暑さ指数(WBGT)って気温とどう違うの?
暑さ指数とはどのようなものでしょうか? 暑さ指数の意味と簡単な調べ方、熱中症に対してどのように役立つのか見ていきます。熱中症の深刻な危険性についても確認しておきましょう。
暑さ指数から熱中症の危険度が分かる
暑さ指数とは、熱中症を予防するためにアメリカで提唱されたもので、英語で「Wet Bulb Globe Temperature」を略してWBGTと呼ばれます。
単位は気温と同じ「℃」で、気温に加えて湿度や日射・輻射(ふくしゃ)を考慮し、人間の体と外気との熱の収支を基に算出されます。
輻射は熱のある物質が赤外線を出す現象をいいます。熱中症のなりやすさは、気温だけでなく湿度や日差しにも左右されます。暑さ指数を活用して熱中症から身を守りましょう。
熱中症はなぜ怖い?
暑い場所に長時間いるとき、頭痛やめまいがしたら軽い熱中症かもしれません。熱中症は、激しい運動や暑い環境によって体温調節がうまくいかなくなり、体に熱がこもることです。
体温が高すぎると体の細胞がダメージを受け、脳・肝臓・心臓・肺などに影響が出てしまいます。重度になると、意識を失ったり死亡したりすることもあるので軽く見るのは危険です。
大量の汗で体の水分・塩分が一気に失われることもダメージにつながります。こまめに水分・塩分を取る、定期的に休んで体を冷やすなど、熱中症にならない工夫をしましょう。

暑さ指数はどうやって調べる?
暑さ指数の計算方法は以下の通りです。外と屋内では求め方が変わります。湿球温度は文字通り「湿度」を測る値で、黒球温度は「日射・輻射」を測るものです。
●基本:暑さ指数=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
●屋内:暑さ指数=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
具体的な暑さ指数を調べたければ、環境省の公式サイトで全国の暑さ指数を確かめられます。また、市販の小型計測器を購入して、熱中症予防に役立てることもできます。
暑さ指数を生活に役立てる方法
暑さ指数は危険度でレベル分けされます。日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」(2022年)や(公財)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)を参考に、各レベルの対処方法を説明します。
暑さ指数25℃未満は注意、25~28℃未満は警戒
暑さ指数が25℃未満の場合は、注意レベルです。通常の生活をしているなら熱中症の危険性は低い状態です。
激しい運動や工事現場などで重労働をする人は、「21~25℃未満」でも熱中症になることがあります。暑さ指数が低いからと油断しないで、水や塩分をこまめに取り体調の変化に気を配りましょう。
暑さ指数「25~28℃未満」は警戒レベルです。通常の生活でも熱中症の発生率が上がるので、予防として1時間ごとに1回くらい約200mlの水を飲むのがおすすめです。
特に子どもは喉が渇かないと水分を取らないことが多いため、保護者が積極的に飲ませる必要があります。激しい運動をする人は約30分ごとに休息し、約10~20分に1回くらい水と塩分を取ります。
28℃以上になったら激しい運動を避ける
暑さ指数「28~31℃未満」は厳重警戒レベルです。普通の生活をしていても熱中症が起こります。炎天下は外出せず、室温が高くならないように気を付けることが重要になります。
持久走のように体温が上がりやすい運動は避け、暑さに弱い人は軽い運動に抑えるのがポイントです。約10~20分に1回くらい休息を取り、スポーツドリンクなどで水分・塩分を補います。
つい冷たい飲み物が欲しくなりますが、体が適温に戻そうとする働きによって、かえって体温が上がってしまうことがあります。体温が38℃以上の場合を除いて、冷たすぎない飲み物が適切です。
暑さ指数「31℃以上」は危険レベルになります。できるかぎり外出せず、涼しい室内で過ごしましょう。原則として運動は中止するレベルです。

「熱中症警戒アラート」が出たときの対応
「熱中症警戒アラート」は、環境省の「環境省熱中症予防情報サイト」で発表されています。
全国を58の地域に分けてそれぞれ暑さ指数を観測し、最高暑さ指数が33℃以上の場所が一つでもあった場合に「熱中症警戒アラート」が出ます。
暑さ指数33℃以上といえば、激しい運動をしていなくても熱中症が起こるレベルです。どうしても中止できない外出以外は、エアコンの利いた室内で予防する必要があります。
特に、小さな子どもや高齢者、持病のある人などは熱中症にかかりやすいといわれます。身近な人は、室温調整や水分補給に気を配るとよいでしょう。
熱中症になった場合の対応
どれだけ熱中症対策をしても、完全に安全とは言い切れません。熱中症への対応はダメージの重さで3段階に分かれます。症状が軽い場合と重い場合についてそれぞれ紹介します。
急いで体を冷やし水分補給する
軽い熱中症の場合、主な症状はめまい・立ちくらみ・筋肉痛・大量の汗などです。このような症状が現れたら、まずは涼しい場所へ移動します。
基本的な対応は、塩分と冷たい水を補給し、安静にして体温を下げることです。襟元を緩めて扇風機の風で冷やしたり、首・脇の下・足の付け根などに氷を入れた袋を当てたりすると、体温を下げるのに役立ちます。
炎天下に長い時間いて、熱中症の疑いがあるときは、ちょっとしためまいだと軽く考えずにすぐ応急処置をしましょう。

ひどい頭痛や吐き気などがある場合は医療機関へ
重度の熱中症になると、ひどい頭痛や吐き気、倦怠感・虚脱感が起こります。体温が40℃近くまで上昇したり、自力で水分を取れなくなったりすることもあります。急いで症状のある人を病院へ連れて行き、診察してもらいます。
また、熱中症の疑いがある人に呼びかけても意識がない、手足のけいれんがあるといった場合はさらに危険な状態です。救急車を呼んですぐさま病院へ運ぶ必要があります。
救急車を待っている間も、症状のある人の体を冷やして体温を下げます。意識がない場合は無理に水を飲ませないように注意しましょう。
暑さ指数を目安に熱中症を予防しよう
暑さ指数は、気温に湿度や日差しの影響を加味した指標で、気温よりも「熱中症のなりやすさ」を的確に把握できます。
危険度レベルに応じた対策を学び、環境省の公式サイトで暑さ指数を日頃から確認すれば、暑い夏でも熱中症の危険を予防できます。万が一なってしまった場合の応急処置もチェックしておきましょう。
気温と湿度が高くなる日本の夏は、特に熱中症の危険度が高い環境です。暑さ指数を日常生活に取り入れれば、うっかり熱中症になるのを防ぐ役に立ちます。
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構成・文/HugKum編集部