「乳がん・子宮頸がん」について学ぶ《謎解きイベント》に親子で参加! 日本人の死因1位のがん、でもワクチン接種や検診で予防も可能。まずは知ることから。

がんで亡くなる人は3人に1人、そして、がんは日本人の死因の第1位でもあります。でも、がんが不治の病だったのは昔の話。検診やワクチン接種で予防できるがんもあります。
なかなか家族で話題にするのは難しいトピックですが、若い世代にも人気の高い「謎解き」を活用した、乳がん・子宮頸がんに関する親子参加型の体験イベントがあると聞き、参加してきました!

謎解きイベントで「乳がん・子宮頸がん」について学ぶ

  • 『親子で協力プレイ!謎解きで学ぶ「乳がん・子宮頸がん」』イベントの謎解きのシート。

女性特有のがんで特に罹患者が多いのが「乳がん・子宮頸がん」。けれども、自分ごととして考えるのは難しいですよね。まさか、自分だけは…と思っている方も多いのではないでしょうか?

友人をがんで失うという経験

実は、筆者は、40代で唯一無二の親友を子宮頸がんで亡くしています。しかも、若いということで進行も早かったのでしょう、友人は体調が悪いと入院して3週間で亡くなりました。数年経ってもいまだにその悲しみを乗り越えられませんし、その時から、女性特有のがんについて意識するようになりました。

乳がん・子宮頸がんを学ぶ謎解きイベントに参加

大切な人を失ってからでは遅すぎます。ワクチンで防げるがんもあると聞き、もっと学びたいと常日頃から思っていました。そんな矢先、若い世代にも人気の高い「謎解き」を活用した、乳がん・子宮頸がんに関する親子参加型の体験イベントがあるということで、娘と参加してきました!

謎解き「勇者クエスト〜輝くいしと迫りくるがん〜」体験

都内で開催された『親子で協力プレイ!謎解きで学ぶ「乳がん・子宮頸がん」』で謎解きに挑戦する参加者。

『親子で協力プレイ!謎解きで学ぶ「乳がん・子宮頸がん」』は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)より、3月8日(土)の国際女性デーに、SHIBUYA QWS スクランブルホールにて開催されました。

「東京大学謎解き制作集団 AnotherVision」の謎解き!

子どもにも見やすくて、分かりやすい謎解きのシート。STEP1、STEP2、LAST STEPと3レベルに分かれています。

「乳がん・子宮頸がん」の啓蒙の謎解きということで、子どもにはとっつきにくいかも…と少し構えていましたが、配られた謎解きシートを見た瞬間、冒険の楽しさがぎっしりで、すぐにワクワクに変わりました。

それもそのはず、謎解き制作はHugKumでも人気の松丸亮吾氏が前代表をしていた「東京大学謎解き制作集団 AnotherVision」のよるもの。本格的な謎解きで、会場の参加者の皆さんもゲームの面白さにすぐに引き込まれ、夢中に問題を解く様子が見られました。

ストーリ展開は以下となります:
<謎解き「勇者クエスト〜輝くいしと迫りくるがん〜」体験>

ここは人間界とは遠く離れたホスピターレ王国。
プレイヤーは新米勇者として、先輩の魔法使いとともに日々世界平和を守っている。
ある日、先輩の魔法使いが別の任務に行っている間に、敵に宝石が盗まれてしまった・・・!
この敵はどうやら人間界でいうところの「がん」と性質が似ているらしい・・・
敵を倒すには謎を解いて「がんの知識」を得ることがカギとなるようだ。
目の前に立ちはだかる数々の謎を解き明かして、敵から宝石を守ろう!

気になる難易度は?

難関を乗り越え、LAST STEPに挑む小学生の参加者。

筆者も娘と一緒に挑戦しました。ゲームや謎解きがあまり得意ではないので、難しくは感じましたが、楽しみながら頑張れる難易度でした。どうしても解けない時は、LINEを利用してヒントや答えも見ることができるので、先に進むことができます。

ちなみに、筆者チームは、STEP1は自力で解けましたが、STEP2はヒントでなんとか通過、LAST STEPは間に合いませんでした。

対象年齢は12歳以上ですが、大人と一緒であれば低学年でも楽しめる構成になっています。小学2年生の娘も楽しんでいました。高学年以上のお子さんの中には、保護者よりも先に自分で解いている子も!

男の子や大学生の参加者も

大学生と中学生といった年齢差のある兄弟の参加者も、年齢差に関係なく協力しながら楽しめたとのことです。(手前右から二番目と三番目)

女性特有のがんがテーマのイベントでしたが、男子の小中学生、大学生の参加者も見られました。謎解きというゲームを通して、男女や年齢に関係なく参加できるのが大きなポイントであるとも感じました。

普段から謎解きやゲーム大好きという中学生と大学生の兄弟の参加者は、「女性特有の病気というテーマだったけれど抵抗なく参加できた。謎解きもとても楽しかった」と話してくれました。

解けなくても大丈夫!解説付き!

