性被害から子どもを守るための「タッチ」のルール。小学校入学前に我が子に教えたい

幼い子どもは誰にでも抱っこしてもらい、肌に触れてもらうことで安心感を得る頃があります。しかし、就学が近くなってきたら、「触れる」「触れられる」タッチについて、少しずつルールを教えてあげた方がいいでしょう。性教育に詳しい藤原美保さんにアドバイスをいただきました。

適切な「タッチ」への対応を身につけよう

私達の社会文化では、人に気安く触れることはあまりありません。人に触れることについてはルールがあります。まず、触る/触られることには「安全なもの」、「安全でないもの」、そして「してほしくない」など「望まない」ものがあることを理解し、適切な対応を身につけられるようにしていきましょう。

そして「安全でないもの」、あるいは「望まない」タッチをされたときには、どのように対応したら良いのかを幼い頃から子どもと話し合うことが大切です。

触りたがる子には、違うコミュニケーションの取り方を教えて

子どもの中には、他者の髪や衣服、体などに突然触る子がいます。突然触ることによって、不快な気持ちになる人がいることを説明し、相手の注意を自分に向け、「髪の毛を触っていい?」「手をつないでいい?」などと、相手の「同意」を得てから相手に触ることを促していきましょう。

日常生活の場面でも相手に触る前に声をかけることや、コミュニケーションをより適切な形で取る方法を伝えていきましょう。なかには、友好な気持ちを伝えるのにすぐにハグをしたり、小学生になってもおとなの膝の上に座ろうとする子がいます。ハグより握手にする、膝に座るのではなく対面で話をするなど、適切なコミュニケーションや人との距離の取り方について具体的に伝えていきましょう。

 拒絶することも自分の「権利」と教えよう

反対に自分が、安全でない方法や望まない方法で触られた時には、「NO」と言って拒絶して良いことを説明しましょう。子どもの中には、拒絶をすること=“あなたが嫌い”という意味だと思っている場合や、拒絶することは相手を嫌な気持ちにする“悪いこと(してはいけないこと)”だと思っている場合があります。

しかし、自分自身の安全や健康を守るための拒絶は、誰にも等しく与えられている権利です。相手を突き飛ばしたり悲鳴をあげたり、暴力や暴言ともとられるような拒絶でなく、落ち着いた言葉で相手に伝えること。それを受け入れてもらえないときには保護者など自分を守ってくれる大人に相談することを、繰り返し伝えましょう。

この「タッチ」の教育は、将来的にDVやデートDV、性被害を防ぐことにもつながる内容なので、しっかり理解できるように伝えてください

自分も相手もしていい。4つの「安全なタッチ」

安全なタッチとは、自分も相手もそれをしてもいいと思える(合意がある)タッチです。

安全なタッチをすることで、相手に気持ちが伝えられることも。

1 健康やルールを守る、必要なタッチ

必要なタッチとは、健康や清潔、ルールを守るためにするタッチのことです。例えば、病院で診察を受ける時やお風呂に入って身体や頭を洗ってもらう時、美容院で髪を切ったり、洗ってもらったりする時です。

2 ほっとするやさしいタッチ

 “大切にされているな”と思うことができ、“安心だな”、“うれしい”という気持ちになるタッチのことです。

これは人によって違うこともありますが、例えば、大好きな人に頭をなでたり、ぎゅっとハグをしたりすることです。

子どもが愛され、気遣われるように感じるタッチは重要です。また、「大丈夫」と「大丈夫ではない」タッチをされた時に感じる可能性のある「気持ち(感情)」について話すことも役立ちます。

 

3  自分も相手も楽しい気分や笑顔になるタッチ

楽しい気持ちやうれしい気持ちがいっぱいのときに、“私もあなたも、今楽しいね。うれしいね。”とお互いが同じ気持ちであることを伝え合うタッチをすることがあります。例えば、ハイタッチや、肩をくむことがあります。

 

