目次
切迫早産とは
切迫早産とは、妊娠22週以降から37週未満に出産することである「早産」の一歩手前の状態のことをいいます。具体的には、子宮収縮によるお腹の張りや痛みが起こったり、子宮の出口である「子宮口」が開いたりする状態です。
このとき、破水が起こると、「陣痛が起きる」「子宮内の胎盤や赤ちゃんに膣内の細菌が感染する」「羊水が減って臍帯を圧迫する」などのリスクがあります。
早産のリスク
早産になるとさまざまなリスクが発生します。
出産する妊娠週数によっては未熟児出生となるため、臓器や器官が未成熟となってしまいます。そうなると、出生直後に合併症や感染症のリスクが高まります。
また、妊娠後期の早産(妊娠34~36週台)の場合は、呼吸障害、低体温症、低血糖症などの発症、より早い段階での早産(妊娠34週未満)の場合は上記のリスクに加え、重症呼吸障害や脳出血、重症感染症などのリスクもあります。
このようなリスクがあることから、早産は回避したいものです。
切迫早産の症状
おもな切迫早産の症状は下記です。
・下腹部の張り
・生理痛のような下腹部の痛み、腰の痛み
・出血
・破水
下腹部の張りや痛み、腰の痛みといった症状の場合は、横になって安静にし、様子を見ます。痛みが続いたり出血や破水があったりするようなら、すみやかに産院を受診するようにしてください。
切迫早産の対処法・治療法
切迫早産の重症度別に、対処法・治療法を解説します。
軽症
一般的に「軽症」とは、子宮頸管長が30mmを超えており、痛みを伴う子宮の収縮が頻繁に認められない場合のことをいいます。
軽症であれば入院の必要はほとんどありません。治療薬として「張り止め(子宮収縮抑制薬)」を処方されることがあります。
日常生活での対処法は下記です。
・重い荷物を持たない
・長時間の移動を避ける
・安静にする
・おなかをさすらない
体への負担を最小限にし、無理のない日常生活を送りましょう。
中等症
妊娠中期〜後期(35週あたりまで)で、子宮頸管長が25mmより短くなった場合に、中等症以上と診断されます。
中等症と判断されると、長期の入院となるケースが多いです。
入院中は下記の治療などが行われます。
・安静による早産予防
・子宮収縮抑制剤の点滴治療
・細菌による腟内感染を予防するために抗生剤の使用
重症
数日以内の間に早産がほぼ避けられない状態のことを「重症」と呼ぶのが一般的です。
通常であれば即日入院となります。対処や治療法は下記です。
・子宮収縮抑制薬の点滴投与
・ステロイド剤の注射
切迫早産で入院が必要になる基準
切迫早産で入院が必要となる基準は、「早産の危険性がある」と判断された場合です。これは、子宮頸管の熟化の評価、妊娠週数と合わせて判断されます。
入院したくない…入院しない方法はある?
切迫早産になっても入院したくないと考える人はいるかもしれません。しかし、早産のリスクが高く、入院が必要と診断された場合には入院して治療しましょう。
なお、自宅安静で済むような軽症の場合には入院することはほとんどありません。
切迫早産での入院期間はいつまで?
切迫早産での入院期間はいつまでなのか、平均入院期間と最短期間をご紹介します。
平均は約1か月
切迫早産の入院期間は、妊娠週数や状態によってさまざまです。
退院の目安となるのは、子宮口の開き具合や妊娠週数などから総合的に判断し「自宅安静でも早産の進行が抑えられるまで」となります。
ただし、早産の時期を超え、正期産となる妊娠37週頃まで入院するというケースもあります。
最短で1日
切迫早産の可能性があり、念のため入院する場合には1日程度で退院できるケースもあります。
また、子宮収縮抑制薬の内服で切迫早産の進行を抑えられるようなら、数日で退院できることもあります。
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切迫早産での入院費の目安
切迫早産で入院した場合、気になるのが入院費ではないでしょうか。ここでは、入院費の目安について解説していきます。
保険は適応される?
切迫早産で入院する場合、保険は適用されます。ただし、保険適用となるのは入院基本料、検査・手術代・治療などにかかる医療費のみです。
「差額ベッド代(個室など病室のベッド数が少ないときに個室に入る、病室にトイレや収納などの設備があるといった場合の個室や設備の利用に対してかかる費用のこと)」「食事代」「テレビ使用料」などは保険適用外となるので注意してください。
入院にかかる費用はいくらくらい?
入院費用は1日あたり1万円〜2万円程度かかります。費用に幅があるのは、病院の体制、病室のベッド数、治療内容によって異なるためです。
たとえば1か月入院するとなると、入院費用は30万〜60万ほどになります。かなり高額な費用となります。
しかし、「保険適用」と「高額療養費制度」を活用すると、自己負担額を減らせる可能性があります。また、「限度額適用認定証」、傷病手当金制度」なども活用できる場合があるので確認しておきましょう。
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切迫早産での入院したときに過ごし方や注意点
切迫早産で入院したときにはどのように過ごすとよいのでしょうか。快適に過ごすための持ち物や過ごし方、注意点をご紹介します。
持ち物はあらかじめ準備を
切迫早産での入院と、出産での入院の持ち物に大きな違いはありません。ですので、あらかじめ入院するための持ち物をまとめておくのがおすすめです。
また、家に忘れ物をした場合のために、家族にどこに何があるかを伝えておくとよいでしょう。
●必要な持ち物
・母子手帳
・健康保険証
・現金・クレジットカード
・筆記用具
・印鑑
・ティッシュ・ウエットティッシュ
・タオル
・下着
・パジャマ(前開きタイプがおすすめ)
・スリッパ
・歯ブラシ・コップ
・シャンプー・リンス・ボディソープ
・ボディシート
・基礎化粧品
・ナプキン・おりものシート
・コンタクト(洗浄液)・メガネ
・スマートフォン
・充電器
・イヤホン
●用意しておくと役立つアイテム
・ポケットWi-Fi
・耳栓
・アイマスク
・スプーン・フォーク
・ストロー付きペットボトルキャップ
・延長コード
・抱き枕・クッション
など。入院生活を快適に過ごせるように準備しておきましょう。
安静にしつつ、退屈しない過ごし方
切迫早産で入院しているときには、安静にしているようにいわれます。しかし、安静にしているのは結構苦痛で退屈してしまうもの。そんなときのために、次のような過ごし方で退屈しのぎをしてみてください。
・映画やドラマを観る
・先輩ママのSNSから役立ちそうな情報を得る
・電子書籍を読む
・赤ちゃんの名前を考える
精神状態をよくしてストレスを溜めない
入院中は安静にしておかなければならず、どうしても精神状態が悪くなりがちです。健やかな精神状態を保つためには、ストレスを解消するのが1番。次のようなことを試してストレスを発散しましょう。
・同室の患者さんとおしゃべりする
・家族や友達にテレビ電話する
・SNSに辛い気持ちを投稿する
・悲しい映画や本などを読んで思いっきり泣く
切迫早産になったら安静に
切迫早産と診断された場合には、安静にしておくこと大切です。自分自身のため、赤ちゃんのためにも無理のない妊娠生活を送りましょう。
参考:切迫早産の重症度別対処法(産婦人科オンラインジャーナル)
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記事監修
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。
文・構成/HugKum編集部