今回は画材のメーカーであるぺんてる株式会社へ伺って、絵の具の中でも「水彩絵の具」に絞り、それぞれの性質や特徴を教えていただきました。
絵の具は何からできている?
そもそも絵の具は何からできているのでしょうか?
絵の具の主要な原料は2つ。色の素となる粉「顔料」と塗ったもの(紙など)に絵の具を定着させる「のり」です。
そのほかにはのりを溶かすために「水」、絵の具にカビが発生するのを防ぐ「防腐剤」などを加えて、使いやすい状態に調整して絵の具が完成します。
顔料は粉の状態のものを用います。この顔料の粒を細かくすることによって、品質を良くしています。ぺんてるでは、さらに品質を良くするために、日々研究をしており、顔料を分散させる技術を高めているそうです。
水彩絵の具の分類は「耐水性の有無」と「透明か不透明か」で決まる
水彩絵の具は「耐水性の有無」そして「塗ったときに透明なのか不透明なのか」で分類をすることができます。この特徴を知ることで、どの絵の具がどのような表現活動に適しているのか選ぶことができます。
「耐水性の有無」とは?
小さな頃に使った絵の具を思い出してみてください。私は幼稚園の頃まで記憶を遡ると、パレットの凹みに塊になった絵の具が入っていて「水をつけた筆で溶かしながら絵を描いた」というエピソードに辿り着きました。
小学校に入ってからは、チューブから絞り出して水を加えて使う絵の具でしたが、これも乾いた後に水をつけると再び色を伸ばすことができました。
一方、街中にある壁画。実際に描いているところに遭遇したこともあるのですが、しっかり乾燥させた後は、雨で濡れたくらいでは消えてしまうことがない絵の具を使っているそうです。。
前者が水に弱いつまり「耐水性がない」、後者が水に強いつまり「耐水性がある」ということになります。
これは原料として使われる「のり」の種類によって決まります。
- (左)アクリル樹脂を使っている耐水性のある絵の具・(右)アラビアガムを使っている耐水性のない絵の具
耐水性がある絵の具では、乾くと水に溶けなくなるアクリル樹脂(写真左奥瓶の白い中身)を「のり」として使っています。
一方、耐水性がない絵の具では「アラビアガム(写真右手前の茶色の塊)」を「のり」として釜に入れて溶かして使っているのです。ちなみに、アラビアガムはアカシア・セネガルの木から取れる樹液で食品にも使用されています。
透明か不透明か
色を塗り重ねた時に下が透けて見えるかどうかでも分類ができます。
絵の具の色を重ねて塗った時に、下の色が透けて見える絵の具を「透明水彩」と分類します。ここには、透明水彩絵の具やアクリルカラーが含まれます。この透明水彩は、例えば塗るのを失敗した場合に上から別の色を重ねても、リカバリーすることができないので取り扱いが難しい画材なんだそうです。また、ぺんてるで製造は行っていません。
では、ぺんてるではどのような製品をお勧めしているのでしょうか? それは「半透明水彩絵の具」と分類される絵の具です。水を加える量により、透明水彩に近い表現も不透明水彩のような表現もできるという画材です。
一方、不透明水彩(ガッシュとも呼ばれます)と分類される画材にはポスターカラーやアクリルガッシュがあります。これらは塗ったもの(紙や壁など)の下地や前に塗った色が透けない、メリハリのある表現がしやすいという特徴があります。
3種類の絵の具に分類
ぺんてるが個人向けに販売している絵の具を分類すると、
・耐水性がなく、半透明の「エフ水彩(半透明水彩絵の具)」
・耐水性がなく、不透明の「ポスターカラー」
・耐水性があり、不透明の「アクリルガッシュ」
の3つに分類できます。
では、それぞれの絵の具の特徴を見てみましょう
では、具体的に3つに分類した絵の具の特徴を見ていきましょう。
「エフ水彩」(半透明水彩絵の具)
まず、豆知識。エフ水彩の<エフ>はFineから取られたものなのだそうです。
水の量を多くすると透明水彩に近い、濃淡や影の表現がしやすくなります。逆に水の量を少なくすると不透明水彩に近い表現となり、間違った時に上から色を重ねることで書き損じた箇所の修正ができるという利点もあります。水の量を調整するだけでどちらの表現も可能なので、小学生のお子さんにとって扱いやすい絵の具であると言えます。
ポスターカラー
中学校の授業で使ったことがある方も多いポスターカラー。
右側の「不透明調作品」をご覧ください。メリハリのあるアニメーションの背景やポスターデザインに用いられることの多い、均一の色で塗りつぶすような表現が得意な絵の具です。下地となる色はもちろん、色が重なったところでは下の色が透けないという特徴があります。
アクリルガッシュ
塗ったところが乾くと別の色を重ねても混ざらない・濁らない、ぱきっとした色合いの表現が得意な絵の具です。乾くと耐水性・耐光性があるので、屋外の壁画などにも使え、例えば石へペイントするワークショップでも使われます。
違いがわかると面白い
絵の具は「チューブからパレットへ絞り出して、水を混ぜて紙へ塗る。」という使い方をイメージしますし、絵の具に違いがあることなど考えたこともない方が多いかもしれません。しかし、これで特徴を知り、それによって絵の具の使い方が違うことがわかりました。特徴がわかるとどんな時にどんな絵の具を選べば良いのかもわかりますね。
保護者の方々にはぜひ、お子さんの興味や作りたい理想の形にあった絵の具を選んでいただきたいと今回のおはなしを伺って感じました。
お話を聞いたのは…
実際に画材製造のお仕事も担当されていた西條さんに教わりました。ありがとうございました。
文・構成:ふじいなおみ