「百ます計算」などの「隂山メソッド」が多くの学校・家庭で成果をあげている隂山英男先生が、子どもの学力を家で伸ばす方法について教えてくださるコーナーです。今回のテーマは、漢字を使える力の鍛え方です。
覚えた漢字を使えるものにするために
熟語や短文に触れさせましょう
1年生の国語では、80字の漢字を習います。漢字の学習について、ときおり保護者から寄せられる相談に、「うちの子は、テストでは漢字が書けているのに、普段の文章ではせっかく書けるはずの漢字を使わない」というものがあります。みなさんのお子さんはいかがですか?
本来、子どもにとっては、新しく知ったこと、身に付いたことを使うのはとても楽しいはずです。それを使わないということは、漢字が「身に付いていない」ということです。テストで漢字が「書ける」ことと、生活の中で漢字を「使える」こととは、別の力なのです。
漢字の練習といえば、とめや、 はらいなどに気をつけながら、1つの字を10回ぐらいずつ書く、というものでしょう。もちろんそういった練習は大切ですが、この段階ではまだ「書ける」だけの力です。現実の読書や作文などでは、漢字が1字だけ単独で出てくることはほとんどありません。たいていは、ほかの漢字と組み合わされた熟語、もしくは文章の一部として出てきます。漢字を単に「書ける」だけでなく「使える」ようになるためには、一字一字を覚えるだけでなく、「熟語」や「短文」として漢字に触れることが大切です。
とはいえ、難しいことは必要ありません。家庭学習では、楽しみながらできる、漢字の「連想ゲーム」がおすすめです。
漢字の「連想ゲーム」のやり方
たとえば、1年生で習う「空」という漢字。これを訓読みで「そら」と読むとき、「漢字1字をくっつけて、どんな言葉が作れるかな?」と問いかけてみてください。たとえば、「青空」「大空」といった熟語がありますね。また、音読みで「くう」と読む場合は、「空中」「空気」「上空」といった熟語が出てきます。必ずしも熟語でなくても「くもり空」「はれた空」といった言葉や、「空をとぶ」といった短文でもかまいません。 「空」という漢字にいろいろな漢字や言葉を組み合わせることで、いろいろな意味に変化するのが、子どもにも理解できると思います。このようにゲーム感覚で言葉づくりを楽しむことで、子どもの脳に「イメージする能力」が育ちます。当たり前のことですが、漢字はただの記号ではなく意味を持っています。それを理解するには、漢字を一字一字で見ているよりも、熟語や短文を通して親しむことが早道なのです。
この「イメージする能力」が鍛えられると、漢字のみでなく、文章を理解するのにも役立ちます。そして、この能力は、国語だけでなくあらゆる教科に有効です。教科書をスラスラ読める子に、低学力の子はいないのですから。漢字の「連想ゲーム」、ご家庭でぜひ楽しんでみてください。
教えてくれたのは
1958年兵庫県生まれ。1980年、岡山大学法学部卒業後、教職の道へ。百ます計算をはじめ、「読み書き計算」の徹底した反復学習と生活習慣の改善に取り組み、子ども達の学力を驚異的に向上させた。その指導法である「陰山メソッド」は、教育者、保護者から注目を集め、「陰山メソッド」を教材かした『徹底反復シリーズ』は、総計770万部の大ベストセラーとなっている。現在、YouTube『陰山英男公式チャンネル』で授業や講演を公開して注目を集めている。
編集協力/小倉宏一(ブックマーク) 撮影/奥田珠貴 出典/小学一年生