日本初のイエナプランスクール認定校「大日向小学校」の1日に密着【教育は「教える」から「引き出す」へ 発育のススメ 】

教育と訳される“education”エデュケーションの語源は“educe”エデュース。「能力や可能性を引き出す」という本来の意味を知る福沢諭吉はeducatisionを「教育」ではなく「発育」とすべきと主張したそう。教える側ではなく学ぶ側が主役の「発育」はこれからの教育のコンセプトにもなっています。この連載では、そんな最先端の教育事情を紹介していきます。

日本初のイエナプランスクール認定校・大日向小学校の1日

今年4月、長野県南佐久郡佐久穂町に、オランダで普及しているイエナプラン教育の理念をとり入れた日本初の小学校が開校しました。全国から注目を集めるイエナプラン教育とは? 始まったばかりの学校生活に、おじゃましてきました。

イエナプランとは?

ドイツで生まれ、オランダで200校以上が実践する教育理念。教育メソッドではなく「20の原則」として語られる理念や、自発的な学び、年齢や考え方の違う集団で助け合いながら共生することなどを大切にしています。

 

イエナプラン教育を実践する日本初の小学校、大日向小学校。廃校になった学校の校舎をリノベーションした私立の小学校で、ここに通うために移住した家族も多くいます。

一般的な公立小学校と大きく異なる点は、異年齢グループによる学級で、1~3年生が2クラス、4~6年生が1クラス、合計3クラス70名でスタートしています。それぞれのクラスには、グループリーダーと呼ばれる担任がいます。国語や算数の基礎学習や、午後のワールドオリエンテーションに必要な情報収集などについては、担任が個人の進度に合った課題を設定し、教材を使って自主的に取り組みます。

桑原昌之校長先生「異年齢クラスにはメリットが多い」

公立小学校や教育委員会で約30年の勤務経験をもつ校長の桑原昌之先生によると、異年齢クラスには学習面でもコミュニケーション面でもメリットがあるといいます。

「子どもの成長は個人差が大きく、身長が高い子もいれば小さい子もいます。学習面も同じで、算数の問題を簡単に解いてしまう子もいれば、その逆もいる。同学年の一斉授業ではそういった個々の発達に対応できませんが、個別に課題を設定することで、得意なことをどんどん進めたり、苦手なことにじっくり向き合ったり、自分なりの進度で学習に取り組むことができます。また、年上の子は、年下の子にやり方を教えてあげるようになります。先日は、1年生が年上の子をまねし、池を飛び越えようとして失敗したときには『大きくなったらできるから大丈夫』と声をかけてあげていました。異年齢クラスでは、そんな関係性が自然とつくられます」

さらに、サークル対話と呼ばれる活動もイエナプランの大きな特徴です。子どもが輪になってクラスのルールやその日におきた出来事など、さまざまなことを話し合います。このとき、対話に参加せず遊びはじめてしまう子も出てきますが、先生は「静かにしなさい」と怒鳴ることはしません。どうしたら、みんなが話を聞ける環境になるかを子どもたちに考えさせ、意見を言い合う環境づくりに徹します。それによって低学年でも、自分の意見を言う、人の話を聞くといった対話ができるようになるのです。

「私たちは『関係性』という言葉を多く使いますが、保護者や地域の方にも学校づくりに協力していただく中で関係性を築いていくことを大切に考えています。子どもと大人、教員同士、保護者や地域の方との対話も非常に大切。対話を通して関係性を築きあげ、子どもが〝自分の居場所〟と思える楽しい学校を、みんなで一緒につくっていきたいですね」

ある日の大日向小学校

子どもたちはどんな学校生活を送っているのでしょうか?1~3年生の「シマウマ」クラスの1日の様子を紹介します。

教科別ではなく「対話・遊び・仕事(学習)・催し」を循環させる時間割。

入口に貼られた児童の詩。「シマウマ」というクラス名は、みんなで決定。

ブロックアワー 自分の進度に合った学習

ブロックアワーと呼ばれる基礎学習の時間。一斉授業ではなく、それぞれの計画に沿って自分に合った教材を使いながら自立的に学習します。年上の子が年下の子に教えてあげる様子が見られます。

おやつタイム プルーン畑でお花見

学校で借りている畑のプルーンに花が咲いたことから、この日は畑に出向いておやつタイム。カエルを捕まえたり、花の蜜を吸ったり、道中も大忙し。遠足といった特別な時間ではなく、日常にこの自然環境がある贅沢さ。

ブロックアワー やるべきことが終わった後は有意義に

学校に戻って再びブロックアワー。やるべき課題が終わった子は、本を読んだりスケッチをしたり、自分のためになることを選んで行います。教室にはさまざまな知育玩具も置かれていて、自由に手に取ることもできます。

ランチ&昼休み お待ちかねのランチタイム

学校ごはんと呼ばれている給食は、カフェとしても地域に開かれている「大日向食堂」で。約1時間ある給食&昼休み時間内に、好きなタイミングで食事。その後の昼休みは思い思いに過ごしています。

ワールドオリエンテーション&催し(学んだことの発表)

ワールドオリエンテーションはいわゆる総合学習の活動。この日は、時間を守るといった「ルール」について話し合っていました。また、催しの時間には、自由研究のポートフォリオの発表も行い、授業は終了。

日本の小学校の選択肢のひとつ

まだ始まったばかりの学校生活ですが、子どもたちは対話を重ね、密な関係性を築いてるのも印象的でした。2022年には、広島県でイエナプランを実践する公立小学校も開校予定。日本の小学校の選択肢のひとつとして、イエナプランが認知される日もそう遠くないかもしれません。

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『小学一年生』2019年8月号 別冊『HugKum』 写真/中村力也 構成・文/山本章子

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