2010年頃に誕生したことば「Sharenting(シェアレンティング)」を知っていますか?「overshare(過剰な共有)」と「parenting(子育て)」を組み合わせた造語で、親が自分の子どもの写真や情報をインターネット上で過剰にシェアすることを意味します。
パパママが何気なく子どもの愛らしい写真や個人を特定できる情報をアップする行為「シェアレンティング」はリスクが多いので注意が必要です。具体的にどんなリスクがあるのでしょうか。
<リスク1>デジタルタトゥーとして残ってしまう
子どもが物心ついた頃に、親がインターネット上に投稿した幼少期の写真や情報を消そうと思っても、すでに拡散されて半永久的に消すことができない可能性があります。インターネット上にアップロードされた個人情報や写真は後から消すことが困難である現象を、タトゥーになぞらえて「デジタルタトゥー」と呼びます。
<リスク2>いじめ・からかいのネタになってしまう
幼少期のことだとしても、「うちの子は中性脂肪も高く肥満なんです」といったセンシティブな情報や、裸の写真などは、いじめやからかいの原因になってしまう危険性があります。
<リスク3>犯罪に巻き込まれる危険がある
子どもの顔・名前・住所・通っている幼稚園/保育園/小学校/塾などの情報や写真がきっかけで、つきまといや誘拐などの犯罪に巻き込まれる危険性があります。ぼかしを入れるなどして、特定されないように注意することが大切です。
<リスク4>プライバシー・肖像権侵害の可能性がある
現代は、学校などで「本人の許可を得ずに、顔写真や個人情報をSNSで投稿してはいけません」と指導される時代です。これは友人や家族、もちろん物心がついていない子どもであっても、例外ではありません。
<リスク5>親子関係が険悪になる可能性がある
「シェアレンティング」が引き起こす上のリスク1~4の結果として、子どもが物心ついてから親子関係がぎくしゃくしたり険悪になったりしてしまう可能性があるかもしれません。
パパママお願い!こんな写真・情報はSNSに投稿しないで
いろいろなリスクから子どもを守るため、家族関係を守るために、SNSに投稿すべきでない情報・写真は大きく分けて以下2種類だと覚えておきましょう。
✓子どもを危険にさらすリスクがある情報・写真
✓子どもが物心ついた時に傷つく情報・写真
具体的には以下のようなものを避けるべきでしょう。
<例>
名前/顏/住所/幼稚園/保育園/小学校/塾 などが特定される情報・写真
裸/おむつ姿/下着姿/水着姿 などの写真
泣き顔/変顔 などの写真
身長/体重/体脂肪率 などの情報
テストの点数/通知表の成績/知能検査の結果 などの情報
いじめやからかいにつながりそうな情報
<例>「小さなハゲがあります」「●歳までおねしょ/おもらししてました」「将来〇〇くんのお嫁さんになりたいそうです」「立派な肥満児です」
子どもの写真、どうすれば安全に共有できる?
リスクがあるのはわかったけれど、子どもの写真をSNSに投稿する楽しみも、もちろんありますよね。
その時には「誰に見せたいのか」「なぜ見せたいのか」をまず考えてみましょう。
祖父母や親戚に写真を見せたい
・EメールやLINEで送る
・招待した家族しか見ることができないアルバムアプリを使って共有する
「みてね」https://mitene.us/
「famm」https://famm.us/
「wellnote」 https://wellnote.jp/
親友に写真を見せたい
・SNSの「投稿の公開範囲」を「友だち」に限定したり、友だちとだけつながっている「鍵アカウント」を利用する。
・投稿した写真は、そのままにせず、期限を決めて削除する。
繰り返しになりますが、わが子であっても、インターネットでの写真公開は「本人の許諾」が必要であることも忘れてはなりません。
つまり、子どもが自分で判断できる年齢に達するまでは、本人特定できるような写真公開には注意が必要です。
正しい理解をもって、SNS投稿を楽しむようにしましょう。
構成・文/後藤真理恵
お話をうかがったのは
後藤真理恵(ごとうまりえ)
東京大学 文学部卒。一般社団法人SNSエキスパート協会代表理事に就任。「SNSエキスパート検定(初級・上級)」講座/認定試験の実施を通してSNSマーケティングの正しい知識を持つ人材育成に努めている。著書に『ファンを獲得! Facebook投稿ノウハウ』(翔泳社・共著)『デジタル時代の実践スキル SNS戦略』(翔泳社)。