使える英語とは何か
みなさん、こんにちは。
料理研究家の行正り香です。
今回から3回にわたって、「使える英語の身につけ方」というテーマでお話をしたいと思います。きっと、みなさんの中には、今の時代、英語くらい話せるようにならなくちゃ!と思われている方も多いでしょう。
私の場合は日本ではなく、アメリカで「使える英語」を手に入れ、社会人になってからも、英語を使う仕事にたずさわりました。でも子供が生まれてからは、「留学は高値の花」であることに気がつきました。海外ではなく、日本で「使える英語」を手に入れてもらわなくてはいけないので、幼稚園のころから英会話学校や塾に通わせました。でも最終的には、「使える英語」は私が学んだ方法で学んだ方が効率はいいという結論に達し、最終的には自分が学んだ音読法をまとめた英語教材「カラオケEnglish」を作ることを決心しました。
「使える英語」を手にいれる具体的方法については、また次回詳しくお伝えするとして、まずは「使える英語」とは一体何か?ということを考えてみましょう。「使える英語」、それは一言でいうと、「聞く・話す・読む・書く」の英語4技能と呼ばれるスキルを、バランスよく備えていること、そしてその英語が世界で認められる基準であることだと思います。
「英語が聞けたら話せようになる」は大まちがい
まず多くの日本人は、「英語の4技能」を身につけるにあたって、大きな勘違いをしていることがあります。それは…
英語が聞けたら、自然に話せる
英語が読めたら、自然に書ける
ということです。でも、これは、大きな間違いです。英語を聞く脳と、英語を話す脳は異なります。英語が聞けるからといって、自然に話せるようになることはありません。それは、ピアノの楽譜を読める人が、必ずしもピアノが弾けるとは限らないのと同じことです。
英語が話せるということは、知っている単語を英語のルールに並び替えて、それを音声化して、自分の声帯を使って声にだすこと。ここまで達するには、何度も声に出して英文を読む音読トレーニングが必要なのです。
幼少期はたくさんの英語の音を聞く
そのうえで、幼少期のうちに取り組みたい英語教育としては、「聞く」を重視した英語学習です。よく、子供向けの英語教室には、アルファベットを書かせる教室もありますが、子供が小さいうちは、英語の音に触れることが何より大切です。なぜなら、英語って下手に読めるようになると、自分の知っている音で、ローマ字読みしかしなくなるから。幼少期のうちは、「英語の動画だったら、いくらでも見ていいよ」と言ってあげるくらい、たくさん英語の音を聞かせることをお勧めします。
英語教育は小学4年生がターニングポイント
もうひとつ。子供の英語教育において、親が知っておいた方がいいことがあります。
それは、本気で英語を身につけさせたいと思っているなら、中学校に入るまでは、英語の学習を続けることが大事だということです。
習い事や受験で英語を辞めてしまう子が多い
今は、幼児期からの習い事として、子供を英語教室に通わせる方が多いですが、一方で、小学3年生〜4年生あたりで辞めてしまう子も多いです。理由としては、中学受験に向けて塾通いがはじまったり、サッカーなどのスポーツの習い事なら、高学年になるにつれて、練習や試合が増えてきたり、と理由はさまざま。子供たちの中でも、他の習い事の優先順位が高くなって、英語へのモチベーションがだんだん下がってしまう、そしてこの時期に辞めてしまう子が多いのです。
しかし、3~4年生くらいで英語を辞めてしまうと、せっかく幼児期から英語を学んでいても、子供たちは学んだことを忘れてしまう傾向があります。中学校に入って英語を本格的に学ぶまで、英語の学習にブランクができてしまい、その間に忘れてしまうんですね。
これは、帰国子女の子供たちでも、よく似た傾向があります。たとえば、小学3年生まで海外で暮らして英語を話せていても、4年生くらいで日本に帰国し、何もしないまま過ごしてしまうと、大学生になった時に英語は話せないと言った状況です。。
英語学習はブランクを作らず続けること
英語教育においてもっとも大切なことは、私は小学4年生の壁を越えることだと思います。4年生といえば、ちょうどいろいろなことの論理がわかるようになる年齢。英語を論理で理解できるタイミングです。理論がわかって、はじめて情報は脳に定着するのではないかと思います。せっかく英語を幼少期から始めたならば、そのタイミングまで英語学習を続けることが大事だということです。
親にも覚悟が必要!
