フジテレビ系で大人気放映中のクイズバラエティ番組「今夜はナゾトレ」で、東大ナゾトレの問題を制作している「アナザービジョン」が、『小学8年生』夏号で「宿題ナゾトレ」を出題しています。
前代表の松丸亮吾さんは、番組内で謎解きのヒントと回答をとてもわかりやすく解説してくれます。
頭が良くてさわやかな好青年。どのような子ども時代を過ごしたのでしょう。
目次
松丸さんはどんな子供でしたか?子供時代にハマったものは?
4人兄弟の末っ子。どうしたら兄たちに勝てるか、いつも考えていました。
「ボクはすごく負けず嫌いな子どもでしたね。4人兄弟の末っ子で、兄が3人もいたのはとてもありがたいことなんですけど、兄弟がいるとどうしても比べるんですよね。兄たちと比べて、自分のほうが優位な部分と負けている部分がはっきりわかるんです。
兄弟でよく対戦ゲームをして遊んでいましたが、たいていはボクが負けるんですよ。
「負けず嫌い」は兄たちとのゲームで培った
ボクより兄のほうが、そのゲームでたくさん遊んでいるからということはもちろんあります。それにゲームは、年齢を重ねているほうが、コミュニティのレベルが高いんですよね。つまり、中学生のグループと小学生のグループなら、中学生のグループのほうが強いということ。兄は強い友だちとしょっちゅう対戦ゲームをしていたので強いに決まっているんですよ。当時小学生だったボクが負けるのはしょうがないんです。でも、ボクは負けるたびにものすごく悔しかった。負けず嫌いになったのは、そのとき味わった思いが根底にあると思います。それでも簡単にはあきらめず、どうやったら兄たちに勝てるのか、いつも考えていましたね。
ご両親はどんな子育てをされましたか?
「勉強しろ」とうるさく言ったことがない親でした
大事なのは、負けて悔しい思いをした後に、「どうしたら勝てるんだろう」と考えることにあると思うんです。これは勉強も同じですよね。問題が解けない、テストの点数が伸びない、「それならどうすれば点が伸びるんだろう」と考えることに大きな意味があると思うんです。
ボクは勉強でも負けず嫌いだったから、自分自身でそう思えたことがよかった。けれど、これを親に「もっと点を伸ばしなさい」「勉強できなくて悔しくないの?」なんて言われていたら、おそらくやらなかったでしょうね。それは親の考えを強制的に押し付けられているに過ぎないから。できなくて「悔しい」という思いを抱く前に、「うるさい」って思っちゃいますよね。
幸せなことに、ボクは親から「勉強しろ」とうるさく言われたことがなかったんです。むしろ逆に「勉強するとどんな得をするのか」「どう楽しいのか」ということを教えてくれました。
「東大へ行きたい!」と思ったきっかけがあるそうですね
兄が行けなかった東大に行けば、「兄に勝てる!」と本気で思いました!
ボク、小学3年生のときの夢が「東大へ行くこと」だったんですよ。最初は「勉強できたら、いい大学に入れるよ」と親に言われて、「そうなのかなぁ・・・」と思っていたくらいだったんですが、ある時に本気で取り組もう、と思い始めて。
というのも「兄に負けたくない」という気持ちが一番強かったちょうどその時期に、長男が東大に落ちたんです。とにかく兄たちに負けたくなかったボクは、「ボクが東大に入ってやる」って思ったんです。そうすれば兄に「勝てる!」ってね。
ただそれはきっかけであって、やはりそこからの親の働きかけも大きかったと思います。両親、とくに母からは「大学へ入ったほうがいい」、「勉強はしたほうがいい」と、ずっと言われていました。それから、勉強は教科書通りにやるものではなく、「大人になった自分の役に立つように学ぶものなんだよ」って。
大人になると、教科書に書かれている公式を当てはめて解けるような問題なんて、ひとつもないんですよ。ただそれは勉強そのものが役に立たないということではなくて、勉強を通して、難しい問題を解けるまで取り組むことで培われる精神力や、自分で考えていろいろな「引出し」から問題にアプローチをかけるという力が、将来ものすごく役に立つのだということを、母はよく言っていましたね。だからこそ、勉強しないと将来困るのだなということがわかっていたし、何よりも、しっかり勉強すれば将来に必ずつながるんだということを意識していたと思います。
