脳科学者 中野信子氏に学ぶ【戦略的なキレ方】の具体策。言いたいことが言える脱・都合のいい人に!

日本では、「波風立てない」ことがよしとされている風潮があります。しかし自分の不利益が見えてきたら、テクニカルに切り返すべきです。さもないと、相手は搾取してもよいターゲットとして見て、さらに攻撃をエスカレートさせてきます。前著「ヒトはいじめをやめられない」がベストセラーとなった脳科学者の中野信子さんの新刊『キレる!』から、賢くキレて、不当な攻撃から自分を守るコミュニケーションのスキルを学びます。

Don’t be nice!〝いい人になるな〞

いい人として見られたいという思いから、空気を読んで自分の意見を言わず、その結果人の言いなりになってしまう。日本人にはそんな性格の方が多いように思います。しかし海外にいると、ときにキレるということが必要な場面に多々出合います。黙っていては搾取される一方だからです。”キレる”ことは、訓練して身に付けた自分の守り方であり、自分の主張を通すための手段なのかもしれません。

自分の不利益が見えたら、反論すべき

日本では、もめ事を起こした人をそれだけで「ダメな人だ」と思ってしまう風潮があります。子どものころから、「周りに迷惑をかけてはいけない」「事を荒立てるのはよくない」「世間を騒がせるのはダメ」「波風を立てない」「喧嘩はいけない」と教えられて育つからかもしれません。もめ事を起こすのは、問題意識があり、主張できる自立した人だから、という側面はあまり評価してもらえません。

まず自分の意見を言うことは、もめ事ではありません。もしもめたときには議論していけばよいはずなのですが、なぜかやっかいな人と思われてしまいがちな不思議の国に私たちは住んでいます。そうならずに切り返すための技術を身に付けたいものです。「自分さえ我慢しておけば」と思うほうが一時的には楽なのかもしれませんが、言いたいことを言わないでいると、不満が蓄積して大きくなり、怒りになります。それが爆発したときには〝もめ事〟どころではなく事件に発展して、自分自身を大きく傷つけることにもなります。

キレなければ”モラハラ快楽”に火をつけるだけ

自分の不利益が見えてきたら、テクニカルに切り返すべきです。さもないと、相手は搾取してもよいターゲットとして見て、さらに攻撃をエスカレートさせてきます。さらに〝攻める快楽〟ということもあります。「あいつには何を言ってもいいんだ」と思い、〝モラハラという快楽〟を搾取する上司や夫、あるいは妻です。これはドーパミンの分泌によるものです。「何を言ってもいいんだ」と思わせないため、キレて、きちんと言い返す必要があります。よく観察してみると、会社でも一目おかれている人は、上手に言い返しているのではないでしょうか。どこでどう返していいのかわからず、ストレスを抱えて自宅に戻ったときに家族にキレるのは論外でしょう。戦略的にキレるとは、その対象を正しく選ばなければなりません。

気持ちはキレていい!言葉でキレてはいけない!

戦略的なよいキレ方のポイントは、気持ちでキレても言葉ではキレないことです。人格を傷つけられるようなことを言われたとき、我慢をする必要はありません。我慢をしたら相手の思うツボだからです。だからといって、同じように悪口雑言、相手の人格を傷つけるようなことを言ってしまうと、さらに反撃をくらうリスクがあるだけでなく、周囲からも同じようにキレやすい人というレッテルを貼られ、あまりよい結果にはならないでしょう。まず「こんなひどいことを言うなんてありえない」「二度とそんなことは言わせない」と気持ちの上ではキレてもよいのです。そして、二度とこのような状況をつくらせない、と固く心を決めて、その気持ちや主張を最も効果的な言葉や態度で伝えることが必要です。 気をつけたいのが言葉の選び方です。気持ちがキレても相手との関係性を崩さず、なおかつ、自分を守る言葉を選ばなければなりません。同じ言葉でもキレて使うのと戦略的に工夫して使うのでは、結果はまったく異なります。

一目おかれる、戦略的に”キレる”方法

大事なことは〝キレる〟をコントロールできているか、いないか。それだけでも相手への印象が変わります。ここからは具体的な切り返し方の例を挙げてみましょう。

面倒な人だと思わせる

相手に、私はあなたの攻撃の対象にはなりませんということを知らしめるには、攻撃するのは面倒だと思わせることが有効です。

(例)相手にののしられたとき

「そこまで言い切りますか? リスクの高い言い方を課長 がわざわざ選んでいらっしゃるのは不思議です。パワハラが問題にされやすいこのご時世になぜですか?」

などと、まずはシンプルに、相手の真意をただすようにして、自分の不快を伝えてみましょう。

(例)会社の上司からセクハラのようなことを言われたとき

「私が 男でも、そういうことおっしゃいますか?」

「上司が部下にそういうことをおっしゃるというのはコンプライアンス的にいかがでしょう?

