子育てにお金がかかることは事実ですが、では子どもを1人育てるときに、お金はいくらかかるのでしょうか? 2人ならどうなるのでしょうか。今回は、子どもの年齢別にかかる月々のお金と、公立校か私立校かなど、教育方針別にかかる子育て費用をチェック。さらに、教育費を準備するためにしておくべきこと、子育て費用をカバーする方法もあわせてご紹介します。
目次
子どもを1人育てる費用はいくらかかる?
子育てにお金がかかることは事実です。でも、実際に子どもを1人育てるとお金がいくらかかるのか、総額を把握している方は少ないのではないでしょうか。
子どもの年齢よって子育てにかかる費用は変わりますし、公立校か私立校か、通う学校によっても金額が変わってきます。文部科学省が2019年12月に発表した「平成30年度子供の学習費調査の結果について」を参考に順に見ていきましょう。
子ども1人を育てるのにかかる費用の内訳
子育てにかかる費用には、食費、医療費、教育費、衣類・服飾雑貨費などがあります。このうち大きな割合を占めているのが教育費です。
幼稚園から高校まで、すべて公立だとすると、教育費の合計は541万円。一方、すべて私立の場合は、1830万円となり3倍強にもなります(奨学金や自治体の補助などを含まず)。
子育てにかかる年間の平均費用については、以下の記事でも解説しています。
子ども1人と、2人を育てるときの差は?
もし子どもが2人の場合、お金はどれくらいかかるのでしょうか? おさがりの服を活用したり、道具などは2人で一緒に使うなどで、衣類・服飾雑貨費、生活用品費など一部の費用は節約できそうです。
ですが、教育費や食費などは、子ども1人の場合の2倍になります。つまり、子どもが2人の場合は、子ども1人にかかるお金のおおむね2倍と考えておくほうがよいでしょう。
子どもにかかる教育費、年齢別の特徴
子どもを育てることにかかるお金は、子どもが大きくなるにつれて増えていきます。その内訳で最もお金がかかるのが、教育費と食費。成長にあわせて、学校にかかる費用や学校外での教育費用、さらに食べる量が増えていきます。
ここでは、特に教育費について取り上げ、文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査の結果について」をもとに、子どもの年齢別にどのくらいかかるのか見てみましょう。
園児
公立幼稚園なら1年間で223,647円、月額で18,637円です。私立幼稚園の場合は、1年間で527,916円、月額は43,993円になります。
私立の場合は公立の2倍以上かかることになります。
小学生
小学生の教育費も、公立と私立で大きな差が出ます。公立小学校なら年間の学習費は321,281円で、月額は26,773円ですが、私立小学校の場合は年間1,598,691円で、月額は133,224円です。
私立の小学校に通う場合は、学校でかかる費用に加え、学習塾に通うなど学校以外でかかる費用も高く、教育費全般にかかる平均額が中学や高校よりも最も高くなります。
中学生
公立中学校では年間488,397円、月額で40,700円です。私立中学校では年間1,406,433円、月額は117,203円。私立は公立の3倍近くの費用がかかることになります。
中学生は学習塾など学校外での費用が増えていく時期であり、学校外活動費としてかかる費用は、公立校の場合も私立校の場合も、あまり大きな差はありません。
高校生
公立高校の場合は、年間の教育費は457,380円で、月額38,115円。私立高校の場合は、年間の教育費は969,911円で、月額80,826円です。
私立高校に通う場合は、公立の約2倍の教育費がかかります。
大学生
大学の授業料は文部科学省のデータによると、国立大学535,800円(国が示す標準額)、公立大学は平均538,294円、私立大学は平均868,447円です。これに入学金が25~40万円ほど加わります。
さらにソニー生命保険の「子どもの教育資金に関する調査2018」では、子どもが一人暮らしをした場合の仕送り金額は、平均で月80,211円になっています。
参考:国公私立大学の授業料等の推移(文部科学省)
子どもの教育資金に関する調査2018(ソニー生命保険)
教育方針別にみる子育てにかかる費用の一覧
子どもが大きくなるにつれ、子育てにかかる費用のうち教育費の占める割合が増えていきます。そして公立校か私立校か、子どもが通う学校によってその費用は大きく異なることになります。
公立、私立でどれくらい教育費が変わってくるのか。いくつかのパターンを見てみましょう。
参考:平成30年度子供の学習費調査の結果について(文部科学省)
幼稚園から高校まですべて公立
幼稚園から高校まですべて公立だった場合、教育費の総額は最も低くなります。541万円です。
さらに大学も国公立に進めば、大学の年間学費535,800円~538,294円が4年間分と入学金が加算されることとなり、幼稚園からの総額は約800万円になります。
幼稚園だけ私立(小学校から高校まで公立)
幼稚園は私立に通い、小学校から高校までは公立校に通う場合は、635万円となります。