とはいっても、まだ小学3年生でしたから、当時はそこまで明確に思っていたわけではないです。ただ、今から勉強しておけば、いろいろと得なんだろうな、将来の選択肢や間口が広がるのかなという程度ですよ(笑)
でも、そう思えたのは、「勉強しなさい」とボクに強制しなかった親のおかげ。親が「勉強は楽しくて、しかも役立つんだよ」と思わせてくれたので、ボクはここまで伸びたのだと思っています。
「勉強しなさい」と言うより子供に効果的なやり方って
両親のどちらかと言えば、母親のほうが教育熱心でした。父親は完全に放任主義。その分というか、母は父とは対照的に教育熱心でした。
勉強は絶対に強制しないけれど、よく怒られました。母は感情的になるというよりは、淡々とした口調で、ボクが申し訳ない気持ちになるような、「やらなきゃよかった」と後悔させるような怒り方をしてくるんです。
例えば、母が大事にしていた鉢植えを落として割ってしまったとしたら、「どうして割っちゃったの!?」と責めるのではなく、「この鉢植え、お水あげてどんな花が咲くか楽しみにしていたんだけどな、見られなくて残念だな」みたいなことを母は言うんです。そうすると、ボクは心の底から悪かったなと思って、「ごめんなさい」と謝る。諌められるかんじですよね。
勉強もそうでした。母はボクが勉強していないことを怒るというよりは、「何がいけなかったのかな?」って考え込むタイプだったんです。ボクができないことをボクのせいにするのではなくて、「私の教え方がよくなかった」って、自己反省するんです。母にそう言われてしまうと、一生懸命やるしかないですよね、勉強(笑)。「ボクがんばるから、お母さんの教え方が悪いわけじゃないよ」ってね。「勉強しなさい!」と子どもを叱るより、効果的だと思いますよ! ボクの経験で実証済みです(笑)。
ゲームが大好きだったそうですが、そのことでどんな力が身についたと思いますか?
大好きなゲームで考える力が身についた!
ボクは小さいころからゲームがすごく好きで、どちらかといえば、ゲームで考える力が身についたのかなと思っています。だから、昨今のゲームに対する社会の牽制的な考え方があまり好きではなくて。「ゲーム依存症」みたいな言葉も出てきてしまい、またゲームのイメージが悪くなってしまったなと思うと、すごく残念です。
ボク、ゲームは考える力と、自分で考えるクセをつける恰好の機会だと思っているんです。例えば、RPGなら、弱いキャラからスタートして、いろいろなことをしながら、そのキャラをレベルアップさせていくゲームですよね。そして、武器を変えたり、アイテムをつかったりしてモンスターを効率よく倒す。この一連のアクションは、1つの問題が与えられて解決していく過程だと思うんです。「最後に出てくるラスボス(最後に登場するボスキャラ)をどうやって倒そうか」というのを、ものすごく考える。パーティを組み替えたり、回復魔法の人がいた方がいいかなとか、魔法で遠くから攻撃できる方がいいかなとか、自分なりに考えて組んでいく。武器にしても、「この武器は属性はあるけど、攻撃力が低めだ」とか、「これは攻撃力が高い」とかね。こうして説明していくと、改めてRPGって、ものすごく考えないとできないゲームだなと思います。
「ゲームを没収」は子どものモチベーションを下げるだけ
そう考えると、やっぱりゲームそのものが「悪」ではないと思うんです。
親御さんが子どもにやらせたくない理由って、つき詰めるとゲームばかりやっているから、「勉強もしない、寝るのも遅くなって…」不安、心配になるということではないでしょうか。
ゲームに限らず、ボクは好きなことはどんどんやらせてあげてもいいと思うんです。ただ、やりたいことだけをやって、やらなくちゃいけないことをやらないのはまずいですよね。
例えば、宿題をやらずにずっとゲームをやっているのはNG。そこは叱ってもいいと思うんです。ただ、子どもが宿題を終えてからゲームで遊ぶのであれば、そこは止めなくてもいいのかなと思います。
ゲームを存分に楽しみたいから、勉強も一生懸命!
