日本の車はなぜ左側通行? その理由はサムライと関係があった【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、世界の国で車が通行する向きについて学びます。

日本が左側通行なのは、平安時代の歴史から

日本で車に乗るときは、進行方向に対して左側を進みます。しかし、なぜ左側なのでしょうか? 日本の左側通行は、むかしむかしの歴史からきています。

平安時代(約1000年以上前)や江戸時代(1603~1868年)、日本ではサムライたちが活躍していました。サムライは刀を腰の左側に差していて、道で人とすれ違うとき、刀がぶつからないように左側を歩くのが普通だったのです。右側を歩くと、刀が当たってケンカになるかもしれないので、左側が安全でした。

この「左側を歩く」習慣が日本の文化になり、馬に乗った人や荷物を運ぶ人も左側を通るルールになりました。江戸時代の大名行列でも、左側を進むのが決まりでした。

明治時代(1868~1912年)に鉄道や車が日本に入ってきたときも、この左側の習慣が引き継がれ、今でも車両は左側通行なのです。

面白いことに、このルールは日本だけでなく、琉球王国(今の沖縄)でも似たような習慣がありました。

世界では約3分の2が右側通行

では、世界ではどうでしょうか。世界の国の約3分の2、つまり65%くらいは右側通行です。

アメリカ、フランス、中国、ドイツなどは、車両は右側を走ります。一方、左側通行の国は、日本、イギリス、オーストラリア、インド、タイ、シンガポールなどがあります。

右側通行の国が多い理由は、歴史の違いです。フランスでは、ナポレオンというリーダーが右側通行を広めました。彼の軍隊は左手で剣を持つ兵士が多く、右側を進むほうが戦いやすかったからなのです。このルールがヨーロッパや他の国に広がり、右側通行が主流になりました。

でも、イギリスは日本と同じく左側通行の伝統が強く、昔の騎士たちが左側を歩いた習慣が残りました。イギリスが統治していたオーストラリアやインドも、その影響で左側通行になったのです。

左側から右側に変えた国も

かつては、左側通行の国がもっと多くありました。しかし、車の普及や国際的なルールの影響で、右側通行に変えた国もたくさんあります。

たとえば、スウェーデンは1967年に左側から右側に変わりました。変更の当日、朝4時に全国の車が一斉に右側に移動したのです。

左側通行と右側通行、どちらがいいかは「慣れ」の問題です。日本では左側が普通ですし、アメリカでは右側が普通。どちらもその国の歴史や文化に合っていて、ルールを守れば安全に移動できます。

ただ、旅行で違う国に行くと、車のハンドルが逆だったり、いつもと反対側を走ったりするため、最初はビックリします。日本からアメリカに行くと、右側を走る車に慣れるまでドキドキします。逆に、イギリスに行くと日本と同じ左側通行なので、なんだかほっとするかもしれません。

日本は電車の線路も左側通行が多い

日本では、電車も基本的に左側の線路を走ることが多いですが、路線によっては右側を走ることもあります。たとえば、JRの一部や私鉄では、右側を走る電車もあります。

日本の左側通行は、サムライの時代から続く特別な習慣。今後、車に乗るときには「これはサムライの名残なんだ!」と思いながら、楽しく移動してみてください。

左側通行も右側通行も、その国の物語が詰まっていて、とても面白いですね。 もし外国の友だちに「なんで日本は左側なの?」と聞かれたら、サムライの話を教えてあげると、きっとびっくりするでしょう。

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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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