4 大切な人をなぐさめるタッチ

友だちや家族など、大切な人が悲しんでいるときにするやさしいタッチがあります。例えばそっと手をにぎったり、背中をさすったりすることです。

「安全でないタッチ」「してほしくないタッチ」「自分へのタッチ」を学ぶ

自分や相手が嫌な気持ちになる「危険なタッチ」

危険なタッチとは、自分や相手が嫌な持ちになるタッチのことです。自分や相手がケガをすることもあります。例えば、掴む、押す、引っ掻く、引っ張る、踏む、つねる、叩く、蹴る、ものを無理やりとるなどです。また、ムカッとしたり、やられたらやりかえしたくなるタッチは、安全ではないタッチです。

しかし、日常生活の中には、わざとではなく「うっかり危険なタッチ」をしてしまうこともあります。例えば、体操していて手を横に伸ばしたら、隣の子に手が当たってしまった。このような事は誰にでもあることです。わざとではなくても、もし安全でないタッチをしてしまったら、まず“ごめんね”と相手に謝り、“わざとじゃないんだ。”“うっかりぶつかっちゃったんだ。”と、わざとではないことを伝えるなど、対応を教えておきましょう。

触られたくない、やめてほしい「してほしくない」タッチ

タッチの中にはもう一つ「危険なタッチ」ではないけれど、「してほしくない」タッチがあります。「してほしくない」タッチとは、「触られる人」が“してほしくない”、“やめてほしい”と思うタッチのことです。それはその時の自分の「状況」や「相手」、「場所」によっても変わります。

同じ握手をすることでも、人によって、それを嬉しいと思う人もいれば、困ったな、嫌だなと思う人もいます。してもよいと思うもの、したくないと思うものは、人によって違います。

例えば、仲の良い友だちでも、汗でベタベタの手で握手は嫌ですね。頭を撫でられるのでも知らない人からいきなり撫でられたら驚きます。お母さんに抱っこしてもらうのはうれしいけれど、友達の前では恥ずかしいものです。つまり、安全なタッチの中でも、その時の状況によって「してほしくない」ことがあるわけです。

「自分へのタッチ」はプライベートな場所や場面を選ぶ

『自分へのタッチ』の注意点とは、例えば鼻、口、耳などに手を入れる、性器を触るなどの行動が頻繁に見られる場合の対応についてです。自分の身体を触ることは健全なことです。幼い子にはとても頻繁にあることですから、プライベートとパブリックな場所と場面の違いを説明し、理解させるとよいでしょう。プライベートな場所は、他の人から自分を見ることができない場所です。

例えば

扉が閉まっている自分の部屋

扉が閉じられたトイレ

扉が閉じられたバスルーム


つまり自分一人になれる場所ということです。

人に触るときには必ず「同意」を得ることをルールにする

多くの場合、人は他人から何も言われずにいきなりタッチをされると、驚いたり、嫌な気持ちになります。なので、触る前には相手に声をかけて、「同意」を得てから「安全なタッチ」ができるように練習することをおすすめします。

例えば、「手をつないでもいい?」、「握手しよう」などと、優しい言葉で聞くように練習することはおすすめです。そして体だけではなく、頭や髪の毛、その人が着ている服も、その人自身のものなので、触れる前には名前を呼ぶなど声をかけたり、尋ねたりすることが必要だと教えましょう。他人に触るには相手の「同意」が必要なのです。

児童の性的虐待とは何かを説明しよう

誰かが自分のプライベートゾーンを見よう、触ろうとする、性的な内容の話をされて不快に感じる、裸やプライベート(または性的な)部分に触れている人の写真(インターネット上のサイトを含む)を見せられるのも「危険なタッチ」です。医療機関などで身体の健康や安全を守るための検査でプライベートゾーンを見るのは例外です。

 重要なのは自分が「安全でないタッチ」「してほしくないタッチ」などの「望まないタッチ」をされそうになった時の対応です。された時にはどのように対応したら良いのか?誰に相談したら良いのか?を確認しましょう。触られそうになったら「やめて」と言う、そして逃げることの必要性をしっかり理解させてください。 それぞれの場面を設定し①やめて”と伝える。②その場からはなれる。③大人(誰につたえるのか?)に知らせる、の流れをロールプレイでやってみるのも効果的です。

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お話を伺ったのは

記事監修

健康運動指導士、介護福祉士。株式会社スプレンドーレ代表。
藤原美保さん

発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(エッセンシャル出版)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

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