と、さらりと相手に後ろめたさを感じさせる言い回しというのもあるでしょう。 攻撃的な人は、言い返してこないと思う相手を攻撃するケースが多いので、「私はちゃんと言い返しますよ」「私を攻撃して痛めつけることはそれほど簡単ではありませんよ」ということを示すのです。相手は、面倒な相手だと思い、ターゲットを変えるようになるでしょう。勇気がいることではありますが、自分は悪くないのに不当な扱いを受けているということを相手に示すことで、満足度も高くなり、もやもやした気持ちから解放されます。この行動こそ、自分で自分を大事にするということなのです。

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ユーモアで本質を伝える

イラッとしたとき、相手を追い詰めてしまうような言い方をしてしまうこともあります。しかし、追い詰めてしまうと、何を言いたいのか考えようとする気持ちの余裕がなくなるため、伝えたい本質が伝わらず、むしろ誤解されることになります。 言い返すにしても、相手にも自分にも考える余裕を会話の中にもつくる必要があると思います。ユーモアを交えてクスッとさせるようなひと言で、本質を伝えるスマートな言い回しを覚えたいものです。

『深夜のダメ恋図鑑』(小学館)という人気漫画には、このユーモアで本質を突く会話例がたくさん載っています。少々極端な例でもありますが、ぜひ参考にしてほしいと思います。

(例)日頃から家事をまったく手伝わない同棲相手が、仕事で疲れたと訴え、共働きの彼女が作った料理にまでケチをつけたとき。

↓「あたしは、仕事に家事にオマエの世 話で疲れてるけど 。諒くん、仕事だけして…そんなに疲れてるの? 大丈夫?病気? もっかい聞いていい?仕事だけしかしてない人間が、いったい何をしてそんなに疲れるの  ? まさか息? 」(2巻

深夜のダメ恋図鑑 2

尾崎衣良

本体429円+税

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持ち上げてから、人格を責めず行動を責める

相手の人格や性格には触れず、直して欲しい行動だけをきちんと伝えるのです。人格を否定せずにチクリと言いたいことを伝えます。

(例)協力し合うことが必要な場面でルールを守ろうとしない相手に

まずはとにかくほめて持ち上げ、相手がいい気分になったところで…ルールを守らないことに対して「あれはまずいよね」

相手に軽く後ろめたさを感じさせるよい方法ですし、取り入れやすいと思います。

相手を傷つけることなく、自分の主張を通す方法「アサーション・トレーニング」とは

コミュニケーションの達人でなくても、相手のプライドを傷つけることなく、自分の主張を通す方法を身につける方法があります。それが”アサーション・トレーニング”と呼ばれるものです。アサーションとは、英語で〝自己主張〟という意味で、相手を尊重しながら、自分の感情や主張したいことを抑えることなく、お互いのためになる方法や結論を導き出すコミュニケーションスキルです。

〝アサーション・トレーニング〟では、まずコミュニケーションの方法として〝受け身的〟〝攻撃的〟〝アサーティブ〟と三つに分けます。例えば、自分の意見を言うことが苦手な人は、相手の気持ちを優先して、相手が強い態度で出てくると、自己主張せずに我慢してしまいがちです。これが〝受け身的〟です。一方で、感情を爆発させて自分の言いたいことを言って、逆ギレをするのは〝攻撃的〟です。言いたいことを言うと、そのときはすっきりするかもしれませんが、相手を傷つけるようなことを言ってしまうと、人間関係を築けず孤立してしまうこともあります。〝アサーティブ〟なコミュニケーションは、相手も自分も大切に扱うのが特徴です。自分の気持ちを正直に、その場にふさわしい表現方法で伝えようとします。結果として意見がぶつかっても、すぐに自分の意見を曲げることはありません、相手にそれを強制することもありません。お互いの意見を出し合いながら、双方にとって納得のいく結論を出そうとします。

ポイントは「私は」を主語にして伝える

「私は〜と思う」と言うことで、自分の感情を素直に表現でき、相手を責めているのではないという姿勢なので、相手からのリベンジを避けることができます。

(例)相手からひどいことを言われた場合

〇「私は、○○なんて言われて辛い。もう言わないでほしい」

(例)約束を守ってくれないことでお互いに言い合いになった場合

「私はあなたとの約束 の時間に合わせて、いろいろと計画を立てていたんだよね。楽しみにしていたんだけど、全部無駄になってしまって悲しいな。何時だとよかったのかな?」

「どうして、あなたは?」と相手を主語にして言うと、相手は責められていると感じて、反発してしまうかもしれません。けれども「私は〜」と言われると、反論しようという気持ちは起きにくくなります。後ろめたさを感じ、自分が悪かったと素直に思ってくれるかもしれません。ポイントは、直後に言うか、相手の機嫌がよいときに言うこと。空腹だったり、ストレスを抱えていたり、眠たそうにしているときは避けましょう。セロトニンが不足しているタイミン グなので、必要 以上に責められていると感じてしまうので、良好な会話が期待できません。

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誰も損をしないキレ方は大きな武器になる

言い返すのが苦手という人は、そもそも「日本語の運用力」不足なのかもしれません。いろいろな言い回しを学べば解決できることもあります。誰も損をしない。でもきちんと自分の言いたいことを伝え、不当な攻撃から身を守る。そういうコミュニケーション上手な人を見つけて学んで、自分のスキルとして身につけてください。そうして身につけた、対人コミュニケーションスキル、上手にキレるための豊富な語彙力と運用力が、これからの時代を生き抜く貴重なリソースになるはずです。

著者:中野信子(なかの・のぶこ)

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。現在、東日本国際大学教授。著書に『心がホッとするCDブック』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『脳内麻薬』(幻冬舎)『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館)など多数。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。

キレる!脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」

著/中野信子

本体780円+税

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