“ウィズコロナ”の世界は、私たちの生活や働き方にじわじわ浸食し、それらを変えていきました。
コロナ禍以前から、私たちにとっては、野菜や魚の値段から10%の消費税、将来給付される年金の額まで、お金にまつわる心配が絶えないのです。「支出(出費)を減らし、お金を貯める」「収入を増やす」「資産を守る」――ものの本でよく言われる解決策は、この3つ。とはいえ今節、収入アップはなかなか望めません。家庭をもち、子どもがいれば、何かとお金がかかります。どうすれば、この不安から解放されるというのーーー!?
有事の際に子どもを守れるのはあなただけ?
2020年に誕生した菅政権が目指す社会は、「自助、共助、公助」。つまり、「自分でできることはまず自分でやってみる」ことが最優先で、国の助けは最後です。有事の際も、まず自分で自分の暮らしを守らなければいけないのです。そう、つまり、子どもたちを守れるのはあなただけ(まじかあああああ)。
それなら所得アップをと、夫婦共働きで年収を増やせば保険料は上がり、子育て支援も受けられなくなる。
今の時代、家計も『守り』に入りましょう
「『収入と幸福度は比例するが、年収7万5000ドル(約800万円)で幸福度はほぼ頭打ちになる』という学説があります。とりわけ今は、コロナ禍で価値観の変化が求められている時代。何が起きても生活が維持でき、決して老前破綻(定年を待たずに家計が破綻)することないよう、家計も『守り』に入りましょう」とアドバイスするのは、政治・教育ジャーナリストの清水克彦さん。以下は、清水さんが指南する、限られた家計における出費を減らすための、いますぐ実行に移せる2つのポイントです(以下、カッコ内は清水さんコメント)。
年収1,000万円で自己破産する人の共通点
まずは、お金を貯めるための「意識改革」。
「たとえて言えば、年末の大掃除のようなもの。家の中を掃除すれば、“こんなにたくさん要らないものがあったのか”という事実に気づきます。資産と借金の“見える化”を行ない、生活費と固定費の現状を把握しましょう」
清水さんが取材してきたなかで、1000万円を超える年収がありながら自己破産してしまった人には、共通点があるそうです。それは、「なくても済むもの」に手を出してきたこと。
「健康器具や調理器具、清掃用品……“あったらいいな”という感覚で手に入れたものは、逆に言えば“なくても困らないもの”。そういうものには、極力手を出さないことが大切です。まとめ買い、ついで買い、セールも無駄使いしがちですが、クレジットカードや電子マネーなど、現金の重みを感じることがないままの支払いもやはり無駄遣いに直結するので注意してください」
会社員の頼みの綱(!?)ボーナス一括払いにも、清水さんは「いつまでも 出ると思うな 夏冬ボーナス」と警鐘を鳴らします。
死亡保障はカットしてもいい?
だけど、HugKum世代からしたら、削りたくても削れないものだってあります。住宅ローン、教育費、保険に医療費……。
「とんでもない! 家計の出費を見直すうえで重要なポイントになるのが生命保険です。私の考え方は『生命保険に入るなら必要最低限でいい』。保険にさまざまなオプションが付いているのは、お得に見せる誘い水です。ひと皿100円に抑えて、デザートはじめサイドメニューで売り上げを伸ばす回転寿司のビジネスモデルと変わらない」
将来予想されるリスク分だけ保険でカバーすれば十分、と清水さん。カット可能な保険のひとつが、専業主婦の妻の保険に付けている死亡保障です。「自分(夫)だけでなく妻が他界したら、残された子どもが大変」と考えがちですが、夫が他界したときと同様、夫に養われている妻にも公的年金の遺族年金が支給されるからです。
将来の自分への投資なら、“無駄”じゃない
今回、指南役を務めてくれた清水さんは、報道番組の記者やキャスター、プロデューサーを歴任したのち、大学院で経営学などを学んできました。自ら会社員としてさまざまな年収帯を経験し、専門家の意見を聞き、市井の声を集めたからこそ、清水さんの近著『すごい!家計の自衛策』では、ここに紹介したほかにも実践可能なお金の自衛策が次々飛び出します。
『守り』を第一に唱える清水さんですが、まだまだアクティブなHugKum世代には、こんなアドバイスもしてくださいました。
「テレワークやソーシャルディスタンスの掛け声のもと、人との対面機会が減って、時間的余裕が生まれているでしょう。この時間を自分への投資の時間と考え、大切にしてください。もちろん新たなスキルを得て、昇進や副業などで収入を増やすのもひとつです。そうでなくても自分や仕事の5年後、10年後を見据えて構想を練っておく。日々、節約できるところは節約しながら、将来収入を増やし、心を豊かにするための構想力を蓄えましょう」
取材・文/前田恵+生活編集室
消費・働き方・年金・教育費・住宅費・保険・投資・介護・医療費・・・・・・
自分をすり減らしてお金を増やすより、いまの家計を見直して豊かに暮らす、
いちばん新しい「家計の守り方」をギュッと詰め込んだ一冊!
著者紹介
清水克彦(しみずかつひこ)
1962年愛媛県生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程在学中。
文化放送入社後、政治・外信記者を経てアメリカ留学。帰国後、キャスター、江戸川大学講師、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。現在は、文化放送で報道デスクやニュース解説を務める傍ら、政治や教育問題、生き方などをテーマに執筆や講演活動を続けている。
著書は『安倍政権の罠――単純化される政治とメディア』『「政治主導」の落とし穴――立法しない議員、伝えないメディア』(ともに平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)、『2020年からの大学入試「これからの学力」は親にしか伸ばせない』(青春出版社)ほか多数。公式ホームページ http://k-shimizu.org/