ボクの場合もそうでした。「ゲームはしてもいいけれど、そのかわり勉強を終わらせないとゲームはできないよ」というシステムだったんです。だから、勉強をせざるを得なかった(笑)。ゲームをしたい、あの続きが気になる、そしたらもう、宿題するしかないじゃないですか。だから、ゲームを思う存分楽しみたいから一生懸命勉強したという側面もあります。「宿題やったよ」「オッケー、じゃ、ゲームやっていいよ」と。勉強からの解放感もあって、ある意味清清しい気持ちでゲームに熱中していましたね。
家庭でのゲームのルールで多いのは、「時間を決めてやる」「約束を守れなかったらゲームを没収」といったことではないでしょうか。けれど、ボクはこうしたやり方は逆効果ではないかなと思うんです。
もしボクだったら、「ゲームを没収」が一番きついかな。もちろん、約束を破った自分が悪いけれど、勉強も含めて、すべてのモチベーションが下がっちゃうと思うんです。ゲームができなくてテンション下がっているところに、「勉強しなさい」って親から言われたら、イライラしちゃうでしょうね。「どうして勉強しなきゃいけないの!? ゲームできないのに!!」ってね。
だから、ゲームの大好きな子どもたちの代わりに、親御さんに伝えたいことは「ゲームを取り上げないでほしい」ということです。子どものモチベーションって、些細なことで下がっちゃう。約束を破ったら、ゲーム没収以外のことでお願いできるとありがたいですね。
読書経験はいかがでしたか?子供時代に読んだ本について聞かせてください。
クイズ本の、解けた瞬間「ああ楽しい!」って瞬間のとりこに
ボク、小説はあまり読まなかったんですけど、クイズ本はものすごく読んでいましたね。とにかくクイズを解くのがものすごく好きでした。それこそ、「東大ナゾトレ」の謎解きが好きだっていうのと同じだと思います。答えが合っていた瞬間が楽しいし、特別な知識がいらなくても解けることがうれしかった。そのときの経験が今のボクの原点なのかもしれませんね。
いわゆる一般的なクイズは、知識を入れないと問題は解けませんよね。例えば、「第2代目内閣総理大臣の名前は?」みたいな。ひらめきとかではなく、知識として知らないと絶対にわからないですよね。でも、謎解きは知識がなくても解けちゃう。実際、ボクたち(アナザービジョン)が考える謎解きは、小学生にはわかっても、大人がなかなか答えられないものもたくさんあるんですよ。そして、わかった瞬間「ああ、楽しい!」って思うんです。
番組「東大ナゾトレ」は小学生の子どもたちに人気があると聞きました。それはすごくうれしいし、光栄なことです。この夏休みも、ぜひ謎解きの問題作りに挑戦してみてもらいたいですね。あ、これ自由研究にもなるかもしれませんよ!
(番外)松丸さんが小4の時に作った図形問題に親子で挑戦してみよう!
小学生のころ、算数が大好きだったという松丸さん。ドリル問題の代わりに、自分で問題を作ることにはまっていたそう。これは、松丸さんが小4のときにつくった、六角形の面積を求める算数問題。お子さんと一緒に挑戦してみてください!
わかりましたか? 正解は、記事の一番最後をご覧ください!
東京大学謎解き制作集団「アナザービジョン」
謎解きの楽しさを世の中に広めるため、東京大学の学生が設立したサークル団体。現在総勢150名のメンバーが、問題作りに取り組んでいる。謎解きのほか、脱出ゲームのプロデュースや学園祭、企業などとの楽しいコラボイベントも多数行っている。松丸さんは、2代目代表として、サークルを盛り上げる。
東大ナゾトレ
東京大学謎解き制作集団 Another Visionからの挑戦状(第1巻~5巻)
各1000円+税(扶桑社)
今夜はナゾトレ
フジテレビ系列(一部地域を除く)/毎週火曜日夜7時より、大人気放映中!
公式サイトはこちら
【正解】
記事監修
東京大学に入学後、謎解きサークルの代表として団体を急成長させ、イベント・放送・ゲーム・書籍・教育など、様々な分野で一大ブームを巻き起こしている”謎解き”の仕掛け人。現在は東大発の謎解きクリエイター集団RIDDLER(株)を立ち上げ、仲間とともに様々なメディアに謎解きを仕掛けている。監修書籍に、『東大ナゾトレ』シリーズ(扶桑社)、『東大松丸式ナゾトキスクール』『東大松丸式 名探偵コナンナゾトキ探偵団』(小学館)『頭をつかう新習慣! ナゾときタイム』(NHK出版)、など多数の謎解き本を手がける。