は「ラーケーション」に同行させられるか、留守番をさせる必要が生じるのではないか……といった疑問も挙がりました。

特に、同じ小学校に通うごきょうだいならまだしも、「ラーケーション」対象のお子さんと非対象のお子さんのごきょうだいの場合、共に平日にお出かけすると片方が欠席扱いになってしまうのが現状です。

親と子供の休みが合わせられる家庭がどのくらいあるのか、小学生ならまだしも中学生の兄姉がいる場合、親の片方は上の子供と留守番になるのではないか。取り組みとしては良いと思う。日系企業の休日分散化などにも良い影響を及ぼすのではないかと思う。 [神奈川県・女性]
小学生(ラーケーション対象)の娘と、幼稚園生(ラーケーション非対象)の娘がいます。小学生だけ休ませ、一緒に過ごす時間を作るか、幼稚園を休ませて家族で出かける時間にあてるか。後者の場合、幼稚園を休ませることになるので、幼稚園がそれを受け入れてくれるのか。 [茨城県・女性]

「ラーケーション」と「ただの休み」の判断基準は?

「ラーケーション」のプランの自由さゆえに、「ただの休暇」との違いの基準があやふやだと感じるママパパも少なくありません。「ラーケーション」後にレポートの提出を義務付けるなど、なんらかの対策をとってほしいとの声もありました。

仕組みづくり。レポート提出の義務や、何をもってラーケーションとして認めるかの判断基準を明確にすること。仕組みづくりを間違えると、単に学校が教育に手を抜くことに繋がると感じます。 [埼玉県・男性]

何をすれば良いのかわからない

おなじく、「ラーケーション」の内容が「自由」で各家庭にゆだねられているからこそ、「何をすれば良いのかわからない」と感じる声も寄せられました。

実際にはどのような体験活動があるのか、また学校が許可してくれる活動範囲などが知りたいです。 [大阪府・女性]
体験活動とありますが、それがどのようなプログラムなのか、具体的な内容を知りたいです。親がどれ程関わって支援していくのかという点も知れたら嬉しいです。 [千葉県・女性]
早目に休みとなる日がわからないとら仕事を休めないこと。また、何をしたら良いかも家庭によっては問題となりそうなので、あらかじめ体験活動として何か用意しておく方がよいと思う。 [京都府・女性]

「ラーケーション」では何がしたい? ママパパたちのアイディアをご紹介

ここからは、みなさんから寄せられた「ラーケーション」が導入されたらやってみたいことをご紹介。さまざまなアイディアが集まりました。

設問:もし、お子さんの学校でラーケーション制度がスタートした場合、お子さんといっしょに取り組みたいこと、親子で体験したいことなどがあれば教えてください。

工場見学や職業体験

「ラーケーション」の定番となっていきそうな『工場見学や職業体験』。すでに土日や大型の連休では子連れの人気スポットとなっている場所もありますが、「ラーケーション」が導入されれば、人混みももう少し分散されるかもしれませんね。

普段見ることのない工場見学、製作体験、職業体験など。 [群馬県・女性]
キッザニアや遊園地につれていきたい [大阪府・女性]

美術館・博物館

『美術館・博物館』もまた、定番の「ラーケーション」スポットとなりそうですね。学べることや、得られる知識が明確な点がポイントではないでしょうか。

美術館に行きたい [愛知県・女性]
子供は家族だけだと気が散りやすいので、お友達家族と一緒に美術館や科学館、工場見学等ができたらいいなと思いました。 [岩手県・女性]
民俗施設や、体験参加、寺社仏閣見学 [ 北海道・女性]

日本文化や歴史を学べる場所へ

美術館や博物館のようないわゆる“ミュージアム”ではなくても、お寺や神社をはじめ、日本の文化や歴史を感じられる場所は多数あります。家族旅行とも組み合わせやすく、人気のプランとなりそうです。

日本史に出てくる城や戦場などを巡って一緒に勉強したい [東京都・女性]
お寺などの歴史的な名所に行く。 [東京都・女性]
奈良や京都でお寺や仏像をみてまわり、日本文化への興味を深めたい。 [山形県・女性]

自然と触れ合える場所・体験

キャンプや農業体験など、自然と触れ合える場所や体験に連れていきたいというママパパも多数。スマホやPC、タブレットに依存しがちなお子さんの「脱デジタル」「デジタルデトックス」を期待する声もありました。

キャンプ場で火起こしや調理を一緒にしたり、大好きな昆虫採集をすることで自然とふれ合う機会を作りたい。 [三重県・女性]
農業体験 [福岡県・女性]
季節の植物や動物の種類など、屋外に溢れる様々なものの知識を取り入れたい。 [東京都・女性]

親子で体験

せっかくなので「親子でいっしょに体験したい」という意見も。いっしょに参加すれば、きっと思い出にもなり、大人にとっても学びになります。ぜひ、単なる“付き添い”ではなく大人も積極的に体験したいですね。

親子でパン作り、親子でできるスポーツなど体験したいです。 [三重県・女性]
親子で取り組まなければ作れない工作もの。普段の生活では体験できないようなこと [鹿児島県・女性]

土日などの休日中には(混雑などで)行きづらい場所へ

ほか、土日などの休日中には(混雑などで)行きづらい場所に訪れたいといった声も多数寄せられました。せっかくの平日休みだからこそ、土日にはなかなか行きづらい人気スポットも視野に入れたいものです。

普段出かけることのない地方に出かけたい。私の場合は北海道や沖縄。休みの日は高いし混むので平日に行きたい。関東の鉄道博物館にも行きたい。 [京都府・女性]

実際に使っているという声も!今後の展開と課題の解決に期待

今回は、「ラーケーション」の認知度や、ママパパたちが感じる課題、実際にやりたいことなどのアンケート結果をご紹介してきました。

実例は少ないものの、なかには「実際に始まっていて、使ってる!」といった声も寄せられています。まだまだ始まったばかりでさまざまな課題を抱える制度ですが、「賛成派」の方たちが挙げていたようなメリットや効果も多そうです。今後の展開と課題の解決に期待したいですね。

関連記事では、実際に行われた大学生・社会人向けの「ラーケーション」合宿のプランや、プランを立てるコツを有識者に取材しています。こちらもぜひご参照ください。

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文・構成/羽吹理美

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