重曹は環境への負担が少なく、人体にも優しいといわれます。お掃除にも使えるのですが、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。水回りを中心に、重曹を使ったお掃除方法を紹介します。重曹の意外な利用法とあわせてチェックしてみてくださいね。
重曹とベーキングソーダは同じもの
エコなお掃除方法として、雑誌やテレビで重曹が紹介されています。「重曹って何?」という人は、お菓子作りなどで使われるベーキングソーダを思い出すとよいでしょう。
重曹とベーキングソーダは、どちらも「重炭酸ソーダ」と呼ばれるものです。化学名を「炭酸水素ナトリウム」といい、食塩(塩化ナトリウム)と二酸化炭素から作られます。
重曹でのお掃除について知る前に、そもそも重曹とはどのようなものかを確認しておきましょう。
重曹には3種類ある
一般に「重曹」と呼ばれるものには、次の3種類があります。
- 医療用
- 食用
- 工業用
これらの違いは「純度」にあります。
医療用の重曹は純度100%です。主に点滴や胃薬、火傷の治療などで人体に使用されるため、不純物ゼロのものが使われます。
食用の重曹は、お菓子の生地などを膨らませる「ふくらし粉」として使用されます。こちらも口に入れるものなので、高い純度が必要です。食品衛生法のもとで作られた、純度98~99%のものが多いでしょう。
掃除では工業用の重曹を使うのが一般的です。純度は95~98%ほどで、医療用や食用と比較すると不純物の割合が多くなっています。
家庭でのお掃除で、医療用・食用の重曹を使うのは問題ありません。しかし、純度で劣る工業用の重曹を、他の用途で使うのは避けたほうが無難です。
どんな特徴があるの?
重曹の特徴としては、以下のようなものがあります。
- 非水溶性
- 発泡性
- 弱アルカリ性
- 人体への安全性が高い
重曹の粒子は、細かく丸いのが特徴です。水に入れても、溶けてしまうことはありません。また、重曹を温めるとシュワシュワと泡が立ちます。これは、重曹が加熱されると二酸化炭素を発生する性質を持つためです。
加えて、弱アルカリ性というのも重要な特徴の一つです。酸性のものに重曹を入れれば、中和作用が働きます。
さらに、重曹は人体に影響が少ない物質です。皮膚に触れても危険性はないため、悪影響を気にせずに使えます。ただし、どんなものも容量を守って使用することが大切です。
このほかに吸湿・消臭効果などもあり、重曹の汎用性は高いといえます。
お掃除に使う方法三つ
前述した重曹の性質が、お掃除のときに大きな威力を発揮します。ただし、お掃除したい場所によって使い方は異なるため、事前によく確認しておきましょう。
粉末のままクレンザーのように
粒子が細かく水に溶けない重曹は、クレンザー(研磨剤)として使用するのが一般的です。気になる汚れに重曹をかけてこすれば、研磨作用で簡単にきれいにできます。
例えば、茶渋の付いたカップ・焦げ付いた鍋・フライパンなどには、重曹を粉末のまま振りかけてみましょう。そのままスポンジでこすれば、こびりついた汚れも落としやすくなるはずです。
また、粉末の重曹は消臭剤としても使えます。臭いが気になる排水口や三角コーナーなどにたっぷりと振りかけましょう。重曹の消臭効果により、悪臭はかなり抑えられます。
このほか、臭いがちな冷蔵庫や靴箱などにも重曹がおすすめです。容器に入れた重曹の粉末を置いておくだけなので、手間もかかりません。
水に溶かしてスプレー
重曹を水に溶かして作った重曹スプレーは、家中のあらゆる場所で使えます。作り方は簡単で、「水と重曹を混ぜるだけ」です。水100mlに対し、重曹を小さじ1杯ほど入れましょう。できた溶液を空のスプレーボトルに入れて汚れに吹き付けたら、あとは拭き取っておしまいです。
前述の通り、重曹は人体に触れても問題はありません。洗剤を使いたくない場所や、小さな子どもがいる家庭でも不安なく使えます。
重曹スプレーがあれば、キッチンからお風呂やトイレ、さらにはフローリングの汚れ落としにまで使えます。簡単に作れるので、ぜひ常備しておきたいところです。
少量の水を混ぜてペースト状に
時間がたってしまった汚れや頑固な汚れの中には、重曹スプレーでは落としきれないものもあります。このような場合は、重曹ペーストを使うのが効果的です。
重曹ペーストを汚れに密着させてしばらく置いておくと、頑固な汚れを浮かせてくれます。その後にスポンジなどでこすれば、こびりついた汚れもきれいに落とせるはずです。
重曹ペーストを作るときは、重曹と水を「3:1」の割合で混ぜましょう。作ったあとはすぐに使うのが望ましいですが、密閉容器に入れておけば数日間の保存も可能です。
ただし、乾燥して固まりやすいため、なるべく早く使い切ってくださいね。