だから、英語教育には親の覚悟も必要です。うちの場合は、「他の習い事は辞めてもいいけど、英語は必要だから辞めてはいけない」と、子供たちに話してきました。長いスパンで英語教育を続けるという視点を、親も持っていることが大切になってきます。
英語教育の到達ポイントを知っておこう
英語は、あくまでもコミュニケーションのひとつですし、嫌いにならず、楽しく学ぶことが大前提です。しかし、昨今は、高校や大学入試において、子供たちの英語力が問われるようになってきました。子供の英語教育として、何歳までにどれくらいの英語力を身につければいいのか。その目印になるものを紹介しましょう。
「CEFR(セファール)」と呼ばれる世界基準
まず、英語のコミュニケーション能力の指標に「CEFR(セファール)」と呼ばれる世界基準があります。最近は、日本でもその基準を用いるようになってきました。実際に受けるテストは、英検やTOEIC、TOEFLなどですが、これらの試験はCEFRに対応しており、CEFRのレベルでいうと、どの基準になるのかを知っておくことが大切です。
上記の表を見てもらうとおわかりですが、英検3級だとCEFRの「A1」レベルになり、内容としては、だいたい中学3年生までの英文法くらい。つまり、英検3級に合格すれば、CEFRで「A1」レベルだといえるわけです。大学受験がこのCEFRを基準とした民間試験を活用しない方向となり、「4技能試験が延期される!」と喜ばれた方もいらっしゃいましたが、社会に出て損するのは、4技能英語を学ばずに社会に出る子供たちです。私の子供には、日本基準ではなく、世界基準でどこまで行けるか?目標を定めて学んでほしいと思っています。
英検準2級、CEFRなら「A2」レベル
まず最初に、子供たちの受験に関わってくるのは、英検準2級、CEFRの「A2」レベルです。私立の高校入試では、この「A2」レベルに達していれば加点がもらえるなどの基準もあるので、中学3年生の高校受験前までには、このレベルに達しておけたら安心です。
また大学入試であれば、CEFRの「B2」レベルを持っているとAO入試で評価されます。大学によっても異なりますが、民間試験のスコアを重視する学校も増えています。親が体験した受験とは、違うスタイルの受験の仕組みができているので、英語を子供に学ばせて、その技能をどのように受験に活用するか?親が視野を広くして、選択肢を増やしてあげるのも重要です。
英語教育の今を親が知ること
私自身は、テストで良い点を取るため、入試に有利だから英語を学ばせるということには疑問を感じていました。でもCEFR基準にのっとり、4技能で使える英語を手にいれるなら、それは子供の未来に役立つと感じました。それは私自身が、結局短大や大学で、世界基準を目標に学び、それが社会人として生きる上で役に立ってきたという体験からかもしれません。
小さいお子さんを抱える保護者の方には、まず、英語教育は今、どのように変わっていて、どのように評価されるのか、知っておいていただきたいと思っています。大きな流れを知っておくと、いつまでに、何をすればいいのか、どれくらいのレベルが必要なのかがわかってくると思います。
行正流「使える英語の身につけ方」、次回へ続きます!
行正り香
料理研究家。福岡市出身。高校時代にアメリカに留学後、カリフォルニア大学バークレー校の政治学部を卒業。帰国して大手広告代理店に勤務しながら料理本を出版。退職後は「なるほど!エージェント」を立ち上げ、料理家としても、テレビや雑誌などで幅広く活躍中。現在は英話学習アプリ開発「カラオケEnglish」なども手がける。『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』(ともに講談社)など、著書は50冊以上。また、献立づくりの悩みを解決するアプリ「今夜の献立、どうしよう?」でレシピ提案やコラムや料理のコツを動画で配信している。行正り香さんのInstagramはこちらから。
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撮影/平林直己 取材・文/神谷加代