STEP1までは、会場の殆どの方が解決していましたが、LAST STEPまでクリアしていたグループは少ないようでした。解説や回答も配られるので、会場で解けなくても自宅に帰ってからじっくり楽しむことができます。

家に持ち帰って続きをすることで、家族で子宮頸がんや乳がんについて話す良いきっかけになりそうです。

「がん」のことを知ろう!専門家による講義も

がんについての講義をする藤田医科大学産婦人科講師の清水裕介氏。
謎解きゲームの後は、藤田医科大学産婦人科講師の清水裕介氏による「乳がん・子宮頸がん」に関する講義もありました。がんは命を奪う「死」を連想する重いテーマですが、可愛らしいイラストでたいへん分かりやすい講義でした。

がんは日本人の死因の1位。誰でもなりうる身近な病気

がんと聞くと、特別な病気で漠然と怖いというイメージがありますが、細胞の変異が原因で誰でもなりうる身近な病気とのこと。毎日5000個以上のがん細胞が生まれては消えを繰り返しています。

がんになる人は、2人に1人、がんで亡くなる人は3人に1人、そして、がんは日本人の死因の第1位であるというデータが、がんが他人事ではないということを物語っています。

検診で発見しやすい子宮頸がんと、自分で気がつきやすい乳がん

子宮頸がんや乳がんなどの女性特有のがんは、20~40代で発症するケースが近年増加しています。どちらも意識をしていれば、早期発見しやすいがんとのこと。早期発見のためには気をつけなければならない特徴があり、清水氏はそれぞれのポイントを分かりやすく説明してくれました。

自分で気がつきやすい乳がん

女性特有のがんの中でも「乳がん」は罹患者が最も多く、生涯で乳がんに罹患する確率は9人に1人と言われています。だからこそ、日々意識する「ブレスト・アウェアネス」が大切だと清水氏は強調していました。

また、がんには自覚症状のないものも多いですが、乳がんは、自分で気がつきやすいことから、予防がしやすいがんでもあります。

  • <注意するポイント>
  • ・病気のしこり
  • ・乳頭からの分泌物
  • ・病気の皮膚のくぼみや引きつれ
  • ・乳頭や乳輪のびらん

子宮頸がんはワクチンで予防可能&未形成で発見できるがん

女性特有のがんで、乳がんの次に多いのが「子宮頸がん」。近年20代後半~30代の発症率が増加傾向にあり、若くてもなるがんです。毎年、3000人近い女性が亡くなっており、交通事故で亡くなる女性の2倍とのこと。

でも悲観することはありません。子宮頸がんは、ごくありふれたHPVウィルスによる感染で、ワクチン接種により8~9割を予防することができます。

男性のワクチン接種も性交渉によるHPV感染から女性を守ることになります。

がんは、一般的に検診で見つかる大きさは10年から20年かけて1cmくらいに成長したもので、その後、数年で急激に成長し自覚症状が出るほどになります。

一方で子宮頸がんは、それより前の未形成の「がんになりそうな細胞」を見つけることで、早期発見が可能ながんでもあります。検診に行くなど意識すれば予防できるがんと考えると、向き合う勇気も出ると感じました。

他人事ではない「がん」になるということ

会場で配られたがん教育用教材「未完成マンガ」。がんになった自分を想像して「かけられたい言葉」で空白のフキダシを埋める。がんの告知を自分ごととして考えるための教材。

また、清水氏からは、余命が2年もない40代女性のがん患者さんに告知した際の話もありました。告知を聞いた患者のお母様は、身を崩して号泣されたそうです。先生もその時の様子を思い出し、声を震わせてお話する様子に、同じ年代ということもあって、本当に他人事ではないと感じました。

「今、自分が死んだら、両親は娘を亡くし、夫は妻を亡くし、娘と息子は母を亡くす」。想像するだけで自分が死ぬこと自体よりも辛いと、思わず隣にいた娘の手を握りました。

命と死に真剣に向き合っている医師から直接お話を聞ける機会をいただき、予防ができるがんについて真剣に考え、実践しなくてはと身が引き締まりました。

*「三菱UFJフィナンシャル・グループ」の支援による一般社団法人 日本がん・生殖医療学会」の制作した中学生向けのがん教育用教材「未完成マンガ」はどなたでもダウンロード可能です。

>>>未完成マンガやがんに関する資料のダウンロードはこちらから

乳がん・子宮頸がんの謎解きイベントを体験してみて

謎解きの問題のシート。

乳がんや子宮頸がんについて、親子で日常の中で話題になることはなかなかないと思います。

乳がんの罹患率が高い「親世代」と、子宮頸がんのHPVワクチンの接種が推奨されている「子ども世代」が、謎解きを通してお互いに自分ごと化することができる、素晴らしいイベントでした。

広報の方いわく、今回の『親子で協力プレイ!謎解きで学ぶ「乳がん・子宮頸がん」』は、初の試みとのこと。次回のイベントはまだ未定ですが、このような啓蒙イベントを続けていきたいそう。

中学校においては、令和3年度から「がん教育」が必修化しています。このような試みが一般的に広まれば、より多くの方が、がんについて知り、予防策を実践するきっかけになるのではないかと思いました。今後の活動に期待したいです。

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写真・取材/Rina Ota

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