重曹を使った水回りの掃除方法
家中のあらゆる場所に使える重曹ですが、特に水回りの掃除では大活躍してくれます。重曹の持つお掃除効果を最大限引き出せるよう、まずは適切なお掃除方法を確認しておきましょう。
キッチン
重曹は弱アルカリ性のため、酸性の油汚れが多いキッチン掃除に適しています。汚れの軽い場所は重曹スプレーを吹き付けて拭き取れば、簡単に落とせます。
一方、こびりついた油汚れには重曹ペーストが有効です。直接塗布してしばらく置き、汚れが浮いたらこすり落としましょう。
また、焦げ付いた五徳などは、重曹を使って煮るのがおすすめです。鍋に100mlの水に対して小さじ1杯の割合で重曹を入れ、五徳と一緒に火に掛けましょう。10分程度煮て冷ましたら、焦げ付きが落としやすくなります。
このほか、ヌメリが気になる排水口は「重曹+お酢」できれいにできます。排水溝に重曹を振りかけ、お酢を加えて30分程度してからお湯で洗い流せば、掃除は終了です。
お風呂
お風呂に付きやすい手垢や皮脂汚れも酸性なので、弱アルカリ性の重曹で落としやすいです。
日々のお掃除では、浴槽・壁・床面などに重曹スプレーを吹き付けて拭き取りましょう。小まめに掃除していれば、お風呂をきれいに保つのは難しくありません。
また、風呂桶やイス、床や壁の境目などは、頑固な汚れが残りやすい場所です。重曹スプレーで対応できない場合は、重曹ペーストを使いましょう。気になる汚れに直塗りして20~30分後にこすり洗いをすれば、きれいになるはずです。
さらに、排水溝やパイプなどのお掃除は、キッチンの排水口と同じく、「お酢+重曹」を使うと手間なく汚れが落ちやすいでしょう。
トイレ
トイレの黒ずみやヌメリなども酸性の汚れです。そのため、トイレのお掃除でも重曹が大活躍してくれます。
毎日の掃除には重曹スプレーが効果的です。トイレの壁や床、ドアノブ、便器などに使えます。
ただし、掃除する箇所に直接スプレーすると、重曹が残ってしまう恐れがあります。トイレ掃除をするときは、まずペーパー類にスプレーしてから拭いてくださいね。
便器の中は重曹スプレーを振りかけて数分待ち、ブラシでこすればピカピカになりますよ。
なお、便器のふち裏などに付着しやすい尿石汚れはアルカリ性です。弱アルカリ性の重曹を使用しても落とせないため、酸性の洗剤を使いましょう。
意外なところでも使える
家中のお掃除に大活躍する重曹ですが、そのほかにも意外な使い方ができます。重曹の汎用性の高さが分かる、お掃除以外の使い方を見ていきましょう。
口臭や虫歯予防に
まずおすすめなのが、重曹をオーラルケアに使うことです。
口臭が発生したり虫歯ができたりするときは、口腔内が酸性に傾いています。弱アルカリ性の重曹で中和させることが、口臭や虫歯予防につながります。
口臭や虫歯が気になる人は、就寝前や起床後、食後などに重曹水でうがいするのがおすすめです。
うがい液を作るときは、500mlのペットボトルに水と小さじ1杯の重曹を入れればOKです。よく振って、重曹をしっかり混ぜましょう。
なお、重曹うがいのポイントは、頬の筋肉を使ってうがいすることです。オーラルケアなので、喉の奥でガラガラする必要はありません。30秒程度ブクブクとうがいをして、あとはそのまま吐き出してくださいね。
入浴剤の代わりに
重曹は、入浴剤代わりに使うのもおすすめです。皮脂や角質が落ちやすくなるほか、体臭予防にもつながるといわれます。体に無害なので、子どもの口に入ったとしても安心です。
重曹を入浴剤として使う場合は、浴槽に一つかみ程度の重曹を入れればOKです。しかし、せっかくなら、重曹の発砲作用を楽しめる「バスボム」を手作りしてみてはいかがでしょうか。好きなアロマや型抜きがあれば、誰でも簡単に作れます。
小さめのバスボムを作るときは、以下の材料を用意しましょう。
- 重曹(食用):40g
- クエン酸:20g
- 塩:20g
- エッセンシャルオイル:5滴くらい
- 型抜き
材料がそろったら、以下の手順で作ります。
- 塩とエッセンシャルオイルを混ぜる
- 1に重曹とクエン酸を加えて混ぜる
- 水を少しずつ加え、握れるくらいの硬さにする
- 型に入れる
- 柔らかいうちに取り出して乾燥させる
完成したら、密封できる容器で保存しましょう。エッセンシャルオイルの香りは飛びやすいので、早めに使うのがおすすめですよ。
重曹で家中ピカピカに
家の汚れは酸性のものが多いため、弱アルカリ性の重曹は大活躍してくれます。焦げ付き・油汚れ・ヌメリ・黒カビなどは、重曹で対応可能です。ペットや小さい子どものいる家庭でも安心して使えるので、常備しておくと重宝しますよ。
普段の掃除は「粉末」か「重曹スプレー」、こびりついた汚れは「ペースト」と使い分けて、家中ピカピカにしてくださいね。
構成・文/HugKum編集部