「行き掛けの駄賃」とは?
ときどき耳にする「行き掛けの駄賃」という言葉。意味はもちろん、正しい読み方もわからない… という方も多いのでは。そこで今回は、「行き掛けの駄賃」の意味や由来、使い方を紹介していきます。
読み方と意味
「行き掛けの駄賃」とは「ゆきがけのだちん」、もしくは「いきがけのだちん」と読みます。
意味は、「何かのついでに他のことをすること」。メインの用事以外のことをして、ついでのように他の利益を得ることを表します。例えば、「実家に寄るついでにご近所さんにも挨拶したら、果物をもらった」といった場合。本来の目的ではない副次的な利益を得ているので、「行き掛けの駄賃」といえます。
由来・語源
「行き掛けの駄賃」について、もう少し掘り下げて解説します。「行き掛け」とは「行く途中」のこと、「駄賃」とは、「馬による運送料金」です。
昔、馬をひいて荷物を運ぶ「馬子(まご)」と呼ばれる職業がありました。「馬子」の仕事は、問屋まで出向き、頼まれた荷物を指定の場所まで運ぶこと。しかし、問屋に行くまでは何も乗せていないため、ただ馬を歩かせるだけ。それを「もったいない」と思ったのか、問屋に行くまでの間に、他の荷物を引き受けて運び、「駄賃」を得ていたそう。
これが、「何かのついでに他のことをして利益を得る」という意味の「行き掛けの駄賃」の由来だそうです。
注意点
「行き掛けの駄賃」は、メインの用事のついでに何かをすることを表します。そのため、ついでの用事がメインの用事より大きい場合には、「行き掛けの駄賃」には適していません。「行き掛けの駄賃」を使うのは、ちょっとした用事や、手間にならない程度の物事であると覚えておきましょう。
使い方を例文でチェック!
「行き掛けの駄賃」は、日常生活からビジネスシーンまで幅広い場面で使えます。実際にどのように使えばいいのか、例文を参考にしながら理解を深めていきましょう。
1:里帰りする途中で友だちの家に寄ったら、行き掛けの駄賃で子どもの出産祝いをもらった。
この例文で表しているメインの用事は、実家に帰ること。しかしその途中で友だちの家に寄ったらお祝いをもらったと言っています。本来の目的とは違うことで利益を得ているので、「行き掛けの駄賃」を使うのにぴったりなシチュエーションです。
2:行き掛けの駄賃と思い、途中下車してみたら、想像以上に良い時間を過ごせた。
この例文では、実際の金品を得ているわけではありません。しかし、お金や物に限らず、良い体験をした時にも、「行き掛けの駄賃」は使えますよ。
3:打ち合わせで取引先の会社に行くついでに、別部署の人とも話してみたら、新たな契約が決まった。行き掛けの駄賃とはこのことだ。
ここでは、メインの用事である打ち合わせを行うついでに、別部署の人にもアプローチしたところ、うまく契約が取れたことを表しています。
類語や言い換え表現は?
「行き掛けの駄賃」がどうもしっくりこない… という場合には、別の言葉に言い換えて使ってもいいでしょう。ここでは、類語の「一石二鳥」「一挙了得」「〜がてら」を紹介します。
1:一石二鳥
「行き掛けの家賃」の類語に挙げられるのは「一石二鳥(いっせきにちょう)」。「一石二鳥」とは、「1つのことをして、2つの利益を得ること」。もともと英語のことわざ「Killing two birds with one stone.(1つの石で2羽の鳥を落とす)」が由来だそうです。
2:一挙両得
「一挙両得」とは「いっきょりょうとく」と読みます。「一挙」とは「1つの動作」、「両得」とは「一度に2つの利益を得ること」。つまり、「一石二鳥」と同じく「1つの行動で2つの利益を得ること」という意味になります。「一挙両得」は、中国の故事が由来となってできた言葉だそうです。
3:〜がてら
「旅行に行きがてら」「買い物に行きがてら」などと使われる「〜がてら」。あらためて言葉の意味をおさらいすると、「ある物事のついでに、他の物事をする」「〜のついでに」という意味を持ちます。ただし、「〜がてら」には、「行き掛けの駄賃」のように「利益を得ること」という意味は含まれません。
対義語は?
続いて「行き掛けの駄賃」の対義語にあたりそうな言葉を紹介します。
「ついでに何かをして利益を得る」という意味が「行き掛けの駄賃」。反対の意味としては、「2つのことを同時に行っても利益を得られない」という意味を持つ言葉が当てはまりそうですね。類語をひとつひとつ見ていきましょう。
1:二兎を追う者は一兎をも得ず
「二兎(にと)を追う者は一兎(いっと)をも得ず」とは、うさぎを二兎同時に得ようとして追いかけても、結局は一兎も得られないこと。つまり、2つのことを同時に成し遂げようとしても、結局どちらも成功しないことを表します。「欲張りすぎず、1つのことに集中しろ」といった、戒めの意を込めて使われることが多いですね。
2:虻蜂取らず
「虻蜂取らず」とは「あぶはちとらず」と読みます。意味は、「欲張りすぎると失敗する」。あれもこれも得ようとしても、結果的にすべて逃してしまうことを表すことわざです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」と同じように、欲を出しすぎないように、という教訓で使われます。
英語表現は?
「行き掛けの駄賃」の意味に相当する英熟語は見当たりません。「行き掛けの駄賃」のニュアンスを伝えたい場合には、「〜のついでに」を意味する英語をうまく使うといいでしょう。
1:while
「while」は、「〜する間」「〜と同時に」という意味の単語です。例えば、「そこにいる間に」なら「while you are at it」「while I’m at it」と表現できます。
例文:I’m going to propose a new plan while I’m at it.(ついでに、新しい企画を提案する予定だ)
2:on the way
「on the way」は、「途中で」という意味。例えば、「on the way to my home」で「家に帰る途中で」、「on the way to school」で「学校に行く途中で」という意味になります。
例文:On the way to my home, I stopped at a supermarket and bought some fruits.(家に帰る途中で、スーパーに寄ってフルーツを買った)
最後に
何かのついでに他のことをして利益を得ることを意味する「行き掛けの駄賃」。馬子が問屋に行くまでの間に荷物を引き受けて運び、駄賃を得ていたことが言葉の由来でした。あまり聞き慣れない言葉でも、実際に使ってみると語彙力がグンとアップしますよ。ぜひ「行き掛けの駄賃」を日常生活でも使ってみてください。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)