もし大学は国公立であれば、教育費の総額はおよそ900万円になるでしょう。
小学校・中学校だけ公立(それ以外は私立)
小学校と中学校は公立に進み、それ以外の幼稚園と高校は私立だった場合について見てみましょう。私立幼稚園と私立高校の教育費が少しアップするため、全体で788万円となります。
さらに大学も私立に進学すると、年間平均学費868,447円が4年間分加わることとなり、1200万円ほどになると予想できます。
幼稚園から高校まですべて私立
幼稚園、小学校、中学校、高校まですべて私立だった場合は、教育費が最も高くなり、1830万円です。幼稚園から高校まですべて公立だった場合は541万円ですから、その差は1290万円にもなります。
おまけに大学も私立の場合は、平均で2200万円になると予想されます。
大学で下宿する場合
大学に進学すると、学費以外の費用も考えなければなりません。もし自宅から遠く離れた大学に進学すると、一人暮らしや寮生活を送ることとなり、そのための下宿費用がかかります。
東京の大学や専門学校に通い、一人暮らしをしている子どもへの仕送り額は、月額平均95,000円。全国平均はこれより約2万円ほど低くなります。どの地域の学校に進学するかによって、仕送り額は変わってきます。
参考:仕送りに関するアンケート調査(株式会社LeoSophia)
留学をさせる場合
高校や大学のときに留学を考えるなら、その費用も追加されます。留学費用は、留学先の国、学校、留学期間によって異なりますが、1年間の相場は200万円以上と言われています。
学生時代に留学経験がある人に行われたアンケートでは、留学の期間は3か月未満が全体の61.0%で、かかった費用については66.5%が100万円以下と回答しています。
子育てに必要な貯金はいくら?
2019年からは幼稚園や保育園に通う子どもへの幼児教育の無償化、2020年からは大学、短大、高等専門学校、専門学校に通う学生への高等教育の修学支援新制度が始まりました。要件に該当する場合には学費の負担を軽減できるかもしれませんが、備えは必要です。
とはいえ、18歳未満の子どもがいる家庭で貯蓄がない家庭も14.6%に達しています。子育て世帯は、どのくらいの貯金が必要になるのか、目安の金額は、下記の記事でご確認ください。
教育費を準備するためにしておくべきこと
一度に多くのお金を準備することは難しいので、教育費のためにコツコツと時間をかけて準備しましょう。お金を貯めるには、時間が大きなちからになります。
学資保険や財形貯蓄をはじめる
学資保険は、子どもの教育費用のための貯蓄型保険です。高校入学、大学入学などのタイミングで祝い金や満期金を受け取るタイプがあります。また契約者に万一のことがあっても学費を確保できるような仕組みがあります。
会社員の方なら、財形貯蓄や金融機関の自動積立定期預金で、毎月、少しずつお金を貯めていくことを考えてもいいでしょう。
各種手当や助成金を申請
各自治体ごとに子育てのための手当や助成金が設けられています。住んでいる自治体でどんな子育て支援制度があるか、一度確認してみるといいでしょう。主な子育て手当金や助成制度はこちらでご確認ください。
お金がない!子どもを育てるお金の調達方法
子どもが小さいうちから、子どものための貯金を行ったり、保険に加入している家庭は多いでしょう。それ以外に、子どもを育てるための費用を調達する方法には何があるでしょうか。
奨学金や教育ローンを利用する
経済的に困難な学生を支援する制度が、奨学金です。返済不要なものと、将来返済が必要なタイプがあります。返済不要なタイプは、学力などの条件が厳しくなる傾向にあります。
また子どもの教育費用を補うためにお金を借りられる制度が、教育ローンです。国(日本政策金融公庫)の教育ローンなら金利が低く設定されていますが、利用のためには年収などの制限があります。
金利はやや高くなりますが、審査などが早い民間の教育ローンもあります。
教育資金の贈与をお願いする
もし祖父母に教育資金の援助をお願いできるなら、教育資金を贈与する制度を利用しましょう。
祖父母から孫へ一定の金額を贈る場合、贈与税がかかる可能性があります。しかし、入学金や授業料など学校などの教育機関に直接支払われる費用のために一括贈与をする場合、条件に合致すれば、孫1人あたり1,500万円が非課税になります。
この制度を利用するためには、諸条件を満たし領収書の提出などが必要になりますので、事前に制度の詳細について確認しましょう。
家計の見直し
家計について見直しを行い、支出額を調整すれば、子育て費用を捻出できるかもしれません。
子どもも含め家族のライフステージが変わるごとに、家計の見直しは大切になります。ファイナンシャルプランナーから聞いた家計の見直し方法は、こちらの記事を参考にしてください。
子育て費用のために備えよう
公立校か私立校か、子どもの進学先がどこであっても、子育てにかかる費用も教育費は高額になります。子どもが小さいうちからコツコツ貯金をしたり、学資保険に入ったり、準備をしておくようにしましょう。
構成/HugKum編集部