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パスポートの保有率が5年で約7%減ったのはなぜ?
パスポートが何か知っていますか? パスポートは、海外に行くときに必要な「特別な身分証明書」のようなもの。外国に行って「私は日本人です!」と証明するために持っていく欠かせないものです。
日本人のパスポート保有率は、2024年に約17%ということが分かりました。つまり100人いたら17人しかパスポートを持っていないということです。2019年には23.8%だったので、100人中24人くらいが持っていたのですが、今は約7割くらいに縮んだということ。これは大きな変化ですが、ではどうしてこんなことが起きたのか、ひとつずつ見ていきましょう。
コロナ禍で海外に行けなくなった
まず、最初に大きな理由として挙げられるのは、世界中で起きた新型コロナウイルスの影響です。2020年くらいから、コロナが広がってしまって、世界中で「しばらく外国の人を入れないよ」「旅行は控えてね」という動きが広がりました。
日本人も海外に行けなくなり、家の中で過ごす時間が増えました。「海外に行けないならパスポートを作る必要もないよね」と思う人はたくさん出てきます。それに、パスポートは5年か10年で期限が切れるので、コロナの間に古くなってしまったパスポートを新しくしない人も増えました。
たとえば、おじいちゃんやおばあちゃんが「昔は海外旅行楽しかったけど、今は行く予定がないからいいや」と思ったり、学校の友達が「海外に行く計画があったけど、やめたからパスポートいらないね」と言ったりしたかもしれません。こうやって、パスポートを持たない人が増えていきました。
円安になったから
次に、お金のことも大きな理由です。最近、日本のお金「円」の価値が少し下がってしまって、これを「円安(えんやす)」と呼びますが、円安になると、海外に行ったときに旅行先の物価が高く感じられることが多くなります。たとえば、アメリカでハンバーガーを買うのに、以前は500円くらいだったのが、今は700円くらいかかるようになったイメージです。
また、物価が上がって、生活に必要なものも高くなってきたから、「海外旅行にお金を使うより、家で使うお金を大事にしよう」と思う人が増えたのです。
小学生のみなさんなら、お小遣いでお菓子を買うときに「これ高いな、家で我慢しようかな」と考えることがあるかもしれません。それと同じで、大人たちも「海外旅行は高いから、やめておこう」と思う人が多いかもしれません。
海外に行きたい気持ちが減った?
それから、ちょっと面白い理由もあるんです。それは「海外に行きたい!」と思う人が減ってきたかもしれないということです。日本のパスポートは世界最強と言われるくらい、いろんな国にビザなしで行けるすごいパスポートなのですが、最近の若い人たちの中には「日本にいれば十分楽しいよ」「海外って遠いし、ちょっと怖いかも」って考える人も増えています。
たとえば、学校で「夏休みにどこか行く?」と聞かれたとき、「近くの公園で遊ぶほうが楽だよ」という友達がいるような感じです。海外旅行は飛行機に乗って何時間もかかったり、言葉が通じなかったりするから、「ちょっと面倒だな」と思う人も出てきているのかもしれません。
ウクライナや中東など、紛争への不安も
また、今日でもウクライナや中東では紛争が続き、台湾をめぐっては台湾有事への懸念が国内外で広がっています。有事は戦争を意味し、いつの日か中国が台湾に軍事侵攻するのではと言われています。今後の情勢がどうなるかはわかりませんが、「海外は危ない」という意識が日本人の中で広がってきているのかもしれません。
海外を見るのも重要なこと
こうして見てみると、パスポートを持っている人が減ったのは、コロナで外出できなくなったこと、円安によるお金への不安、海外への興味が薄れたこと、海外は危ないということ、いろんな理由が重なっています。
しかし、外国には日本にない魅力がたくさんあります。もしみなさんが大きくなって、「海外に行ってみたいな」と思ったら、パスポートを作って、世界を見てみるのも重要なことです。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。